韓国国内でも早ければ今年の年末から、日本産水産物を対象にしたトリチウム濃度測定の道が開かれる。福島原発事故の汚染水に含まれた放射性物質のひとつであるトリチウムに対する人体への有害性の懸念が高まる中、韓国ではまだ水産物に対するトリチウム検査体制が整っていない。
共に民主党のシン・ヒョニョン議員室が12日、食品医薬品安全処(食薬処)から提出を受けて公開した「トリチウム試験法推進事項」によると、食薬処は今年7月、食品に対するトリチウムの基準値と検査方法を設けた。水産物についても同じ基準を適用するが、検査法は水産物の特性に合わせて今年年末までに確立する計画だ。現在、海水のトリチウム濃度は測定されているが、水産物については基準値や検査法が定まっていない。
韓国政府は放射性汚染水の影響を受けた恐れのある福島周辺8県の水産物の輸入を禁止するとともに、その他の日本産水産物については、国内へ持ち込まれる段階で放射性物質のセシウムとヨードが基準値を超えているかどうかを検査している。
食薬処の関係者は「トリチウムはセシウムやヨードに比べ、放出する放射線が弱く、検査する必要性が少なかったが、福島原発汚染水の海洋放出を機に検査の必要性が高まり、基準値と検査法を研究した」と説明する。
トリチウムは福島原発汚染水を浄化するための多核種除去施設(ALPS)で濾過されない放射性物質。日本政府や東京電力は、ALPSで浄化した汚染水に海水を混ぜてトリチウムの濃度を大幅に下げて放出しているため、人体に無害だと主張している。
トリチウムが人体に及ぼす影響や水産物と食品に対する濃度測定の必要性などについては、専門家たちの間でも意見が分かれる。
ソウル大学医学部のカン・ゴヌク教授(核医学)は「トリチウムはセシウム、ヨウ素などより放射線量が少なく、人体に及ぼす危険性が低い。実際の食品を検査してみても基準値よりはるかに低い数値が出るだろう」と語った。ただし、「国民の不安を和らげるため、6カ月~1年に1回非定期的に検査を行い、それほど懸念しなくてもいい水準であることを示すのは大きな意味があると思う」と付け加えた。
一方、ソウル大学原子核工学科のソ・ギュンリョル名誉教授は「トリチウムの濃度が低くても、長期間さらされた場合は、がんの誘発など人体に影響を及ぼす可能性があり、最近、これを裏付ける臨床結果も出てきた」とし、「食品についても、可能な限り多くの量を検査しなければならない」と語った。
医師出身のシン・ヒョニョン議員も「福島原発汚染水の海洋放出に対する国民の不安を最小化するため、放射性有害物質の人体への影響を正確に測定する試験法を早急に整えなければならない」と指摘した。
これに先立ち、食薬処は食品におけるトリチウム基準値を1キログラム当たりの乳幼児用食品の場合は1000ベクレル以下、乳幼児用食品以外のすべての食品は1万ベクレル以下に定めた。放射線の放出が少ないトリチウムの特性を考慮し、国内のセシウムやヨードの基準値(1キログラム当たり100ベクレル)より高く設定したというのが食薬処の説明だ。
水産物にも同じ基準を適用するものの、検査に要する時間を増やし、トリチウムが存在するかどうかを確認できる下限線にあたる検出限界値(MDA)を下げるなど、水産物に特化した検査法を年内に確率する計画だ。
食品を対象にした韓国のトリチウム測定法では、MDAは1キログラム当たり50ベクレル。1キログラム当たり50ベクレル以上のトリチウムが測定されなければ、これより少量の濃度は「不検出」とみなすという意味だ。
日本が8月から原発近隣に生息する魚2種に対するトリチウム測定に活用するMDAは1キログラム当り10ベクレルだ。水産物に1キログラム当たり20ベクレルのトリチウムが検出されたとすれば、日本ではこの数値が分かるが、食薬処の基準では不検出(検出限界値未満)に分類される。