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「基本がなっていない」尹大統領が学ぶべき外交の基本(1)

登録:2022-10-04 02:49 修正:2022-10-06 07:01
[ハンギョレ21] 
ウィ・ソンナク元ロシア大使とキム・ジョンデ延世大学客員教授が対談 
冷酷な外交の現実も考慮できず、国の懸案にも貢献できず
尹錫悦大統領と米国のバイデン大統領が21日(現地時間)、米ニューヨークで行われたグローバルファンド第7回増資会合の終了後、言葉を交わしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は国外での首脳外交に出かけるたびに「手ぶら外交」、「資質・力量不足」批判に苦しめられている。2022年6月にスペインで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では、民間人(大統領室人事秘書官の夫人)大統領専用機同行批判と、いわゆる「Bカット写真」といわれる真っ白なディスプレイ批判にさらされた。続いて9月の英国でのエリザベス女王の弔問と米国での国連総会の終了後には、弔問取り消し批判、暴言批判、低姿勢韓日略式会談批判に直面した。

 痛いのは、尹大統領の首脳外交が最初から良い評価を受けられなかったことだ。首脳同士の信頼関係を強めなければならないのに、尹大統領が弔問を行えなかったことや暴言使用など、外交的未熟さばかりを対内・対外的にさらしているためだ。「尹大統領は基本を学ぶべきだ」(英国の週刊誌「エコノミスト」)などの外国メディアの酷評を挽回すべき今回の歴訪の機会も、ふいにしてしまった。にもかかわらず、パク・チン外交部長官責任論に対して尹大統領は「健康が心配されるほど、国益のために全世界を東奔西走する方」だと褒め称えた。

 「外交の花」である首脳外交をそしられ続けるのは韓国の外交資産の損失だ。「ハンギョレ21」は、信頼が落ちている尹錫悦政権の外交について評価する緊急対談を行った。9月27日午後、ソウル孔徳洞(コンドクトン)のハンギョレ新聞社で、ウィ・ソンナク元ロシア大使と延世大学統一研究院のキム・ジョンデ客員教授が2時間近くにわたって話し合った。

 北朝鮮の核問題を話し合う6者協議の首席代表である外交通商部の朝鮮半島平和交渉本部長を務めたウィ元大使は「外交戦略家」のひとりに数えられる。キム教授は議員時代(正義党)に国会国防委員会で活動した進歩改革陣営の代表的な安保専門家だ。2人は、尹大統領の今回の歴訪についての評価から話し始めた。

「尹大統領は自由から始め自由の防衛と自由のための連帯を語るなら、ウクライナが出て来なければならない。その次が北朝鮮だ。ところが演説には北朝鮮もウクライナもなかった」-ウィ・ソンナク元ロシア大使=パク・スンファ記者//ハンギョレ新聞社

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国連で北朝鮮の核の問題点を語るべきだった

[キム・ジョンデ] 首脳同士で顔合わせをし、存在感を示す程度で十分だった外交だが、尹大統領は行く前に過度な目標を設定して欲張った。1次的批判の余地は尹錫悦政権が提供したもの。実際のところ、例えば(米国の)インフレ抑制法は、今回深く議論し突破口を開くのは難しかったようにみえた。ところがキム・テヒョ国家安保室第1次長やイ・チャンヤン産業通商資源部長官は韓米首脳会談を既成事実化し、それを首脳会談の議題だと宣伝した。尹大統領も歴訪に発つ前、韓日関係の解決を「グランドバーゲン」(大妥協)で行うという誤った設定をすることで強引に押し出した。そのために首脳会談を行うと言うものだから、韓国政府がまず(強制動員賠償問題に対する)措置を取ることなしには会談に応じる考えはないという日本に引きずられることになった。外交の冷酷な現実と複雑さを考慮できておらず、尹大統領が外交をあまりにも簡単に考え、一気に何かを妥結するかのように前のめりになったことが、結局はスピード違反的な惨事へとつながった。

[ウィ・ソンナク] 今ご指摘の問題のかなりの部分は歴代政権も自由にはなり得なかった問題であり、韓国外交が抱えている全般的な問題でもある。尹大統領の国連総会への出席を中心に述べたい。演説のテーマは自由に集中していた。大統領就任あいさつから一貫して強調してきたコンセプトだ。

