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「眠っていたウイルス」4万8500年ぶりに目覚める…感染力も生きている

登録:2022-11-29 07:15 修正:2022-11-29 10:00
東シベリアの永久凍土層から…感染力を確認 
気候変動でよみがえる古代のウイルス 
宿主動物を経てパンデミックの発信地になる可能性も
4万8500年が経過した後でも感染力を維持している永久凍土層のウイルスは卵形のパンドラウイルス(左側)。右側はパンドラウイルスとそれよりは小さい別の巨大ウイルスであるメガウイルス(白の矢印)=バイオアーカイブ//ハンギョレ新聞社

 気候変動は、二つの方向から人間に対するウイルスの脅威を高めている。

 一つ目は、ウイルスとの距離が狭まることだ。地球の平均気温が高まると、熱帯のウイルスが温帯地方に広がる。ウイルスの宿主の役割を果たす熱帯動物の棲息地が、地球温暖化によって高緯度地方にまで広がることによるものだ。

 2017年、オーストラリアのタスマニア大学の研究グループが、国際学術誌「サイエンス(Science)」に発表した論文によると、10年ごとに、陸上生物は17キロメートル、海洋生物は72キロメートルずつ高緯度地域に移動している。2020年に韓国気象庁が発表した「韓国気候変動評価報告書」は、デング熱ウイルスを感染させる熱帯地方のヒトスジシマカが、2050年には韓国にも土着化しうると予想した。

 二つ目は、眠っていたウイルスが目覚めることだ。氷河や永久凍土層に閉じ込められていたウイルスが、氷が溶けて外の世界に出てくる。数千年間氷の中に閉じ込められていたウイルスは、人間の免疫体系が接してこなかったまったく見慣れない潜在的な恐怖の対象だ。

 4万8500年間シベリアの永久凍土層中で凍った状態にあったウイルスがよみがえったという研究結果が発表された。永久凍土層の全体面積は、北半球陸地の4分の1に相当する。

 フランスのエクス=マルセイユ大学のジャン・ミシェル・クラブリー教授のグループは、2万7000年~4万8500年前に形成された東シベリアの永久凍土層で凍っていたウイルス7種類を発見し、繁殖力が今もなお残っていることを確認したと、事前出版論文集(プレプリント)「バイオアーカイブ(BioRxiv)」に発表した。これは、同じ研究グループが2014年と2015年に発見した3万年前のウイルス2種類(パンドラウイルス、モリウイルス)よりはるかに古いものだ。

 研究グループは、当時と同様に今回もアメーバをおとりに用い、ウイルスを発見した。アメーバの培養液に永久凍土層の試料を置き、アメーバへの感染の有無を確認する方式だ。

パンドラウイルスが発見された永久凍土層(赤い点)=デイリーメールより再引用//ハンギョレ新聞社

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インフルエンザウイルスの10倍の大きさ

 研究グループは、9種類のウイルスがいずれも細胞に感染可能な能力を持っていることを明らかにした。これは、永久凍土層の氷が溶けた場合、地球上の植物と動物にとって脅威になりうることを意味する。

 今回発見されたウイルスのうち4万8500年前のものは、東シベリアのヤクーチア(サハ共和国)のある湖の水面から16メートル下の永久凍土層で発見したもので、大きさが1マイクロメートルにのぼる巨大ウイルスだ。インフルエンザウイルスの約10倍の大きさだ。研究グループは、このウイルスを「パンドラウイルス・イェドナ(Pandoravirus yedoma)」と命名した。

 研究グループがこれまでによみがえらせた9種類のウイルスは、いずれもアメーバのような単細胞有機体に感染する巨大ウイルス群に属する。

 クラブリー博士は「古代の巨大ウイルスが、長期間凍結されていたにもかかわらず、今もなお感染力を維持しているのであれば、他の古代のウイルスも同じだろう」と述べた。

 もちろん、永久凍土層は人が住めない場所にあるため、これらのウイルスが地上に露出したとしても、ただちに人間にとっての脅威になるわけではない。

 しかし研究グループは、地球温暖化によって次第に溶けている永久凍土層の資源開発に対する関心が高まっていることに注目した。この地域の資源を採掘するためにまず最初に行わなければならないことは、永久凍土層の上層部をはがすことだが、その過程で古代のゾンビウイルスという“パンドラの箱”が開かれることがありうるからだ

氷が溶けてしまったカナダのハーシェル島の永久凍土層=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

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北極圏の資源採掘が危険性を高める

 永久凍土層のウイルスの感染力が生きていたとしても、家畜や野生動物を宿主としているウイルスに比べると、危険ははるかに低い。クラブリー博士は、科学誌「ニューサイエンティスト」に「アメーバに感染するウイルスは、植物や動物に感染しない」と述べた。

 しかし、研究グループは「氷に閉じ込められていたウイルスが、外界の紫外線や酸素に十分にさらされる場合、どれくらい長く感染力を維持できるのか、その間に適切な宿主に会って感染しうるのかどうかはまだ予測できないが、永久凍土の上層の解凍が加速化し、この地域に居住する人々が増えれば、危険は増加せざるをえない」と述べた。

 カナダのオタワ大学の研究グループは10月、英国の「王立学会報B(Proceedings of the Royal Society B)」に発表した論文で、北極圏の湖の土壌と沈殿物を収集し遺伝子分析を実施した結果、氷の中に閉じ込められていたウイルスと細菌が気候変動によって解放され、野生動物を感染させる危険性があることが判明したと明らかにした。氷河が溶けた水が多い場所であるほど、氷の中のウイルスが新たな動物の宿主に流れていく危険性が高まるということだ。

 実際、2016年夏の北シベリアでは、猛暑で永久凍土層が溶けて露出したシカの死体に接触した人々が炭疽菌に感染し、1人が亡くなった。

 では、氷の中からよみがえったウイルスは、次のパンデミックの開始点になりうるだろうか。

 オタワ大学の研究グループは「気候変動が、潜在的なウイルスの媒介者と貯水池の役割を果たす生物種の生息範囲を北に移動させる場合、高緯度の北極圏は新たなパンデミックの発源地になりうる」と警告した。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1069151.html韓国語原文入力:2022-11-28 21:24
訳M.S

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