「共に民主党は、人に例えるならば、民主化運動に参加して誠実に生きてきたと信じる『人のいい中年男性』のようなもの。自分たちの犯罪と不正は問題ではないと心から信じていて、それが今の時代の状況と衝突しているのです」(ホン・ヘウン「孔徳洞ハウス」代表)
最大野党「共に民主党」はどこで道に迷ったのか。本紙が4~8日に政治・社会学者や評論家、市民社会、法曹界の要人20人に「共に民主党の最大の敗北原因」を質問した結果、半数を超える12人が「チョ・グク事態」を重要な分岐点として挙げた。チョ・グク元法務部長官一家の入試不正・私募ファンド疑惑に対する共に民主党の対応が、「自分の犯罪・不正は問題ではないという運動圏(進歩主義的な社会改革運動に関わった人々)の中年男性」という「偽善的な既得権」のイメージを固定化させたということだ。
回答者たちは、「チョ・グク元長官一家の疑惑」を、共に民主党の大統領選挙・地方選挙の敗北につながる「これらすべての事態の始まり」(キム・マングォン慶煕大学教授)に挙げた。子どもの入試のために社会的ネットワークを総動員し、7つのスペック(資格や語学能力、対外活動経験など)を作りあげたチョ元長官夫妻の姿が、「家族がいかにして階級の再生産と権力の再生産の徹底した基盤になるのか」を示し、「人々が権力化や既得権化を眺めるパラダイムを変えた」(クォン・ミョンア東亜大学教授)ということだ。特に、保守勢力より「道徳的優位にある」という点を政治的基盤にしてきた共に民主党が、「社会全般的に(保守勢力より)もっとひどいという認識を広めたきっかけ」(イ・ジュンハン仁川大学教授)になったという分析だ。
しかし、「チョ・グク一家の疑惑」を個人の偽善を越え韓国社会を揺るがした「チョ・グク事態」にしてまったのは、共に民主党の対応だった。「既得権になったという事実を、政治的なレトリックでも、精神的にも認めることができない」(慶煕大学のソン・ヒジョン研究教授)共に民主党が、「上位層で起きることを、あたかもすべての進歩的価値のために戦わなければならないことであるかのように変えてしまった」(中央大学のイ・スンユン教授)からだ。ジェンダー政治研究所「ヨセヨン」のクォン・スヒョン代表は、「『どの親もみんな同じだ』といって構造的差別を正当化する姿勢は、共に民主党が原則のない態度へと崩れることになる重要な要因」になったと指摘した。上流層の脱法的な入試不正を積極的にかばう姿勢が、「中流階級と庶民の政党」を標榜した党の長きにわたる理念的基盤を根本から揺さぶったということだ。
さらに、「チョ・グクを守る瑞草洞(ソチョドン)集会」に象徴される「ファンダム(熱心な支持者の集団)政治」は、「党の支持者の感情と国民感情の乖離」を決定的に広げるきっかけになった。ホン・ヘウン代表は、「チョ・グク事態に対して、はじめは特に関心がなかったが、『私も私の隣人も、子どもを大学に送る時はみんなそうした』と強固にかばい非難をはねのける支持者たちを見て驚いた。『これが共に民主党の常識か』という乖離を体感した」と述べた。「チョ・グク事態当時、過度に攻撃を受けていると信じる支持者たちが、過剰に防御し、奇妙な陣営戦」を広げ、「応戦型のファンダム戦略によって、強硬なファンダムに頼っては戻るという悪循環」が発生することになったという指摘(クォン・ミョンア教授)もある。
「道徳的優位の亀裂→進歩的価値の歪曲による正当化→ファンダムを中心とする過剰な防御」は、チョ・グク事態以降の共に民主党の「行動要領」になった。共に民主党が、度重なる広域自治体の首長の性犯罪事件において、「被害事実を否定し、被害者を攻撃する真実ゲームに参加」(アリゾナ州立大学のキム・ジョン・ヒウォン教授)したことがその例だ。そのような意味で、大統領選挙と地方選挙の敗北は、「誤りは認定せず、批判者を売り渡す政党」に対する審判だということだ。
共に民主党は歪曲された価値体系を増幅する「フィルターバブル」(見たい情報が優先的に表示され、見たくない情報は遮断されること)から抜け出さなければならないという指摘が出ている。「ワグル」のイ・ジンスン理事長は「自分たちだけでフィルターバブルのなかで酔っている間、共に民主党の支持者や友好的な有権者が離れていき、フィルターバブル自体が縮小した。それは相次ぐ選挙の敗北として明らかになったが、バブルの中にいる人々だけが見えていない。共に民主党はそこに目を向け、打ち破っていかなければならない」と述べた。