「悔しくて今は死んでも死に切れない。飢え死にすることがあっても、このようなやり方では受け取らない」
三菱重工業強制動員被害者のヤン・クムドクさん(93)の怒りに満ちた声が光州(クァンジュ)広域市5・18民主広場に鳴り響いた。6日、韓国政府が日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員被害者賠償基金を国内企業単独で拠出する案を公式発表したためだ。被害者と市民団体はこれに抗議するろうそく集会を開き、国会で非常時局宣言を予告するなど激しく反発した。被害者代理人団も政府案に対抗する法的対応に乗り出す方針であり、市民社会全般にわたる抵抗運動に火がつく兆しが見える。
同日、ソウル龍山区の民族問題研究所で開かれた記者会見で、日本製鉄・三菱の被害者と遺族を代理する代理人団は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は韓日関係改善という外交的成果を急ぐあまり、被害者に『賠償金』ではなく『寄付金』を受け取るよう不当な選択を迫っている」と批判した。
市民社会団体も政府案に反発し、今後の行動を予告した。同日午前、外交部庁舎前で記者会見を開いた韓日歴史正義平和行動は、パク・チン外交部長官の政府解決策発表時刻に合わせて、アフリカの伝統楽器であるブブゼラを吹いて大声で叫ぶなど抗議パフォーマンスを行った。韓国進歩連帯のパク・ソグン常任代表は「2015年韓日慰安婦合意当時も国民が立ち上がって朴槿恵(パク・クネ)政権を審判した」とし、「被害者が反対し、最高裁(大法院)確定判決があるのに、何の権利があって尹錫悦政権はこのような妄動を働くのか」と糾弾した。同団体は7日に国会で被害者らとともに非常時局宣言を開き、週末の抗議集会も行う予定だ。
政府案の発表に怒りを覚え街頭に出た市民もいた。同日午後7時30分、ソウル広場で開かれた緊急ろうそく集会に参加した会社員のイ・ジヨンさん(35)は、「朝のニュースを見てとても腹が立って集会に来た」とし、「被害者たちがきちんと謝罪も賠償も受けられなかったのに、大統領が勝手に処理して(日本に)免罪符を与えた」と語った。大学生のアン・ジウォンさん(21)は大学の歴史サークルのメンバー10人とともに集会に参加した。アンさんは「被害者の方々がまだ被害から抜け出せずにいるのに、(政府が)明らかに屈辱的な外交を展開することが国民のためとは思えない」と話した。
日本経済団体連合会(経団連)と韓国の全国経済人連合会(全経連)が共に作ることにした「未来青年基金(仮称)」に対する批判の声もあがった。光州日帝強制動員市民の会などは「被害者と支援団体が2010年7月から2012年7月まで三菱重工業と16回交渉した当時、三菱側が提示した案と同じだ」と指摘した。
法律的対応も同時に進められる。被害者の代理人団は「第三者弁済」という政府案に同意しない被害者たちのために戦犯企業資産の現金化に向けた執行手続きを引き続き進める予定だ。彼らは「政府の解決策に同意しない被害者に対し、韓国政府が供託などを通じて債権を一方的に消滅させることはできず、もし行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団(財団)が一方的に金銭を供託するならば無効を確認する手続きを進める方針」だと述べた。
代理人団は、被害者との意思疎通を図りながら解決策を導き出したという外交部の態度も批判した。キム・セウン弁護士は「政府は最初から結論ありきで被害者たちに曖昧な説明をしただけだ。政府案に反する意見に対しては返事がなかった」と語った。イム・ジェソン弁護士は「政府案は被害者と財団との国内問題に切り替えようとするようだが、依然として確定判決の権利を行使する方法は多く残っている」と説明した。
ただし、政府案を受け入れる意思のある被害者の意思も尊重し、彼らに対しては政府との協議を経て債権消滅手続きを別に進めるものとみられる。代理人団の確認の結果、現在生存しているイ・チュンシクさん(日本製鉄)、ヤン・クムドクさんとキム・ソンジュさん(三菱)の3人はいずれも政府案に反対する意見を表明した。キム・セウン弁護士は「ソウルと光州で進められている訴訟原告15人のうち、明示的に政府案に賛成する意思を明らかにしたのは4人で、過半数に満たない」とし、「政府が補償案に過半数以上の被害者が賛成していると発表したことは事実と異なる」と話した。