尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の統一部が「16人の同僚を殺害した2人の北朝鮮漁師の送還」(2019年11月7日、以下「東海(トンヘ)事件」)について従来の公式見解を180度覆したことに対し、統一部内部で反発が起きている。20日の本紙の取材によれば、「国家公務員労働組合統一部支部(以下「統一部労組」)」は19日、統一部内部の掲示板に「送還に関する従来の立場を覆したことに対して憂慮を表明する」とし、「統一部は政争の道具となるのではなく、南北関係の中心省庁として本来の役割と機能を取り戻すべき」という要旨の声明を掲載した。
統一部労組は「統一部は統一部だ」と題するこの声明で「(2019年11月)当時、北への送還についての意思決定は国会に詳しく報告しており、与野党ともその意思決定について問題視していない」とし、「今になって従来の意思決定を覆すほどの状況の変化があったのか疑問」と指摘した。続いて「これは単に立場を覆したという問題にとどまらない。今後の一貫性と信頼性のある統一政策の推進に悪影響を及ぼすだろう」との懸念を示した。
同労組は「政府はこれまで、憲法3条に則って北朝鮮住民を大韓民国国民と認めるとともに帰順を受け入れてきたが、分断という現実を考慮して送還も行ってきた」とし、「帰順と送還の間のどこに線を引くかの法的基準がない状態においては、司法的判断のみで決めるということこそ政治的判断」だと批判した。そして「南北関係は法のみでは裁断できないというのが現実」だとし「法的空白がある南北間の問題は、単なる司法的結果によってではなく、政治的共同体の絶え間ない合意の形成によって解決されなければならない」と述べた。
内部の反発は労組にとどまらない。統一部の複数の関係者は、「こんなことをするために老獪な政治家であるクォン・ヨンセ長官を統一部に送りこんできたのかと思う。後のことをどうするつもりなのか心配だ」と語った。別の関係者は「周りから『政権が変わって長官が変われば統一部はまた立場を変えるのか』と聞かれれば何も言えず、恥ずかしい」とため息をついた。
統一部内部で反発が拡大していることから、統一部のキム・ギウン次官は19日午後「コミュニケーション」を大義名分として統一部の全職員に対してオンライン会議を招集し、1時間あまり「引き締め」を行った。
統一部は「東海事件」について「凶悪犯罪北朝鮮住民追放」(2019年11月15日の国会外交統一委員会への報告)との従来の公式見解を180度覆して「北朝鮮漁師強制送還」(11日のチョ・ジュンフン報道官の記者会見)と再規定し、板門店(パンムンジョム)から北に送還される場面を写した写真(12日)と動画(18日)を異例にもにメディアに公開し、「政争」の真っ只中におどり出た。