韓国で新型コロナウイルス感染症の感染者数が政府の予想より急速に増え、8月中旬頃に一日最大28万人を超える感染者が出る可能性があるという民間の研究陣の予測が出た。国内の再拡散の主軸である変異株BA.5よりも強い伝播力を持つBA.2.75(ケンタウロス)まで国内に流入し、再流行がよりはやくなるのではないかという懸念も出ている。専門家らは感染者数にこだわるより、ピークが来る前に十分な医療対応能力を備えることが重要だと助言する。
14日、国家数理科学研究所と大韓数学会が運営する「新型コロナ数理モデリングタスクフォース(TF)」が発刊した報告書によると、国家数理科学研究所のチェ・ソンファ研究員は、13日現在1.42人の感染再生産指数が30%増加すれば、2週間後の27日には8万1267人、1カ月後の8月10日には28万8546人の感染者が発生すると予測した。13日現在で1週間の一日平均感染者数は2万4千人余りで、2週間後には3.4倍、4週間後には12倍まで急増するということだ。オミクロンの細部系統BA.5は、現在優勢種であるBA.2より30%ほど速く伝播されると知られているが、BA.5が国内優勢種となった場合、このようなシナリオもありうるという分析だ。嘉泉大学のチョン・ジェフン教授(予防医学科)も8月中旬、1日平均20万人、最大25万人が発生する可能性があるという研究結果をフェイスブックに公開した。民間研究陣のこのような予測は、13日に政府が明らかにした「9月中旬・20万人」との予測より拡散スピードが速く、規模は大きい。
今回の再拡散はすでに政府の予測を上回っている。6月頃、防疫当局は8月末に1日1万7000人ほど感染者が発生すると予想したが、12日の週間の1日平均感染者はすでに2万人を超えた。
専門家たちは実際の流行が数理の予測を外れる理由として、新しい変異の登場と免疫の減少を挙げた。この前の第1~5波とは異なり、現在国内で拡散中のBA.5変異は全世界で同時に流行しており、情報が多くない状況だ。BA.5が強い伝播力を持っているという事実は知られているが、実際の感染者・ワクチン接種者間での免疫回避の程度は、さらなる研究が必要な状態だ。インドで5月末に初めて確認された後、急速に拡散しているケンタウロスも国内に流入し、新しい変数として浮上した。感染やワクチン接種で獲得した免疫が3~4カ月前後で落ちるのも、流行予測を難しくしている。
国内での数理予測の精度は、医療システムに備える上で重要だ。軽症患者は一般医療システムへの転換が行われ、病院・医院で対面診療がかなりの部分可能になったが、依然として重患者や透析、分娩、小児感染者の場合、その都度別途で病床を指定して動員する方式で対応している。対外経済政策研究院のチャン・ヨンウク副研究委員は「予測がきちんとできなければ病床、人員の準備ができず、重症患者・死亡者の発生増加につながりかねない」とし「特殊病床や適切な人員などの準備がなければ『防げる死』を防げなくなり、不必要な被害が発生することになるだろう」と述べた。韓国医学研究所のシン・サンヨプ常任研究委員は、「9月が過ぎれば、まだ残っていた重症予防効果も著しく落ちるだろう」とし、「重症数が増えれば医療システムに負担を与えることになるため、現在のような病床対応で可能なのか疑問だ」と述べた。
数理予測研究者たちも具体的な感染者数より流行がピークに達する時期や規模を予測することが重要であり、防疫当局と市民もこれに注意を払うよう呼び掛けている。建国大学のチョン・ウノク教授(数学科)は「ピークが8月であれ9月であれ、数理モデリングできたる可能性を提示すれば、政府は医療システムを備え、市民は警戒心を持って活動することになる」とし「流行に備えて病床を用意しポジティブな行動変化が生じれば、感染者が減少し、(感染者が急増するという)予測が合わなくなるのではないかと期待する」と述べた。