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「私たちは生きたい」大宇造船下請け労働者の叫びに… 鉄の檻より強硬な韓国政府

登録:2022-07-20 09:59 修正:2022-08-03 10:50
[現場ルポ]大宇造船・玉浦造船所、緊張高まる 
尹大統領「公権力投入を示唆」から5時間で 
政府側が対話の試み「ひとまず出てこい」 
「違法行為には厳正措置」繰り返し 
玉砕座り込み続ける労働者「労組する権利を」 
労組「賃上げ金30%→今年5%上げ」を提示
大宇造船海洋の下請け労働者たちが28日にわたり玉浦造船所を占拠しストをしている中、19日午後、現場を訪れた雇用労働部のイ・ジョンシク長官(左)が船舶に設置された1立方メートルの鉄の構造物の中で座り込みをしているユ・チェアン副支会長と話している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 19日午後2時頃、「戦雲」の漂う慶尚南道巨済(コジェ)の大宇造船海洋・玉浦(オクポ)造船所の上空に、大韓民国の「公権力」を総括する二人が現れた。イ・サンミン行政安全部長官とユン・ヒグン警察庁長官候補を乗せたヘリコプターが、民主労総・全国金属労組所属の巨済・統営(トンヨン)・固城(コソン)造船下請け支会のストライキ現場の上空を旋回していた。二人が見下ろしていたのは、造船所第1ドックで建造中の原油運搬船の底に、1立方メートルの「鉄の檻」を作り、自分を閉じ込めた下請け労働者のユ・チェアンさん、そしてその上の高さ15メートルの構造物にはしごで上り、高空座り込みを行っている下請け労働者6人だった。「バタバタバタ」と威圧的な公権力のプロペラの音が、「賃金を引き上げよ」「労組をする権利を保障せよ」という彼らの叫びをかき消した。

 19日は先月2日に造船下請け支会がストライキを始めてから48日目、先月22日にユ・チェアン副支会長と6人の下請け労働者が第1ドックを占拠し座り込みを始めてから28日目だ。いや、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が大宇造船海洋ストライキ問題に関して「国民も政府ももう待てるだけ待ったではないかと思う」と述べ、前日に続き繰り返し公権力投入の可能性を示唆してから5時間余りで、行政安全部と警察の首長が現場に急派された。狭くて高い座り込み現場に、恐れもなく「公権力投入」をねらう大統領、シンナーと遺言状を胸に「最後まで闘う」と決心した下請け労働者の、極限の対立を解決するための事実上「最後の交渉」である。

 第1ドックの四方には、重い船舶の構造物が置かれていた。欄干の向こうはすぐ海である座り込み現場は、全体の高さ30メートルの原油運搬船の船体の一部だった。狭くて急な階段を降りていくとようやく、ユ副支会長が座り込みをしている船底の構造物が現れる。「国民の皆さん、申し訳ありません。私たちは生きたいのです」というプラカードが掲げられている構造物の鉄格子の間から、180センチを超える長身のユ副支会長の裸足が突き出ていた。

 この日、行政安全部長官と警察長官候補に先立ち、ヘリコプターから降りて取材陣の前に姿を現したイ・ジョンシク労働部長官が「鉄の檻」の前に歩み寄った。30年にわたる労働運動家出身のイ長官は、ユ副支会長に「はやく座り込みを終えれば、最善を尽くして皆さんの望む内容が平和に妥結できるよう支援する」と伝えた。しかしユ副支会長は「座り込みを終わらせることはできない。先に解除しろと言っておきながら、これまで一度も約束を守らなかったではないか」と答えた。

大宇造船海洋の下請け労働者たちが28日にわたり玉浦造船所を占拠しストをしている中、19日午後、船舶に設置された1立方メートルの鉄の構造物の中で座り込みをしているユ・チェアン副支会長が、現場を訪れたイ・ジョンシク雇用労働部長官と話をしている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 政府が座り込みを「違法占拠」と規定し、公権力投入を示唆して圧迫していることについても、ユ副支会長は「造船所で働く中で、法を守ろうという人を見たことがない。あらゆる方法を使って法を曲げて利用しようとする人たちのせいで、このような問題が起きたのではないか」と語った。2016年から続いた造船業不況の中で、使用者が犯した違法のために下請け労働者が被害を受けたのであり、もはや闘争は避けられないという趣旨だ。キム・ヒョンス造船下請け支会長は、イ長官に「ユ副支会長のいるところが大宇造船の現実だ」と言い「20年間磨いた熟練の技術を持つ彼が、あのように檻を作って自らを閉じ込めなければならないのか」と詰め寄った。

 15日に始まった元請け・下請け労使の4者交渉は、まだ糸口を見出せずにいる。造船下請け支会は最初の要求案である「賃金30%引き上げ」よりはるかに前向きな「賃金を今年5%、来年10%引き上げ」と、「民事・刑事上の責任を問わない不提訴」を提示したというが、5回目の交渉が開かれたこの日、夜遅くまで進展は見られなかったという。造船下請け支会の関係者は「会社側の態度の変化は感じられるが、会社の提示案には特に変化がない」と話した。イ・ジョンシク長官は「皆さんが最大限(交渉に)拍車をかけて終えれば、破局は免れる」として、労働部の担当局長を交渉現場に残してその場を離れた。

 下請け労働者たちはまた、イ・サンミン行政安全部長官に、政府が公権力投入を示唆したことに対する憂慮を伝えた。キム・ヒョンス支会長は「私たちは生きようとして、造船所で仕事をしようとして闘争しているが、引き続き公権力の話が出てくるならば、どんな事態が起きるか分からないと非常に心配している」と話した。イ・サンミン長官は、キム支会長に「よく分かった」と答えた。取材に応じたときは、「公権力投入も当然考慮しているが、予期せぬ問題が発生する可能性があるため、慎重に考慮している」とし、「最も良い方法は対話で妥結することだが、そうでなければ他の方法があるのか、探している」と述べた。

巨済/パク・テウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1051606.html韓国語原文入力:2022-07-20 02:44
訳C.M

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