インターネットメディア「市民言論 ザ・探査」の記者が取材を目的としてハン・ドンフン法務部長官の車をつけ回した行為は、報道機関の権力監視に当たり、ストーキングとは断定できないとの裁判所の判断が下された。ただし、自宅前からのユーチューブでの生中継はストーキング行為に当たると判断し、接近禁止などを命じた。
ソウル中央地裁刑事19単独のイ・ウォンジュン部長判事は10日、ソウル中央地検女性児童犯罪調査部の検事がザ・探査のカン・ジング記者(55)に対する暫定措置を求めていた事件の一部請求を認容し、このように述べた。
カン記者が所属するザ・探査は、ハン長官が7月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と金・張(キム&チャン)法律事務所に所属する30人あまりの弁護士と共に清潭洞(チョンダムドン)の高級酒場で深夜に酒席を共にしたという疑惑を提起した。その後、カン記者は8月から9月にかけて3回にわたって夜に退勤するハン長官の公用車をつけ回した。先月27日にはハン長官の自宅の玄関前まで訪ねて行ってハン長官の名前を繰り返し呼び、その様子をユーチューブで生中継した。これに対し検察は9日、カン記者に対する接近禁止命令などを求める暫定措置を請求した。
裁判所は、カン記者が8~9月に行ったハン長官の公用車のつけ回しはストーキング行為とは断定できないと判断し、この部分に関する請求は棄却した。イ部長判事は、記者(行為者)と公職者(被害者)という地位▽清潭洞酒席疑惑が事実かどうかは捜査中であり、まだ真偽は確定できないこと▽カン記者がつけ回した車は長官の公用車であること▽酒席疑惑の内容とその重要性▽被害者(ハン・ドンフン)がその疑惑の当事者たる公職者であること▽(尾行の)反復回数などを総合すると、「民主主義社会における疑惑の当事者である公職者に対する報道機関の取材の自由と、報道機関の権力に対する監視機能の重要性は、繰り返し強調しても強調し過ぎることはない」と判断理由を説明した。
ただし、先月27日にハン長官の自宅前で行われたユーチューブでの生中継はストーキング行為とみなされる可能性が高いとし、ストーキング犯罪を中止せよという書面警告とともに、カン記者に対し来年2月9日までハン長官の自宅から100メートル以内に接近しないよう命じた。イ部長判事は「居住地にはハン長官だけでなく家族も共に暮らしている。住居の安定と平穏の重要性を考慮すれば、取材のみを目的としたものではなく、一般的な観点からストーキング行為とみなされる可能性が高い」と説明した。
一方、清潭洞酒席疑惑が事実無根だと強く反論しているハン長官は最近、カン記者と同疑惑を国会で提起した共に民主党のキム・ウィギョム議員らを相手取って10億ウォン(約1億400万円)の損害賠償訴訟を起こしている。