 今回の国連総会の大きなテーマは「分水嶺」だった。新型コロナウイルス・パンデミック(大流行)があり、ウクライナ戦争があり、大きな転換の時代だということだ。尹大統領は自由から始め、自由の防衛と自由のための連帯を語るなら、ウクライナが出て来なければならない。その次が北朝鮮だ。ところが演説には北朝鮮もウクライナもなかった。今回の国連総会でウクライナについて話さなかった主要国の元首はいないだろう。また、北朝鮮の核を語るべきだった。

 先日、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を行った。2018年以来維持されてきたモラトリアム(発射の一時停止)を破ったのだ。非常に重要な契機だが、国連安全保障理事会は中国とロシアが反対しているため、何もできずにいる。これは正常なのか。国連に行ったのなら、北朝鮮の核問題に対する国連の機能不全、その問題点を語るべきだった。国連事務総長に会って「韓国は国連のおかげでできた国だ」と語るのは昔の話だ。

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多国間外交の場でしかできない話

[キム] 今おっしゃったことを日本の岸田文雄首相はすべて語った。岸田首相はウクライナ戦争を語り、ロシアを強く糾弾し、国連改革を語ることで、かなり核心的な領域を扱った。北朝鮮については、条件なしに金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会うと述べた。尹大統領が何の話もしない間に、岸田首相がこのように朝鮮半島問題に一歩踏み込んだ立場を示したというのは、少し衝撃的だった。韓国の歴代大統領による国連総会での基調演説で、北朝鮮についての内容が触れられなかったことはない。同盟の強化を通じた北朝鮮の核に対する拡大抑止力の強化や国際社会の団結した対応などは、このような多国間外交の場でなければ話す場所がない。

 尹錫悦大統領は歴訪を終えた後に強まった外交失敗批判に同意しない。尹大統領は9月26日、ソウルの龍山(ヨンサン)大統領室への出勤途上、記者団に対し「国民が関心を持っていたインフレ抑制法の問題は、私が(ロンドンの)バッキンガムレセプションに行ってみたら、100カ国以上が集まる場なので、米大統領と長時間(会談時間を)取って何かをするということが(難しそうに見えた)」とし「参謀たちには無理に推進するな」と指示したと述べている。

 米国のインフレ抑制法は、北米で組み立てられた電気自動車(EV)に限って、税を1台当たり7500ドル控除するというもの。米国のEV市場で競争する現代自動車・起亜の価格競争力が低下するため、このような差別は改善すべきだという国内産業界の声は大きい。大統領室は9月25日の報道資料で「韓米首脳会談を通じて米国のインフレ抑制法、金融安定化協力などについて協力の意志を確認した」と自評した。大統領室は予定になかったグローバル成長ファンドへの1億ドル供与を発表しつつ、出向いてバイデン大統領といわゆる「48秒」会ったことも「会談」と書いた。

[キム] インフレ抑制法のみをみても、法案が出来上がったのは7月25日だ。これが一種の立法予告期間だった。そして8月7日に上院、8月12日に下院で可決され、8月16日に公布された。「法案は分量が300ページなので多い、突如可決された」。弁解は多いが、このような動向を収集分析する時間は十分あったのに、それを逃した。そして、事後1カ月して首脳外交を行ったが、(その首脳外交は)このような国家的懸案にどれほど貢献したのか。

[ウィ] 私は昔、大使館で議会参事官も務めたことがある。客観的に見て(秘密裏に進められているインフレ抑制法を事前に知ることは)難しい。だから、政府は後で(修正)できるなどと言わずに率直であるべきだ。大統領は今回十分に話し合わなければならなかった。今後の作業のために韓国のメッセージを伝えることは必要だった。現政権を擁護するわけではなく、国内的な理由から過度な目標を設定して、まるでできるかのように説明するのは後進的な外交だということだ。(2につづく)

文/イ・ワン記者、写真/パク・スンファ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1061099.html韓国語原文入力:2022-10-03 13:25
訳D.K

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