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[コラム]韓国の現政権で5年後の「職権乱用」から自由な者は誰か

登録:2022-12-01 06:53 修正:2022-12-01 11:05
5年後に政権が交代すれば、高位公職者の中で職権乱用や職務遺棄、または業務妨害の疑いで捜査を受けないで済む人は果たして何人いるだろうかと、ふと知りたくなる。そのため政界では、ハン・ドンフン法務部長官や「政治監査」を担った監査院のユ・ビョンホ事務総長は2024年の総選挙に必ず出馬すると、多くの人が考えている。後に捜査を受けないで済ますためには、国会議員バッジほど効率的な盾はないからだ。
共に民主党の「検察独裁政治弾圧対策委員会」が29日午後、国会疎通館で5回目となる記者会見を行い、検察の偏向捜査の中止などを求めている/聯合ニュース

 ソウル中央地検は先週、共に民主党の幹部に人事上の斡旋を行った疑いで、ノ・ヨンミン元大統領府秘書室長の捜査に着手したという。党幹部のイ・ジョングン元副事務総長が問題の多すぎる人物だからではあるが、斡旋疑惑だけをみればそれほど複雑な事案ではない。CJグループは政府用地に複合物流センターを建てて運用してきたのだが、慣例的に常勤顧問の1人を国土交通部からの推薦で任命してきた。そのポストに民主党のイ・ジョングン氏がつき、そのポストにありつくために大統領府に斡旋(あっせん)を依頼したのだ。この事案には人事をめぐる様々な問題が複合的に絡んでいる。国土部の退職官吏が天下りするポストを政権与党出身者が奪い取ったのが問題かもしれないし、そのポストに就くために大統領府秘書室長にまで斡旋を依頼したのも正常な過程ではない。さらに本質的な疑問は、私たちがよく「大統領が替われば3000のポストが替わる」というその「3000のポスト」のうち、どれほど多くがこのような形で決められているかということだ。もしかしたら、大統領秘書室長もどこにどんなポストがあり、そのポストに誰が就いたのか覚えていないかもしれない。かなり前、大統領府担当記者時代に大統領府の高官から聞いた話を、私は今もはっきりと覚えている。「政府が1970年代に江南(カンナム)で大規模開発を行った際、公共用地にデパートを誘致したのだが、その土地は今も政府の所有だ。そのためデパートの監査役は毎回政府が任命してきたというのだが、我々(大統領府)はこれまでそのようなポストがあることすら知らなかった」。その高官は、やっとそれが分かったと述べて非常に残念がった。

 歴代政権で慣行的に行われてきた歪曲された人事に司正(過ちや不正をただすこと)の刃を向けたいなら、そうすることもできる。しかし少なくとも現政権自身はそのような「混乱人事」から脱しており、またそうしようと努力していることをまず示すことこそ、国民に対する礼儀だ。国民の力のキム・ウン議員は先日、フェイスブックに次のように書いた。「私は前回の国政監査で文在寅(ムン・ジェイン)政権の官職略奪を批判した。ところが、(現政権発足後の)今回、地域の政治家を韓国水力原子力の社外取締役に選んだという。その方は居酒屋とモーテルを経営しているという。韓水原は電力を生産する会社だと思ったのだが…」

 批判が起こると当事者は辞意を表明したが、このようなことは韓国水力原子力だけではない。農水産食品流通公社、海洋科学技術院、首都圏埋立地管理公社などの政府機関と公企業のあちこちで、元国会議員をはじめとする陣営関係者の天下りが相次いでいる。そのうちのかなりの数が、国民の力が文在寅政権時代に批判したものとそっくりだ。韓国ガス公社の社長に内定したチェ・ヨンヘ前議員は1次公募で脱落したが、再公募で他に応募者がおらず、改めて決まったという。文在寅政権時代に環境部傘下団体で起きたのと似たような事案を絶えず批判していたのが国民の力自身であったことは、すっかり忘れたようにふるまっている。

 それでも過去の諸政権は、同じ過ちを批判されれば、言葉では政治攻勢をかけたとしても検察による捜査まで行う激しい行いは示さなかった。今は異なる。チョン・ヒョンヒ国民権益委員長に対する監査院による捜査依頼は端的な例だ。監査院は、チュ・ミエ元法務部長官の息子の兵役特恵問題は利害衝突に当たらないとした監査院の決定過程に、チョン・ヒョンヒ委員長が不当に介入したと主張した。30日の報道によると、検察はこの事案の再捜査に着手し、警察もチョン委員長の不当介入疑惑の本格捜査を開始した。これに対してチョン委員長は環境部ブラックリスト事件を例にあげ、むしろ監査院による監査こそ職権乱用に当たる可能性が高いと主張する。前政権の「職権乱用」が現政権の「職権乱用」へとつながり、おそらく次期政権でもこの疑惑は絶えず再生産されるだろう。

 4年6カ月後に政権が交代すれば、高位公職者の中で職権乱用や職務遺棄、または業務妨害の疑いで捜査を受けないで済む人は果たして何人いるだろうかと、ふと知りたくなる。そのため政界では、ハン・ドンフン法務部長官や「政治監査」を担った監査院のユ・ビョンホ事務総長は2024年の総選挙に必ず出馬すると、多くの人が考えている。後に捜査を受けないで済ますためには、国会議員バッジほど効率的な盾はないからだ。高位公職者は退いた後、自分が残したレガシーで評価される、という公職社会の不文律は消えて久しい。しかし、政策の成果ではなく、深刻な政治的対立の最前線に立たされていることで自らを保護するための行動ばかりになれば、国政運営の成功は非常に難しくなる。まさにそのようなことを攻撃して国民の支持を得たのが尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領ではないか。このように自分にあまく他人に厳しい態度は他にない。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1069633.html韓国語原文入力:2022-11-30 17:59
訳D.K

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