［ルポ］「部屋に泥水が押し寄せて…」ソウル江南の「バラック集落」は廃墟と化した
ごみの山に覆われた九龍村
家のあちこちで水漏れするケミ村
「ああ疲れた。一睡もできなかった。子どもたちはみんな出て行ったし、先日妻も亡くした。今は手伝ってくれる人がいない」
10日午前9時ごろ、ソウル江南（カンナム）の「最後のバラック村（パンジャチョンと呼ばれる都市貧困層の集落）」九龍（クリョン）村で会ったカン・ソックさん（90）は、雨水に浸かった家の片付けを前に途方に暮れていた。カンさんの家は8日夜の豪雨で泥水に襲われ、電子製品をはじめすべての家財道具が浸水した。雨が止んだ後、休まず水を汲み出したが、「人が暮らせる」家の状態ではなかった。「小川の水がどんどんあふれ出て、ゴミも流れ込んで大ごとだった。家も古くてほとんど崩れてしまった」。36年間九龍村で暮らしているというカンさんは、このような豪雨は生まれて初めてだったと話した。カンさんは家が浸水した2日間、九龍中学校に設けられた臨時居住施設で仮眠を取り、この日早朝に家を片付けるために村に戻ってきた。
2日間（8～9日）の豪雨は、カンさんのようにバラックやチョッパンチョンと呼ばれる長屋に住む住居脆弱階層をさらに過酷に襲った。低地に建てられた古く粗末な家は、降り注ぐ雨を防ぐには力不足だった。住民たちは豪雨が小康状態になった10日、水魔が通り過ぎた家の家財道具をどうやって片付ければいいのか困り果てていた。
臨時居住施設で2日間を過ごした九龍村の住民たちは、この日の朝、家に向かった。再開発事業地域である九龍村は、650世帯余りが実際に居住しているものと推定される。計8区域に分かれている九龍村では、低地帯（3・5・6区域）が最も大きな被害を受けた。
折れた木の枝とビニールごみが村の路地にあふれていた。食べ物と家庭ゴミが入り交じって山になった場所の横には、首輪をつけた犬が1匹、飼い主を待っていた。8日夜に降り注いだ豪雨で、ほとんどが高齢層の村の住民たちは着の身着のままで避難した。
村の入口で会った50代半ばのYさんは「一つの部屋から泥水が突然流れ込んで、家の中が水でいっぱいになった」と話した。路地にはLPGのボンベが倒れており、未開封のミネラルウォーターの瓶は泥の中にそのまま埋まっていた。ホン・ヒョンドンさん（81）は「家は崩れていないが全部浸水した。部屋中が臭くて水が溜まっているから、乾いてから入らなきゃ」と話した。
雨は止んで晴れたが、ここの住民たちは太陽を全く歓迎できない。村が片付いていない状況で炎天下の日差しが家を乾かすと、ひどい悪臭がすると住民たちは口をそろえた。九龍村の住民たちが梅雨の後にいつも経験することだ。ハン・チュンヒさん（69）は「臨時居住地も（中学校の）夏休みが終われば移動しなければならないが、ここでどうやって暮らせばいいのか」とし「言ってしまえばあれだけ金持ちといわれる江南区の地域なのに、助けてくれるところがない」と話した。溝が氾濫して家が浸水したというイ・ドックさん（69）は、「とても怖かった。水がこんなに溢れるのは生まれて初めて。家を捨てて丘の上に逃げた」と話した。イさんの家の天井は豪雨で半分崩れた状態だった。
江南地域より被害は少なかったが、江北（カンブク）の住居脆弱階層も突然の水害に悪戦苦闘した。脆弱階層が多く住む西大門区弘済洞（ソデムング・ホンジェドン）のケミ村には、狭い階段のあちこちに強風で折れた木の枝が落ちていた。この村に30年ほど住んでいるというHさん（52）は「2日間、雨が降りすぎて家のあちこちと倉庫の天井から雨漏りしてバケツを置いた」とし「玄関の天井にある電灯は水のために漏電するんじゃないかと心配して取り外した」と話した。ペク・チョンブンさん（68）は「数年前に屋根の修理をしたので天井の漏水はないが、家が古いので壁に水が染みこむ。家が湿気で湿っているが、ここは都市ガスが入らず高い油を使ってボイラーを回さなければならないから、そうすることもできない」と話した。
訳C.M
