はたして人類は前代未聞の気候危機を乗り越えることができるだろうか。世界の代表が6日(現地時間)から2週間にわたりエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクに集まり、第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)を開いて対応策を議論したが、未来は明るいとは言えない。
今年だけでも気象異変が尋常ではない。欧州やオーストラリアなどでは前例のない猛暑や日照り、山火事の発生で大きな苦痛を負い、ナイジェリアやパキスタンなどでは予想外の豪雨で多くの人々が犠牲になった。2011年から昨年までの間に、米国の郡の90%が洪水やハリケーン、山火事など連邦政府から災害地域と宣言される規模の災害を経験したという報道も最近出ている。
今回の総会が終わった先週末には、このような暗い現実を数値で示す研究結果が発表された。世界の温室効果ガス排出を追跡してきた団体「グローバル炭素プロジェクト」が発表した報告書は、今年の炭素排出が昨年より1%増えると予測した。このような傾向であれば、2030年代初めには、地球の気温が産業化以前より摂氏1.5度上がるという「敷居」を越えることになる。昨年、炭素排出が5.6%増えた時は、1年前の新型コロナウイルス感染症の影響で排出が減った基底効果のためだと言い訳する余地があった。今回の上昇は、ロシアの突然のウクライナ侵略という突発変数でエネルギー難を懸念した各国が、石炭など炭素排出の多い化石燃料の消費を増やしたためとでも言おうか。
今回の総会では、地球の気温を産業化以前に比べ1.5度上昇以下に抑制しようという目標は実現可能かという疑問も提起された。実際、2015年のパリ協定には「1.5度上昇」が許容可能な絶対数値なのか、やや曖昧なところがある。パリ協定は、地球の気温の上昇を2度以下に抑え、1.5度を超えないよう努力すると規定しているからだ。
地球の平均気温は昨年すでに、産業化以前より1.1度上がった状態だ。1.5度まであとわずかだ。この目標に合わせるためには、化石燃料の炭素排出を2030年までに半分に減らさなければならないなど、骨身を削る努力が必要だ。一方、2度上昇までに目標を緩和すれば、炭素排出に少し余裕が生じる。0.5度差なら大したことはないように思える。それなら2度上昇に一歩引いても良いのではないかと思うが、専門家たちの話は違う。猛暑と洪水、日照りなど災害の規模は巨大化し、頻度ははるかに高まるという。
暗いニュースばかりではない。先月のブラジル大統領選挙で勝利したルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ氏は、今回の総会に電撃的に参加し、アマゾンの熱帯雨林を積極的に保護すると明らかにし、大きな拍手を受けた。ジャイール・ボルソナロ大統領時代に節度なく認められていた伐採と山林毀損にブレーキがかかるものと期待される。米国や欧州など多くの国も依然として気温1.5度上昇の敷居を守るとし、炭素排出削減の意志を再確認している。ロシアのウクライナ侵略でエネルギー安全保障に対する警戒心が高まった多くの国では、低炭素エネルギーへの投資がさらになされるだろうという見方も出ている。
異常気象はすでに現実の一部となり、さらに深刻になりつつある。炭素排出削減は選択ではなく、生存の問題だという声も高まっている。はたして私たちは対応できているのだろうか。