韓国政府が「日本の福島原発汚染水の海洋放出が国民の健康に及ぼす影響を分析するため、全国民を対象にした長期間追跡調査が必要だ」という研究結果の報告を受けたにもかかわらず、関連内容を非公開にし、政策にも反映しなかったことが確認された。
9日、国会保健福祉委員会所属のカン・ソヌ議員室(共に民主党)が疾病管理庁から提出を受けた「放射性物質が含まれた汚染水が人体に及ぼす影響」の最終結果報告書には、100ミリシーベルト以下の低線量放射線が人体に及ぼす影響は科学的に証明されていない状態であり、汚染水の放出に伴い放射線による被ばく線量が著しく増加するため、国民健康影響評価で積極的に調査すべきという内容が含まれている。汚染水の放出が国民の健康に及ぼす長期及び短期の影響を分析することで、知られざる危険要因を発見する必要があると提言したのだ。
疾病庁が依頼したこの政策研究には、大韓応急医学会と大韓災害医学会が主管機関として参加しており、放射能災害専門家のチャ医科大学医科大学院のチェ・デヘ教授が研究責任者を務めた。同研究は、日本政府が2021年4月に汚染水放出を決めてから8カ月後の同年12月に始まり、昨年5月まで5カ月余り行われた。文在寅(ムン・ジェイン)政権当時に研究を依頼され、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後に事業が終了したのだ。
報告書には国民健康影響評価と関連し、汚染水放出時に出る物質のそれぞれの総量を把握する必要があり▽国民の水産物摂取流通量の調査を行い▽収集された資料を基に国民1人当たりの放射線累積総量を計算しなければならず▽最低20年以上の長期にわたる追跡調査を通じたビッグデータ研究が必要などの具体的な条件が示されている。また、国内外の様々な文献を検討した結果、福島原発の多核種除去設備(ALPS)の浄化能力が検証されていないため、信頼するのは難しいという意見も含まれている。
しかし疾病庁は昨年8月、同報告書が情報公開法上の「意思決定過程または内部検討過程にある事項」に当たるとの理由で、2024年5月まで非公開にすることを決めた。汚染水放出前の事前予備調査として依頼した研究であるうえ、社会的にイシューになる事案なので非公開にしたというのが疾病庁の説明だ。
野党では、疾病庁が汚染水の安全性を強調する立場を貫いている大統領室と与党の顔色を伺ったのではないかという批判の声があがっている。疾病庁は「研究結果および関係省庁の協力を通じて『必要ならば』国民健康に及ぼす影響について健康影響調査を実施する」と答えた。
汚染水放出が始まってから45日が過ぎたが、研究報告書の提言のうち反映された内容は事実上ない。緊急を要する事案だとして、急いで研究を依頼し進めたのとは対照的な結果だ。疾病庁の関係者は「今後の状況を見て、必要に応じて報告書の公開を検討している」と述べた。
カン・ソヌ議員は「これまで処理された汚染水は安全だという尹錫悦政権の主張と相反する内容の報告書なので、疾病庁が非公開の決定を下したのではないかという疑念を抱かせる」とし、「このような研究結果が出たにもかかわらず、汚染水に対する国民的懸念と不安が怪談といえるのか、(政府と与党に)問わざるを得ない」と述べた。