共に民主党のユン・ゴニョン議員は、2020年に西海(ソヘ)で海洋水産部公務員である漁業指導員が北朝鮮の銃撃で殺害された事件に関して、被害者の越北(北朝鮮へ渡ること)は断定できないとする仁川(インチョン)海洋警察署の発表を「巧妙に事実関係を糊塗している」と批判した。ユン議員は文在寅(ムン・ジェイン)政権で大統領府の国政状況室長を務めた文大統領の最側近の一人。
ユン議員は16日、フェイスブックに「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の西海公務員殺害事件発表に対する反論」と題する文章を載せ「韓国国民の痛みが政権の政治的利害関係により利用されないことを願う」と述べた。仁川海洋警察署は同日、2020年9月21日に西海北端の小延坪島(ソヨンピョンド)近くの海上で失踪し、北朝鮮で銃撃され死亡した海洋水産部の公務員について「越北の意図を認めるに足る証拠は発見できなかった」とする捜査結果を発表した。尹錫悦政権はこれに合わせ、被害公務員の遺族が大統領府(現大統領室)や海洋警察などを相手取って起こした「情報公開拒否処分取り消し訴訟」に対する控訴も取り下げた。
ユン議員は、文在寅政権の「自主越北」との判断は多角的な諜報と捜査にもとづいたものだったと反論した。ユン議員は「当時、文在寅政権はLさん(被害者の公務員)の行方不明を認知した後、多角的な捜索活動および諜報活動を行い、Lさんが北朝鮮軍によって殺害されたことを確認した」とし、「以後、様々な情況にもとづいた総合的な分析と判断を経て、信憑性のある情報だと確認されるとすぐに国民に公開した。2020年9月24日のこと」だと語った。
さらに「一部では、Lさんが越北を試みたと政府が断定したと主張するが、これも歪曲された主張」だとし、「海洋警察を含む韓国政府は当時、多角的に諜報を分析し捜査を行った結果、越北と『判断』されると述べたもの」と強調した。ユン議員は「この判断は、事件発生地域が北朝鮮側の水域だったという物理的限界の中で、軍と海洋警察、情報機関の様々な諜報と捜査を根拠にした総合的判断」だと付け加えた。
ユン議員はまた、文在寅政権が「自主越北」との判断を下す過程で、軍の特殊情報(SI)が「重要な役割」を果たしたと説明した。ユン議員は「この特殊情報は、尹錫悦政権が本日控訴を取り下げた情報公開請求訴訟の過程で、裁判所がすでに非公開と決めているもの」だとし、「今日の尹錫悦政権の発表もやはり、当時の文在寅政権が特定情報を歪曲したり、事実関係を意図的に抜いてそのような判断を下したとは断定できずにいる」と述べた。
ユン議員は、「本日の海洋警察の発表は、越北の意図はなかったという明確な証拠も出せないまま、『越北の意図を認めるに足る証拠は発見できなかった』という中途半端な結論を下すことで、むしろ巧妙に事実関係を糊塗している」とし、「保安が命である安保関連情報が政権の好みによって歪曲されることは決してあってはならず、これは国家的な自傷行為だ」と批判した。