6月の満60歳以上の新型コロナウイルス感染症の致命率は、全年齢の致命率の5.8倍を超える高水準だった。社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)なしに高齢層の健康を保護するためには、ワクチン接種とともに、重症・死亡リスクを下げる飲む治療薬の処方が必要だが、60歳以上の感染者の5人に4人は治療薬を服用できていなかったと推定される。
7日に本紙が確保した疾病管理庁の資料「新型コロナウイルス感染症の月別致命率」によると、最も新しい統計である今年6月の60歳以上の致命率は0.35%で、同月の全年齢の致命率0.06%の5.83倍。今年2月から6月にかけての60歳以上の致命率は0.87%→0.56%→0.40%→0.34%→0.35%と低下傾向にあるが、最近の0.35%という致命率は2009年の新型インフルエンザ流行時の全年齢の致命率(0.016%)の21倍を超える。疾病庁は、発生した感染者が死亡したかどうかを反映した月ごとの致命率を集計している。60歳以上の致命率は、コロナ禍が始まった2020年3月の10.74%が最も高く、第3波のさなかの2020年12月には8.50%、第4波の2021年11月には4.37%だった。7月16日午前0時現在の60歳以上の累積致命率は0.71%で、同期間の全年齢の累積致命率0.13%の5.46倍。
高齢層にとってコロナは依然として危険だが、60歳以上の感染者の数は増え、割合は高まりつつある。7日午前0時現在の国内発生感染者10万5023人に占める60歳以上の割合は22.1%(2万3253人)。60歳以上の割合が20%を超えるのは、今月3日から5日連続。防疫当局は、6月の1カ月間は1週間で平均6件だった療養病院・療養院などの感染脆弱施設の集団感染が、7月第3週までの3週間では1週間平均約36件に増えていることから、60歳以上の感染者が増加しているとみている。
防疫当局は高齢層の保護のため、コロナの症状のみられる60歳以上の人に対して、軽症であっても医師の処方に従って治療薬を服用するよう呼びかけている。症状が現れてはじめてコロナ検査を受けるという最近の傾向を考慮すると、60歳以上の感染者には、同時使用が禁止されている薬物を服用していない場合は全員に治療薬の処方が勧告されていると言える。しかし、疾病庁が推計した60歳以上の感染者に対する飲む治療薬(パクスロビドやラゲブリオなど)の6月の投与率は17.9%にとどまった。60歳以上の感染者の5人に4人ほどが飲む治療薬を処方されていなかったわけだ。3月からの各月の60歳以上に対する治療薬投与率(推定値)は7.5%→8.9%→12.2%→17.9%と、依然として低い。パクスロビドの場合、韓国の基準では23の成分が含まれる医薬品とは共に服用してはならず、そのうちセントジョーンズワート(不安やうつの緩和に用いられる)などの6つの成分を含む医薬品は、患者が服用を中断しても治療薬を投与することは不可能で、医療現場では処方に困難をきたしている。
専門家は積極的な治療薬の処方を注文している。国家感染症危機対応諮問委員会の委員長を務める翰林大学医学部のチョン・ギソク教授(呼吸器内科)は、5日の中央災害安全対策本部のブリーフィングで、「(パクスロビドとの同時使用が禁止されている薬物を)いちいち確認するのが難しければ、次善策であるラゲブリオを使ってレムデシビルを注射するという方法もある」とし、「(飲む治療薬は)致命率を半分ほどに低下させるので、医療機関は(必要な)患者を把握して処方してほしい」と述べた。高麗大学九老病院のキム・ウジュ教授(感染内科)も「政府が(在宅治療者の)集中管理群をなくしたことで、高齢層も症状があってはじめて医療機関に行って治療が受けられるようになっているが、60歳以上の高危険群は感染が確認されたら100%医療スタッフから診療を受けるようにしないと、治療薬の処方率も上がらないし、早急な措置も取れない」とし、「独居老人や脆弱階層は生活治療センターなどにおいて積極的に管理することが、重症・死亡を減らす方法」だと述べた。
一方、8日からはワクチンを打っても免疫が形成されない重症の免疫低下者などを対象とした抗体治療薬「EVUSHELD」の投薬が始まる。投薬対象は満12歳以上、体重40キロ以上の血液がん、臓器移植、先天性免疫不全の患者で、最近7日以内のコロナ感染履歴がない人。