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韓国最高裁「私的空間で同性軍人の『合意の上での性関係』、処罰できない」

登録:2022-04-22 02:21 修正:2022-04-22 09:40
有罪判決の原審を覆し、高等軍事裁判所に破棄差し戻し 
「軍人であることを理由として性的自己決定権を過度に制限」
キム・ミョンス最高裁長官が21日午後、ソウル瑞草区の最高裁大法廷で開かれた営外・勤務時間外における同性軍人同士の性関係に対する処罰について全員合議体判決を下すため、着席している/聯合ニュース

 同性同士の軍人が私的空間で合意の上で性関係を結んだ場合は、軍刑法の醜行罪では処罰できないとする最高裁の判断が下された。かつて最高裁は、合意の有無とは関係なしに、男性軍人同士が性関係を持っただけで軍刑法上の醜行罪に当たるとの趣旨で判断していたが、今回の判決で軍刑法の判例も変わることになった。

 最高裁判所全員合議体(裁判長:キム・ミョンス最高裁長官)は21日、軍刑法上の醜行容疑で起訴されたA氏らに有罪を言い渡した原審を破棄し、事件を高等軍事裁判所に差し戻した。

 男性軍人将校のA氏と副士官のB氏は2016年の9月と12月、勤務時間外に営外にある独身寮で、合意の上で性的関係を結んだ。A氏は他の男性軍人とも、2016年9月から翌年2月まで同じ行為をしている。これによりA氏らは軍刑法違反で起訴された。軍刑法第92条6項には、「肛門性交その他の醜行をなした者は、2年以下の懲役に処す」と規定されている。

 一審はA氏に懲役4カ月、執行猶予1年を言い渡した。B氏には執行猶予3カ月の宣告猶予判決を下した。宣告猶予とは、比較的軽い犯罪を犯した者に対し、直ちに刑は宣告せず、猶予期間が過ぎれば宣告を行わないという判決だ。二審も一審の判断を支持した。

 しかし、最高裁の判断は異なった。 裁判に参加した13人の最高裁判事のうち8人は、「私的空間で自発的な意思によって行われる性行為が、軍という共同社会の健全な生活と軍紀を直接的、具体的に侵害したとは考えにくい場合には、軍刑法の当該規定は適用できない」と判断した。これらの最高裁判事は続いて「『肛門性交』は異性間でも可能な行為だ。現行の規定を、同性間の性行為そのものを処罰する規定だと解釈することはできない」と付け加えた。

 「時代の変化」も今回の最高裁の判決に影響を及ぼしたと解釈される。これらの最高裁判事は、「同性間の性行為が客観的に見て一般人に性的羞恥心や嫌悪感を生じさせ、善良な性的道徳観念に反する行為だとする評価は、この時代の普遍妥当な規範として受け入れ難くなっている」とし、「私的空間において自発的合意にもとづく性行為をしたケースを処罰することは、合理的な理由なく、軍人であるという理由のみで性的自己決定権を過度に制限するものであり、憲法上保障された平等権、人間としての尊厳と価値、そして幸福追求権を侵害する恐れがある」と判決した。

 アン・チョルサン、イ・フングの両判事は別の意見を示した。両判事は、「多数意見の結論に賛成する」としながらも、「この規定が保護する法益に『性的自己決定権』が含まれるとは考えられない」と述べた。キム・ソンス判事も別の意見を示した。同判事は「当該規定は相手の意思に反して肛門性交などを行った行為者のみを処罰するものと解釈しなければならないという点で、多数意見に賛成する」としつつも、「互いに合意した際にも、軍紀侵害との理由のみで現行規定を適用し、処罰の余地を残す解釈は、文言解釈の範囲を外れており、許されない」と述べた。

 一方、チョ・ジェヨン、イ・ドンウォンの両判事は反対意見を示した。両判事は「この規定は強制性、時間や場所などに対する制限とは関係なく、男性軍人間の肛門性交やその他の醜行を処罰する規定と考えるべきだ」とし、「多数意見の解釈は文言の可能な範囲を超え、裁判所に与えられた法律解釈権限の限界を超えたもので、同意できない」と述べた。

 最高裁の関係者は「今回の判決は、合意による同性間の性行為に関して『それそのものは処罰価値のある行為ではない』ということを、最高裁が宣言したということに意義がある」と述べた。

 A氏らを支援してきた軍人権センターのイム・テフン所長は最高裁判決後、記者団に対し、「大韓民国から、同性間で合意された性関係を処罰する悪法がなくなることになった。憲法裁判所も早期に同法に対して違憲を決定し、不当な差別により前科のついた性的マイノリティー軍人が名誉を回復する機会を作るべきだ」と述べた。

 憲法裁判所は2016年、軍刑法第92条6項に対して5対4で合憲とする判断を下している。合憲意見を示した5人の裁判官は「軍隊は同性間の非正常な性的交渉行為が発生する可能性が著しく高く、上級者が下級者に対して同性間の性的行為を敢行する可能性が高いため、これを放置すれば軍の戦闘力保全に対する直接的な危害が発生する恐れが高い」と述べている。一方、残りの4人の裁判官は「合意による淫乱行為は軍の戦闘力保全と直接的な関連性があるとは考えにくいため、原則的に刑事処罰の範囲から除外すべき」と述べている。

チョン・グァンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1039867.html韓国語原文入力:2022-04-21 15:43
訳D.K

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