強制徴用被害者の支援団体が、韓国政府が強制徴用被害者に対する賠償の解決法として議論した「代位弁済」に反対するとの立場を表明した。
(社)日帝強制動員市民の会は30日、光州(クァンジュ)広域市議会の市民疎通室で記者会見を行い、「日帝強制徴用の被害者は人権侵害を受けた『被害者』であって、他人の善意に対して金を要求する『恵まれない人々』ではない」と強調した。
市民の会は「現在、三菱重工業は韓国の裁判所により商標権2件、特許権2件に対する差し押さえに続き、強制売却手続きが差し迫っている」とし、「しかし加害者である日本企業の現金化を前に、なぜ韓国政府の方がより焦り、居ても立っても居られなくなっているのか理解できない」と主張した。
市民の会は「4月に訪日した韓日政策協議団(団長=チョン・ジンソク国会副議長)は日本側と『強制動員被害者賠償問題を解決するための官民共同協議会』の発足、『代位弁済』案、300億ウォン(約31億4000万円)の基金造成などについて話し合っている」とし「加害当事者である日本企業の基金造成への不参加の話が出ている状況において、被害者には一言の相談もなしに一方的にこのような案がなぜ議論されうるのか疑問」だと語った。
市民の会は、韓国政府が日本企業に代わって賠償金を支給し、その後に日本側に請求するという、いわゆる「代位弁済」方式に対する反対の意思を明確にした。
市民の会は「代位弁済案は判決に則った賠償義務を履行するものではなく、義務のない者が自発的募金や義援金で被害者に代わりに金を支給するというやり方」だとし、「韓国政府は日帝強制動員の被害者がなぜ加害者からの正当な『賠償』ではなく、全く関係のない人々から『寄付』を受け取らなければならないのか、その理由を明らかにしてほしい」と述べた。
市民の会は「被害者たちは問題解決の原則として、戦犯企業が歴史的事実を認め、謝罪を行えと一貫して要求してきた」とし、「代位弁済方式は加害企業に免罪符を与えるものであり、生涯闘ってきた被害者の最後の自尊心を踏みにじる行為」だと批判した。
ヤン・クムドクさん(93)、キム・ソンジュさん(92)ら光州・全羅南道に住む5人(生存2人)の強制徴用被害者は2012年、韓国の裁判所に強制徴用損害についての賠償請求訴訟を起こし、2018年11月に最高裁で「1人あたり1億~1億5千万ウォン(約1050万~1570万円)を賠償せよ」とする判決を勝ち取った。しかし、被告企業である三菱重工は賠償を行っておらず、原告は三菱重工が韓国で所有している商標権2件と特許権6件に対して差し押さえ命令を申し立て、認められている。
一方、韓国外交部は強制動員被害者に対する賠償問題の解決のための具体的な代案作りに向け、次官が呼びかけ学界や専門家などが参加する官民協議体を設置し、来月4日に発足させる予定だ。