尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、文在寅(ムン・ジェイン)政権に任命されたチョン・ヒョンヒ国民権益委員長とハン・サンヒョク放送通信委員長の任期について「ご自身で判断する問題」だと述べた。国民の力から辞任圧力を受けている2人に事実上、自ら身を引くよう求めたわけだ。にもかかわらず、産業部ブラックリスト疑惑についての検察による捜査は「正常な司法システム」だと評価した。尹大統領自身は文在寅政権の関係者に対して辞任圧力を加えながら、文在寅政権による機関長辞職強要疑惑に対しては捜査が必要だという二重的な態度を示したのだ。
尹大統領は17日、ソウル龍山(ヨンサン)の庁舎への出勤途中での囲み取材で、チョン・ヒョンヒ、ハン・サンヒョク両委員長の国務会議排除問題について「あえて来る必要もない人まで同席させる必要があるのか」と述べた。「2人に身を引いてほしいのか」との問いには「任期があるのだからご自身で判断してくれ」と答えた。権益委員長と放通委員長は大統領が任命する。文在寅政権に任命された2人の任期満了はそれぞれ来年6月と7月。
尹大統領は、検察の産業部ブラックリスト疑惑に対する捜査をめぐって共に民主党が「政治報復」だと反発していることを問われ、「民主党政権時代にはしていないのか」と問い返した。そして「正常な司法システムを政治的に論争化するのは望ましくない」と語った。
尹大統領の出勤途上の発言を総合すれば、前政権に任命された委員長には「自ら判断せよ」と遠回しに辞任を促しながら、前政権時代の辞職強要事件に対しては検察捜査が必要だと語っているわけだ。
尹大統領は2017年に国政壟断事件の特検捜査チーム長を務め、朴槿恵(パク・クネ)元大統領が「本当に悪い人」、「まだ現職なのか」と述べたノ・テガン元文化体育観光部局長辞職強要事件を捜査している。最高裁では職権乱用罪が確定している。
そのため政界と法曹界からは、チョン・ヒョンヒ、ハン・サンヒョク両委員長に対する尹大統領の遠回しの辞職強要について「自分には甘く他人には厳しい」との批判の声があがっている。元検事のある弁護士は「直接的な辞職強要ではないが、政治的圧力を加えたもの。環境部と産業部のブラックリスト事件があるためジレンマに陥ったように見える」と述べた。共に民主党のウ・サンホ非常対策委員長は前日、「自分たちも文在寅政権が任命した任期制公務員に対して居座りと批判したり、辞任を促したりしているではないか。これもブラックリスト事件か」と批判している。