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[寄稿]サル痘が来る

登録:2022-08-02 02:24 修正:2022-08-02 08:55
カン・ビョンチョル|小児青少年科専門医
WHOは、約70カ国で発症が確認されたサル痘について国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言した。PHEICはWHOが下せる最高水準の警戒段階で、エボラ、新型コロナウイルスに続き今回が7回目の宣言。写真は先月24日、仁川国際空港第1旅客ターミナルの感染注意案内が表示されたディスプレイ/聯合ニュース

 先月23日、世界保健機関(WHO)はサル痘について国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言した。サル痘はアフリカの外では珍しい病気だったが、今や全世界に広がっている。先月29日までに韓国を含む79カ国で2万2485人が感染している。患者数は5月6日に1人、6月1日に733人、7月1日に6448人と増加が激しい。

 1980年、WHOは天然痘撲滅を宣言した。数千年間にわたり人類を苦しめてきた恐ろしい疾病が永遠に消えたのだ。ワクチンのおかげだったが、病気がなくなったことで接種も中止された。現在サル痘が流行しているのは、50代以下に天然痘ワクチンを接種した人がほとんどいないからだ。2つのウイルスはいとこ同士なので、天然痘ワクチンを接種すればサル痘も予防できる。

 サル痘の自然宿主はげっ歯類だ。初めてこのウイルスが発見されたのがサルからだったためこの名がついた。1970年にコンゴで最初の患者が発見され、その後アフリカ中西部に土着した。げっ歯類を狩って食べることで感染すると見られる。症状は軽くない。高熱や筋肉痛などのインフルエンザに類似する症状が現れるとともに、リンパ節に腫れが出る。数日後に発疹が現れ、膿が出て非常に痛い。かさぶたが取れると傷痕が残る。感染すると大抵は症状が現れ、症状がある時にのみ感染し、濃厚接触によって広がる。新型コロナウイルスのように空気感染したり、エイズのように知らないうちにうつったりするなら、すでにかなり広まっていたはずだ。今年は何が違うのか。

 感染症の様相が変わった時は3つを観察する。病原体、人間、環境だ。ウイルスのゲノム解析の結果、予想より多くの突然変異が観察されており、一部は感染力が高まっているようだ。突然変異は活発に分裂する時に起こる。今年初めにアフリカで患者が増え、支援を訴えたことを思い出さざるを得ない。

 人間はどうか。今年アフリカの外で発生した患者は、ほとんどが同性間の性関係歴のある若い男性(98%)で、発疹と皮膚の膿も肛門と陰部に1、2個のみ。性感染症のような様相を呈している。同性愛フェスティバルが震源地として名指しされているが、新型コロナと関係があるかもしれないという推測も出ている。

 環境は言うまでもない。人口は増え続けており、地球は日増しに暑くなっている。動物の生息環境は最悪だ。住む場所と食べ物がなくなれば動物は人里に降りてくる。貧困が深刻なアフリカでは野生動物を多く捕らえる。接触が増え、動物の病原体は次第に頻繁に人間の体内に入り込んで増殖するようになり、病気を引き起こし、突然変異の機会を得る。

 サル痘はどれほど危険なのだろうか。対処は容易だと信じられた。天然痘ワクチンが残っており、専用のワクチンや治療薬もある。何より致命的な病気ではない。死者はアフリカの話に過ぎず、医療へのアクセスが良い場所ではかかっても死ななかった。しかし、ブラジルとスペインで死者が出たことで雰囲気が変わった。

 私たちはまだ他人事だと考えているようだが、不確実性は大きい。患者の皮膚はもちろん、精液、唾液、大小便、鼻の中からもウイルスが発見されている。知らない間に広がる可能性もあるということだ。ペットへの感染の可能性も提起されている。そうなればこの病気は全世界に土着するだろう。人類が天然痘を征服できたのは、病原体が人間のみを宿主にしたからだ。人獣共通の病原体は、すべての人間と動物にワクチンを接種しない限り無くすことはできない。

 赤壁で諸葛亮は東南風を呼び、火攻めで曹操軍を全滅させる。その前に連環の計で敵をだまし、すべての船を鎖で繋げておいたのだ。ひとたび1隻の船に火がつくと、互いに繋がれた船は一瞬にして炎に包まれた。今の世界はこのようなものだ。私たちは繋がり過ぎているため、パンデミックという火矢を自分のみが免れるということは、誰であろうとあり得ない。対岸の火を見るような態度そのものが危険だ。

 この3年間で2度目のパンデミックを迎える。ワクチンの独占、低開発国内のインフラ不足による接種の不備など、コロナ禍初期の風景がそのまま繰り返される。環境と生態の危機が続く限り、感染症は我々を襲い続けるだろう。ジャーナリストのイジドア・ファインスタイン(I.F.)・ストーンの言葉は胸を打つ。「共に生きる方法を学ばなければ、私たちは共に死ぬだろう」

//ハンギョレ新聞社

カン・ビョンチョル|小児青少年科専門医 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1053140.html韓国語原文入力:2022-08-01 19:21
訳D.K

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