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北朝鮮、国境閉鎖から2年で「新型コロナ感染者」発生を初めて認める

登録:2022-05-13 06:42 修正:2022-05-13 07:19
8日、平壌でオミクロン株の感染者を確認 
「最重大非常事件」…6月上旬に全員会議 
ワクチンなど対南・国際協力要請するかに関心集まる 
クォン統一部長官候補「北朝鮮の困難を助ける用意ある」 
 
金総書記「計画された経済事業を滞りなく進めるべき」 
外部と遮断した状態で生産・事業・生活続ける方針示す
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長の主宰で1月20日に開かれた労働党中央委第8期第6回政治国会の様子/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮当局が12日、新型コロナウイルス感染症の変異株「オミクロン」の感染者が発見されたと正式に発表した。2020年1月末に国境を閉鎖して以来、「新型コロナウイルス感染者ゼロ」を主張してきた北朝鮮当局が感染者発生の事実を公表したのは初めて。

 このような事実は同日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長が労働党中央委本部庁舎で主宰した党中央委第8期第8回政治局会議で報告・確認され、「国家防疫体制を最大非常防疫体制に移行」する内容の政治局決定書が採択された。「朝鮮中央通信」が報じた。ただし、一般人民向けの「労働新聞」には関連記事が掲載されなかった。

 朝鮮中央通信の報道によると、北朝鮮の国家非常防疫指揮部とその単位は同日の会議で「8日、首都のある団体の発熱者から採集した検体に対する厳格な遺伝子配列分析(PCR)の結果を審議し、最近世界的に急速に広がっているオミクロン株『BA.2』と一致すると結論付けた」という。

 朝鮮中央通信は「2020年2月から今日に至る2年3カ月間にわたり強固に守ってきた我々の非常防疫戦線に穴が生じるという国家最重大の非常事件が発生した」と報じた。ただし、政治国会は新型コロナ感染者の発生を「国家最重大非常事件」と規定し「最大非常防疫体系に移行」することを決めたが、「全面封鎖措置」は取らなかった。

 金正恩総書記は新型コロナ感染者が発生したことを受け、「全国のすべての市郡で自分の地域を徹底的に封鎖し、事業単位・生産単位・生活単位別に隔離した状態で、事業と生産活動を組織」するよう指示した。地域間の移動を禁止し、外部と遮断した状態で生産、事業、生活を続ける方針を示したのだ。さらに「計画された経済事業で滞りなく進めなければならない」とし、「営農事業や重要工業部門と工場・企業所での生産を最大限に急ぎ、華城(ファソン)地区1万世帯の住宅建設と蓮浦(ヨンポ)温室農場建設のような人民のための党の念願事業を期日内に問題なく完成しなければならない」と明らかにした。つまり、新型コロナ感染者の発生にかかわらず、当初立てた目標を達成する経済活動は継続せよという指示だ。

 金総書記はこれと関連し、「全住民集中病検診」や「消毒事業の強化」、「備蓄しておいた予備の医療品の動員措置」などを指示した。また、最大非常防疫体制の基本目的として「新型コロナの安定的抑制・管理」と「感染者の治療、最短期間での感染原因の除去」を挙げた。

 金総書記は「戦線と国境・海上・空中で警戒勤務をより一層強化し、国防で安全の空白が生じないよう万全を期することを特に強調された」と、朝鮮中央通信は報じた。金総書記のこのような指針をみる限り、2020年1月末以降続いてきた「国境全面閉鎖」措置はしばらく続くものとみられる。多くの防疫専門家たちは、「国境の全面閉鎖」を前面に押し出した北朝鮮の「ゼロコロナ政策」が、脆弱な保健医療基盤によるやむを得ない選択だとみている。

 しかし、伝播力が非常に強いオミクロンの感染者が発生したため、北朝鮮当局の意志とは関係なく、防疫政策の変化が避けられないという指摘もある。新型コロナ感染の確認や感染者の隔離・治療には、診断キットやワクチンなど国際社会の助けが要であるからだ。北朝鮮当局が中国を越えて国連、さらに韓国当局にも支援を要請するかどうかに注目が集まるのもそのためだ。北朝鮮当局は文在寅(ムン・ジェイン)政権の「ワクチン提供など防疫協力」提案に反応せず、COVAXなど国際社会のワクチン協力の受け入れにも消極的な態度を示した。

 これと関連し、クォン・ヨンセ韓国統一部長官候補は同日、国会外交統一委員会で開かれた人事聴聞会で、国民の力のチョン・ジンソク議員の「北朝鮮に対するワクチン支援を南北対話のモメンタムにする考えはあるか」という趣旨の質問に「当然だ。北朝鮮の困難を積極的に助ける用意がある。すでに統一部の予算まで編成されており、(長官に正式に)就任すれば、協力案を積極的に検討する」と答えた。

 金正恩総書記が同日の政治局会議で、「一連の重要問題を討議・決定するために、6月上旬に党中央委第8期第5回全員会議の招集」を決定した事実にも注目する必要がある。6月上旬に労働党全員会議が招集されるまで、オミクロン株の感染拡大を自主的に制御できるかどうかと、21日にソウルで行われる尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とジョー・バイデン米大統領の初の韓米首脳会談で、どのような「対北朝鮮発言」が出るかなどによって、金正恩総書記の政策方向に変化が生まれる可能性もある。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1042573.html韓国語原文入力:2022-05-1218:06
訳H.J

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