安倍晋三元首相を殺害した山上徹也容疑者が、犯行の背景として自身の母親の宗教である統一教会(現在の名称は世界平和統一家庭連合)に言及したことが伝えられたことで、統一教会に関心が集まっている。
山上容疑者は警察の取り調べで「自分の母親は統一教会の信者で、安倍晋三が統一教会と親しいことを知って狙った」、「もともとは統一教会のリーダーを狙おうとしたが難しそうだったので、安倍元首相が統一教会と関係があると考えて狙った」と供述したという。
山上容疑者の母親は夫の死後に引き継いだ建築会社を経営していたが、同社は20年前に破産しており、これについて山上容疑者は、統一教会の信者である母親が同教会に巨額の金を寄付したためだとして恨みを抱いてきたという。
これについて世界平和統一家庭連合は11日に声明を発表し、その中で「安倍晋三元首相に銃撃を加えた容疑者山上徹也は家庭連合に属していた信者ではなく、過去にも本連合に加入していたという記録は存在しない」、「容疑者の母親は月1回、家庭連合の教会の行事に参加してきた」と述べた。
日本のメディアの報道によると、山上容疑者は「政治信条に対する恨みではなく、安倍元首相が(統一教会の団体に)送った映像メッセージを見て関係があると思った」と話しているという。
実際に安倍元首相は、世界平和統一家庭連合の団体である天主平和連合(UPF)と同連合が昨年9月に仁川(インチョン)の松島(ソンド)セントラルパークホテルで共催した「新統一韓国定着のためのシンクタンク2022」発足式に続く希望前進大会で、映像で基調演説を行っている。安倍元首相はこの演説で「全体主義、覇権主義国家の、力によって現状の変更を強行しようという策動を阻止しなければならない」、「日本、米国、台湾、韓国などの自由と民主主義の価値を共有する国々の結束が、より一層求められている」と述べている。この行事では、安倍元首相だけでなく米国のドナルド・トランプ前大統領、カンボジアのフン・セン首相、ジョゼ・マヌエル・バローゾ元欧州委員会委員長らも同様の方法で参加している。
これについて統一教会は、声明で「日本の首脳級の指導者である安倍元首相が本連合に映像演説を送ったという理由で犯行対象にしたという容疑者の主張は、常識では理解できない」、「家庭内での理解し難い成長過程を経て発生した極端な事件であるため、手続きに沿って司法機関によって容疑者の犯行動機が明確に調査されるものと予想する」と語った。
安倍元首相が統一教会の行事に映像を送ったのは、統一教会が古くから日本の右翼政治勢力と結んできた関係のためだとみられる。統一教会の文鮮明(ムン・ソンミョン、1920~2012)教主は、1968年4月に日本で国際勝共連合を創設して以来、日本の右翼政治家と密接な関係を築いてきたという。安倍元首相の母方の祖父であり自民党内の極右派だった岸信介元首相が、1970年4月に日本の統一教会を訪問していることからも、それが確認できる。それ以降、岸元首相は1970年代、自民党によるスパイ防止法制定などの反共立法過程で、財政支援と世論形成のために国際勝共連合を積極的に活用したという。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(統一教会の被害対策に取り組む弁護士の連合組織)の会長で、著書『検証・統一協会=家庭連合』で統一教会の実体を暴露した山口広弁護士は、2017年の韓国CBSとのインタビューで、統一教会の自民党内における政治勢力化を助けた中心人物として、岸信介とA級戦犯容疑者だった笹川良一元衆議院議員の名をあげた。山口弁護士は「統一教会の政治勢力化は安倍晋三首相の祖父である岸信介元首相の時から始まり、笹川良一が橋渡しの役割を果たした」とし「保守政権下で統一教会=勝共連合の力を利用して対北朝鮮政策や反共運動を繰り広げてきたが、日本の政治家には若い選挙運動員や党員がほとんどいないため、統一教会が組織的に金と運動員を送ってくることを拒否はできなかっただろう」と述べている。
日本の週刊誌「週刊現代」は、1999年2月に「現職国会議員128人の『勝共連合・統一教会』関係度リスト」を暴露したのに続き、2006年6月には「安倍晋三と統一教会は祖父の代から綿々と続く関係」と批判する記事を載せている。
統一教会でも似たような主張を繰り広げてきた。勝共連合の機関紙「思想新聞」は1986年7月20日の記事で「衆参両院議員選挙で130人の勝共推進議員が当選した」と主張している。文鮮明教主が自ら日本政界との関係に言及した文書(『文鮮明語録』)もある。
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