韓国の気候変動への対応は遅々として進んでいません。「2030年までに温室効果ガスを40%削減するという約束」の達成もますます遠ざかり、新型コロナウイルスのおかげで減っていた温室効果ガスの排出量までもがご破算になってしまう危機に直面しています。どうすればよいのでしょう。
国会予算政策処は毎年、気候変動への対応に関する報告書を出しています。この報告書は、国内の気候変動対応政策を概観する良い参考資料として利用されています。
先月25日に発行された「2023年経済懸案分析」では、物価、財政、人口などの7つの懸案の一つとして気候・エネルギー危機があげられています。今月6日、統計資料を中心に一つひとつ確認してみました。原文は予算政策処のウェブサイトからダウンロードできます。
今後は温室効果ガス削減が毎年5.4%必要
2020年に文在寅(ムン・ジェイン)政権は「温室効果ガスの排出量を2030年までに2018年と比べて40%削減する」という目標を発表しました。いわゆる「2030温室効果ガス削減目標(NDC)」です。現政権でもこの基調は変わりません。目標を達成するには、毎年4.2%削減する必要があります。
しかし、今までの成績は非常に思わしくありません。予算政策処は「2022年までに減少した排出量は年平均1.6%のみと予想する」とし、「2030目標」を達成するには「残された期間の年平均削減率を5.4%に上げなければならない」としています。
韓国はコロナから学んでいない
「2018年がピーク、今後は減るだろう」
これまで政府は、韓国の温室効果ガス排出量は2018年にピークに達したと発表してきました。その理由の一つは、翌年の2019年に温室効果ガスの排出量が減少したことです。2020年の温室効果ガス排出量は2018年に比べ実に9.8%も減少しました。新型コロナウイルスが手に負えないほど広がったせいでした。
しかし、コロナ禍が回復傾向を示した2021年には、温室効果ガスの排出量は再び増加しはじめます。2022年の統計でも前年に比べ0.4%増加すると推定されています。上下動を繰り返す温室効果ガス排出量。このままだと「2018年ピーク論」が嘘になってしまう恐れがあります。
韓国は「2030約束達成率」落第点
他国の成績表と比べてみましょう。
2020年時点で英国は2030年削減目標の72.3%を達成しています。欧州連合(EU)は62.7%、日本は39.8%、米国は38.1%です。
一方、韓国の達成率は27.4%と情けない限りです。しかも2021年以降は排出量が増加しているため、2030年の目標達成も不透明です。
再生可能エネルギーの割合がサウジアラビアを抜いた?
韓国の再生可能エネルギーの割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも最下位圏です。
2020年時点での再生可能エネルギーの割合は2.3%で、相対的にエネルギー転換が遅れている日本(6.3%)の3分の1の水準です。主要20カ国・地域(G20)の中では、下にはサウジアラビア(0.03%)がいるだけです。うーん…産油国をやっとのことで上回っていますね。石油が出るわけでもないのに、こんなに怠ける理由があるのでしょうか。
原発を含めても韓国は下位圏
再生可能エネルギーに水力を含めると、カナダは総発電量の66.3%が無炭素電源です。イタリア(39.7%)、ドイツ(35.3%)、英国(33.5%)、中国(25.5%)も無炭素電源の割合がかなり高くなっています。一方、韓国は7.4%に過ぎません。
原子力発電は温室効果ガスの排出量が微々たるものなので、EUや韓国などはグリーン分類体系(グリーン・タクソノミー)で原発を「低炭素電源」と規定しています。再生可能エネルギーと水力、そして原発も低炭素電源だと考えると、カナダ、スペイン、英国、フランスで低炭素電源の割合はすでに総発電量の半分を超えています。韓国はどうでしょう。34.6%です。
韓国はドイツを見習え
では、韓国はどうすべきなのでしょうか。
予算政策処はまず、韓国がエネルギー集約度と炭素集約度の高い国だということに留意するよう促しています。
エネルギー集約度は「国内総生産(GDP)当たりのエネルギー消費量」を意味する指標です。韓国は5.6で、米国の4.51、日本の3.3、ドイツの2.76より高くなっています。
炭素集約度は、各エネルギー源の供給比率をもとに算出する温室効果ガスの排出水準を示しています。高いほど低炭素エネルギー源の使用が少ないということを意味します。韓国の炭素集約度はOECD加盟国の中で米国と並んで最も高い水準にあります。
韓国のこれら二つの数値の高さは、産業構造上、製造業の割合が高いこと、再生可能エネルギーの普及が遅れていることがその理由です。予算政策処は「韓国の炭素中立(カーボンニュートラル)履行へと至る過程は、エネルギー集約度が低い国のうち製造業の割合が高い国の成長過程に習う必要がある」と述べています。その例としてドイツと日本をあげています。特にドイツは、製造業の割合が高いにもかかわらず再生可能エネルギーの割合が35%台に達しており、エネルギー転換に成功している国です。
予算政策処は、再生可能エネルギーへの転換を急ぐ一方で、国内のエネルギー・資源分野の技術水準を引き上げるとともに、グリーン債券などで金融投資を増やすことを提案しています。科学技術情報通信部の2020年技術水準評価によると、韓国はエネルギー・資源分野の評価指数が80.2で、EU(98.2)はもちろん中国(81.6)をも下回っています。昨年のグリーン債券発行額も約14兆8000億ウォン(約1兆5600億円)で、債券発行残高の1%未満という状態です。