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北朝鮮、「グアム打撃」ミサイル能力を立証…2017年の危機再現なるか

登録:2022-10-05 06:33 修正:2022-10-21 07:14
2017年夏のグアム包囲射撃の脅威を想起させる
北朝鮮が「地対地中長距離弾道ミサイル『火星12型』の検収射撃試験を30日に実施」したと「労働新聞」が1月31日に報道した。北朝鮮メディアはミサイルに装着されたカメラで撮影した地球の写真を公開し、今回の発射が成功したと主張した//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮は4日、日本上空を横切り太平洋に落下した中距離弾道ミサイル(IRBM)1発を発射した。先月25日から短距離弾道ミサイルを相次いで発射している北朝鮮は、この日は米国と日本まで狙った中距離ミサイルで軍事行動のレベルを引き上げた。韓米はこれに対応し、合同攻撃編隊軍の飛行と精密爆撃訓練を実施した。

 合同参謀本部はこの日、「午前7時23分頃、慈江道舞坪里(ムピョンリ)一帯から発射され東側方向に日本上空を通過した中距離弾道ミサイルと推定される1発を捕捉した」と発表した。ミサイルの飛行距離は約4500キロメートル、高度は約970キロメートル、速度は約マッハ17(音速の17倍)と探知された。今回のミサイルは、これまで北朝鮮が正常角度(30~45度)で発射していた弾道ミサイルのうち、最も遠い約4500キロメートルを飛行した。今回のミサイルは、2017年夏に北朝鮮が米国領グアムの包囲射撃構想の際に言及した火星12型である可能性が高いことがわかった。2017年4月15日、北朝鮮の軍事パレードで初めて公開された火星12型は、液体燃料をエンジンに用いる中距離弾道ミサイルだ。

 北朝鮮は先月23日、米国の原子力推進空母(ロナルド・レーガン)が釜山(プサン)に入港した後、先月25日から今月1日の間に4回、短距離ミサイルを発射した。米国の戦略資産の朝鮮半島での展開に対する不満と、先月に東海で行われた韓米海軍演習と韓米日対潜水艦戦訓練に対する牽制の意図を込めたものとみられる。

 特に、今回の中距離弾道ミサイルは、短距離ミサイルと違い、日本はもちろん米国グアムまで攻撃可能という点で、前回とは違う意味を持っている。平壌(ピョンヤン)からグアムまでの距離は約3400キロメートルで、今回の中距離ミサイルの飛行距離は約4500キロメートルであり、グアムへの攻撃が可能だ。グアムには朝鮮半島有事の際に出動する米国の戦略爆撃機の基地がある。北朝鮮が今年1月に角度を高めて高角発射した火星12型は、飛行距離約800キロメートル(実際の飛行距離は4000キロメートル前後)、最高高度は約2000キロメートルと探知された。しかし、今回は正常角度でミサイルを撃ち、太平洋の米国の戦力を直接攻撃可能である点を誇示した。

 北朝鮮の中距離ミサイル発射をきっかけに、朝鮮半島の緊張は高まるものとみられる。

 北朝鮮は今後、大陸間弾道ミサイルの発射や7回目の核実験のような戦略的な挑発に乗りだす可能性がある。国防部はこの日、龍山(ヨンサン)庁舎で開かれた国会国防委員会の国政監査で「北朝鮮は核実験状態を維持しており、新型の液体燃料の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を準備している」と報告した。北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「核実験まで行くための段階ではないだろうか。中距離の次は長距離(ミサイル)ということであり、次は核実験だろう」と述べた。

 一部では、2017年夏の北朝鮮核問題危機の時のように、朝米間の対立激化の局面まで進む可能性があるという懸念も出ている。北朝鮮は2017年8月9日、米国に向け「火星12型でグアムを包囲射撃する作戦を立てており、任意の時に同時多発的、連発的にグアムを攻撃する」と公言した。米国もこれに対し、寧辺(ヨンビョン)核施設と東倉里(トンチャンリ)ミサイル基地を制限的に先制攻撃する「鼻血」作戦を検討した。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、北朝鮮の中距離ミサイル発射を強く批判した。尹大統領は出勤途中の囲み取材で「このような無謀な核の挑発は、わが軍をはじめとする同盟国と国際社会の決然とした対応に直面するだろう」と述べた。大統領室も、キム・ソンハン国家安全保障室長の主宰で尹大統領が参加するなか、国家安全保障会議(NSC)を開き、「北朝鮮の中距離ミサイルの発射は、朝鮮半島および北東アジア地域をはじめとする国際平和を脅かす重大な挑発と規定し、強く糾弾する」としたうえで、「北朝鮮に対する制裁の強化を含む、様々な抑制案を模索していくことにした」と発表した。

 韓米はその後、北朝鮮のミサイル発射に対応する飛行・精密爆撃訓練を実施した。合同参謀本部は「北朝鮮の中距離弾道ミサイルの挑発に対応し、韓米合同攻撃編隊軍による飛行と精密爆撃訓練を実施した」とし、「韓国空軍の『F-15K』4機と米空軍の『F-16』戦闘機4機が参加するなか、F-15Kが西海(ソヘ)の稷島(チクト)射撃場の仮想標的に空対地統合直撃弾2発を発射する精密爆撃訓練を実施した」と述べた。

 日本政府も強く反発した。岸田文雄首相は「北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、わが国上空を通過し太平洋上に落下したとみられる」と述べ、と北朝鮮のこのような行為は「暴挙」であり「強く非難する」と述べた。

 こうしたなか、分裂している国際社会がどう対応するのかについても注目される。北朝鮮に対する追加制裁や声明を採択できる安全保障理事会は、ロシアが起こしたウクライナ戦争と米中対立のため、同じ態度を取る可能性は高くない。

クォン・ヒョクチョル記者、シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1061279.html韓国語原文入力:2022-10-05 02:41
訳M.S

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