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「朝鮮戦争以降で最も厳しい時期、韓国の外交座標が見えない」(2)

登録:2022-10-26 02:48 修正:2022-10-26 09:04
ウィ・ソンナク朝鮮半島平和づくり財団事務総長インタビュー
朝鮮半島平和づくり財団のウィ・ソンナク事務総長=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

-米中対立の渦中にウクライナ事態が発生して米ロ対立までもが深刻化していることで、北東アジアでは「中ロ連帯」が本格化しつつあります。これに対応して「韓米日安保協力」も強化されつつありますが、まるで1980年代を見ているようです。こうした対決構図は北東アジア情勢をどのように変化させるでしょうか。

 「私は今の状況、特にウクライナ以降の状況に比較的大きな意味を見出しています。1980年代後半から脱冷戦へと向かいました。脱冷戦の前期には米ロ間で比較的協力があり、後期にはこれが対立的なものへと流れてゆき、さらに米中対立が激化したことでウクライナ事態直前には最高潮に達していました。そのような中でウクライナ事態が勃発したため、もはや脱冷戦は終わっています。今の時代は米中の大きな対立と米ロの極限の対立、そして中ロの連帯、ですから世界は『米国と西側』対『残りの国々』というふうに線が引かれたわけです。これを新冷戦と呼ぶことが適切なのかという用語上の議論があるにはありますが、新たな時代が到来しており、この対立は過去の冷戦時代に劣らないとみなければなりません。それに北朝鮮の核までもが高度化していますから、韓国の状況は非常に厳しいというわけです。ですが韓国は米国と同盟関係にあります。ですから、この対立の中で中途半端な位置にいることは不可能です。韓国は西側と共に歩まざるを得ません。ただし、西側に属しつつも比較的穏健な主張をしていくべきではないか。朝鮮半島の未来を切り開いていくには中国やロシアの協力を得なければなりませんので、中国やロシアとの関係設定をいかなるものにするかを探っていくべきだと思います」

-そういう点からすると、経済を除いて考えると北朝鮮にとっては1991年のソ連解体以降で対外環境が最も良いとも言えるでしょうね。

 「正確な指摘です。北朝鮮が核開発に乗り出したのは、脱冷戦期に抱いた孤立感と敗北感のせいなのです。ソ連崩壊後、全世界の社会主義国家は改革・開放し、経済を発展させる方向へと旋回して生き残りました。ですが北朝鮮だけが唯一その道を歩まず、核を作って生きるという特異な選択をしました。エピソードをひとつ紹介しましょう。1990年秋、ソ連のシュワルナゼ外相が平壌に行き、韓ソ国交正常化は避けられないと説明しました。その時、キム・ヨンナム外相は非常に冷ややかに、ソ連の決定は誤った判断だと述べつつ、北朝鮮は生きるために核武装、必ずしも『核武装』という単語を使ったわけではありませんが、誰が聞いてもそのように聞き取れる趣旨の発言をしたというのです。それが北朝鮮の核問題の始まりです。その状況が30年以上続いてきましたが、世界は再び分裂し、中ロが米国と極限的に対立しているものですから、北朝鮮は再び中ロ側に入っていくわけです。こうした状況は北朝鮮の挑発心理をあおると思います。

 今年3月に北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行いましたが、これは2018年以降維持してきたミサイルモラトリアムに違反したもので、高いレベルの挑発です。ミサイルモラトリアムは中国とロシアも歓迎したものですが、今回、国連安保理で北朝鮮を糾弾しようとしたところ、中国とロシアは反対しました。その後に中ロは、米国が提出した決議案を拒否しました。滅多にないことです。こうした状況が北朝鮮には何らかのシグナルとなっていると私は考えます。今後、北朝鮮が核実験を行うとしたら国連はどう対応するのか、核実験はミサイルとは違いますが、もしその時も中国とロシアの反対で何の措置も取れなかったら、そうなれば本当に国連という組織の機能は完全に崩壊したも同然になります」

-経済もそうですが、外交安保の状況は総体的に危機だと思います。南北関係はもとより、韓中、韓日関係も芳しくなく、韓米間には通商問題が拡大してきていますが、大きな枠組みにおいて韓国外交はどのように対応していくべきでしょうか。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に助言するとしたら何とおっしゃいますか。

 「今の状況を一つひとつ考えてみると、朝鮮戦争以降で最も厳しいと言っても過言ではありません。旧韓末以降、最大の危機だとおっしゃる方もいらっしゃいますが、それは全く誇張された表現ではないと思います。北朝鮮の核やミサイルの脅威は最高潮へと向かっていますし、米中対立は朝鮮戦争直前の米ソ対立に比肩しうるものです。ですが、そこにかかっている韓国の国益は、過去とは比べものにならないほど大きい。朝鮮戦争の時代は、はっきり言って韓国経済は大したことはありませんでした。ところが今は世界でベスト10に入る経済規模を持っていて、ややもするとそれが揺るぎかねない状況ですから、それだけ韓国が置かれている状況は本当に厳しいと言えます。

 現政権が米国との同盟を固める、北朝鮮の核やミサイルの脅威には強く対応せざるを得ない、そうした方向性については私も大きく異論はありません。ただし、行くとしてもどれくらい行くかが重要です。過ぎたるはなお及ばざるが如しと言うでしょう。韓国は米国の側に立ちますが、常に後ろを見ておかなければなりません。中国は、今は習近平長期政権体制が安定を探っている時期なので、少し様子見という感じでちょっとソフトなやり方で韓国にメッセージを送ってきていますが、思い通りにいかなければ何か強く対応しようとするでしょう。ロシアも同じです。ウクライナ問題では、韓国は正しい側に立ってきましたが、そうしてきたことでロシアは韓国を「非友好的な国」カテゴリーに入れてしまいました。一種のロシア式の制裁ですが、韓ロ国交正常化後初めてのことです。両国の関係が国交正常化32年にして最悪の状態にあるということを意味します。今後さらに悪化する可能性もあります。こうしたことはすべて朝鮮半島の平和、非核化、安定、統一を追求する上で制約要因となります。そのうえ北朝鮮は韓国に対して非常に敵対的に出てきています。尹錫悦政権は今後5年間それをハンドリングしなければならない立場です。しかし、米国との関係を強化するというのは分かりますが、どれだけ強化するのか、また中ロとはどういう関係を結ぶのかはよく見えません。いちばん良くないのは、行ったり来たりすることです。例えば、米国の方に近づいておきながら台湾を訪れたナンシー・ペロシ米下院議長には会わない、右往左往する姿勢を見せるのは圧迫を呼び込むことです。圧力をかければ座標が変わるという印象を与えるのは良くありません。韓国は米国の同盟国ですので、米国の側に傾倒するのは避けられません。同時に中国やロシアともそう遠くない座標で一貫していなければなりませんが、その座標をどこに定めるかが今は見えていません。一貫性と予測可能性、持続可能性のある政策を展開してほしいと思います」

パク・チャンス大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1064139.html韓国語原文入力:2022-10-25 13:54
訳D.K

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