本文に移動

[ルポ]ソウルで浸水車の申告9千件、4日間道路に放置も…また大雨の際は凶器に

「局地的豪雨がまたくれば、浸水車が凶器になる恐れも」 
車両被害申告9189件で牽引が遅れ 
車主ら「牽引できないのに違法駐車警告文を貼られた」 
自治体「通行の妨げになる場合のみ牽引」
11日午後、ソウル瑞草区のBNKデジタルタワー前にある車が後輪を自転車スタンドに乗せた状態で停められている=コ・ビョンチャン記者//ハンギョレ新聞社

 「2車線しかない狭い道路なのに、浸水した車を片付けないから右折を待つ車が渋滞している」

 8日に浸水したソウル銅雀区(トンジャック)の新大方(シンデバン)駅から冠岳区(クァナック)の蘭谷交差点まで続く往復5車線の道路。浸水した10台あまりの車が、豪雨から4日目の11日午前までも道路のいたるところに放置されていた。浸水した車両のフロントガラスには「違法駐停車取り締まり予告案内」が貼られていた。車を移さなければ過料賦課や牽引措置されるという内容だ。同日午前、ここを車で通りがかったイ・ウォンジョンさん(42)は、「駅前は普段から混雑しているのに、なぜ車をここに4日も放置しているのか分からない。地方自治体が出てでも通行に支障のない場所に移すべきなのでは」と話した。

 8日の大雨で浸水した車が、4日目のこの日まで道端に放置されている。被害申告が9千件を超え、牽引が遅れているのだ。雨がまた降る可能性があるという予報が続く状況で、浸水した車を道路に長期間放置するのは危険だという懸念が出ている。

 浸水被害を受けた瑞草区(ソチョグ)の瑞草大路も、車が放置されていた。同日午後までも、瑞草区の振興アパート一帯には浸水した車が歩道と道路に残されていた。ある車は後輪が歩道にある自転車スタンドに乗ったままの状態だった。瑞草小学校の向かい側のあるアパートの前の歩道上に置かれた車3台には、「浸水車牽引待機中」と書かれた紙が差し込まれていた。このアパートの警備員のKさんは「9日から浸水した車3台が今まで歩道を占めていて、アパートの住民の苦情が寄せられている」とし「1、2日で牽引されると思ったのに、牽引車の渉外が難しいのか今まで放置されている」と話した。

11日午前、ソウル冠岳区の蘭谷交差点近くの道路に、4日間浸水車が逆走行方向に放置されている=チャン・ナレ記者//ハンギョレ新聞社

 自治体は通行の妨げになる場合にのみ、路肩や道路の片側に車を運んでいる。冠岳区役所は「個人車は車主が保険会社を呼んで移さなければならないが、保険会社への申告件数が多すぎて牽引が遅れている」とし「危険だったり交通の流れに大きく妨げになる場合だけ、自治体が受け持っている。駐車警告文は貼ったが、浸水車に限っては実際は取り締まりを行っていない」と説明した。瑞草区役所も「道路の真ん中にある車は道路の端に移動する措置を続けている。その後は、車主が直接保険会社を呼んで牽引しなければならない。マンホールにはまった車は牽引も困難だが、特殊牽引車も動員している」と話した。

 保険会社は被害申告が一度に集中し、車の牽引が遅れているという立場だ。損害保険協会は、8日からこの日午後12時までに損害保険会社12社に申告された車の被害件数は計9189件だと明らかにした。ある保険会社の関係者は「牽引車を総動員しているが、申告が多すぎて、順番に進行している」と話した。

 車主らは保険会社の牽引がいつになるかわからない状況で、区役所は違法駐停車警告文まで貼っていると反発した。冠岳区で車の浸水被害を受けたKさん(54)は「大雨の翌日すぐに保険会社に届け出たが、申告が殺到したといってまだ来ていない。牽引車が足りないという話だけを聞いた。だったら区役所は違法駐車警告文を貼るのではなく、車を移動させなければならないのでは」と吐露した。

 専門家は、雨が続く状況で浸水した車を道路に放置するのは危険だと懸念を示した。大林大学自動車学科のキム・ピルス教授は「局地的豪雨が引き続き予報されている状況で再び浸水したら、浸水した車が流されて凶器になりかねない」とし「自治体が個人車両を直接処理するのが難しい点もあるだろうが、安全のために全国の牽引車を総動員してでも一日も早く処理すべきだ」と述べた。

11日、ソウル瑞草区の瑞草小学校の向かい側のあるマンションの歩道に停められた浸水車に差し込まれてるメモ=コ・ビョンチャン記者//ハンギョレ新聞社
11日午前、ソウル冠岳区の蘭谷交差点近くの道路で、車が4日間放置された浸水車を避けて走行している=チャン・ナレ記者//ハンギョレ新聞社
11日午前、ソウル銅雀区の新大方駅近くの道路に、4日間浸水車が放置されている=チャン・ナレ記者//ハンギョレ新聞社

 一方、悪臭を防ぐために排水口に覆いをしておくのも、大雨がまた降った場合には危険になる恐れがあるという懸念も出ている。この日、ソウル市内の裏通りや住宅街などを見て回ると、排水口の上に悪臭を防ぐため建物の管理人などが被せておいた覆いが目についた。ソウル麻浦区(マポグ)のある建物の管理人は「悪臭のため被せたが、雨が降ったらまた片付ける」と話した。しかし、深夜や明け方に大雨が降ることがあるため、早く片付けなかった場合、覆いが排水を塞いでしまう恐れがある。

 一部の自治体は、雨が降っていない時は閉じ、雨が降れば雨水感知センサーが反応し自動的にカバーが開かれる「スマート雨水受け」等を設置している所もある。

ソウル麻浦区のある裏通りの排水口に覆いが被せられている=ソ・ヘミ記者//ハンギョレ新聞社
チャン・ナレ、コ・ビョンチャン、ソ・ヘミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1054396.html韓国語原文入力:2022-08-11 16:25
訳C.M

関連記事