本文に移動

「次期大統領、『慰安婦問題』解決の約束守って」イ・ヨンスさんが手紙

登録:2022-04-14 02:22 修正:2022-04-14 08:11
尹錫悦次期大統領への手紙を本紙に公開 
「『慰安婦問題』解決するとの約束、必ず守って 
女性家族部は過去の悲しみに気を使ってくれた唯一の省庁 
…最後の願いは解決の知らせを伝えること」
イ・ヨンスさん(94)が大邱中区のヒウム日本軍慰安婦歴史館で尹錫悦次期大統領に宛てた手紙を手にしている。背景は歴史館内の慰安婦被害者の写真展示スペース=パク・コウン記者//ハンギョレ新聞社

 「おまえも春を知って訪ねて来たんだね。私の春はあっという間に過ぎてしまったのに…」

 11日、大邱中区(テグ・チュング)のヒウム日本軍慰安婦歴史館で本紙の取材に応じた「慰安婦」被害生存者のイ・ヨンスさん(94)は、歴史館の裏庭に咲いたライラックを見つめながらそう言った。1944年春、16歳だったイさんは台湾に連れていかれ、3年間日本軍「慰安婦」生活を送った。韓国に帰ってからも心の奥深くに「そのこと」を秘め、1992年になってようやく被害を証言した。2007年2月には米国の下院公聴会で故キム・グンジャさんとともに日本の蛮行を証言した。

 2022年春、94歳になったイさんは、依然として「慰安婦」問題の解決と日本の心からの謝罪を得るため闘っている。「慰安婦」被害生存者は今や12人だけだ。イさんは「これ以上寂しい春を迎えたくない」と述べ、尹錫悦次期大統領に宛てた手紙を本紙に公開した。手紙には、「慰安婦」問題解決に積極的に取り組んでほしいという要請と、女性家族部の廃止に反対するという内容が書かれている。

 「私、イ・ヨンスは日本軍『慰安婦』問題を解決するために全身全霊を尽くしています。助けてください。次期大統領!…必ず約束を守ってください」

 イさんは力を込めて手紙を書いた。イさんは昨年9月11日、ヒウム日本軍慰安婦歴史館で、当時は国民の力の党内予備選候補だった尹次期大統領に会った。イさんは、「尹次期大統領は『大統領になれなくても、「慰安婦」問題は解決する。日本の謝罪を必ず引き出す』と約束した」と語った。イさんは「その言葉がどれほど慰めになったか分からない。大統領になられたので約束を守ると信じている」と述べた。

「被害女性が頼れる場所は女性家族部しかない」

 尹次期大統領の公約である女性家族部の廃止については、反対の立場を重ねて明らかにした。イさんは「女性家族部はなければなりません。生存している12人の被害女性の過去の悲しみに本当によく気を使ってくれました」と記した。今年2月、イさんは国民の力のイ・ジュンソク代表に会い、「女性家族部がなかったら、私たちは死んでいたかもしれない」とし、女性家族部廃止公約の撤回を要請している。イ代表は「尹候補が決定した事案だ」とし、廃止の立場を固守した。イさんは本紙に「女性家族部は実家のような場所」とし「被害女性たちが頼るべき場所は(省庁の中では)女性家族部しかない。職員だけでなく長官からも絶えず連絡がくる。被害女性たちを忘れずに気を使ってくれること自体が生きていく上で大きな力になる」と話した。この他にも女性家族部は、日本軍慰安婦被害者の生活を安定させるため、「日帝下日本軍慰安婦被害者に対する保護・支援及び記念事業等に関する法律(慰安婦被害者法)」第4条にもとづき、生活安定支援金▽介護費▽葬祭費▽国民基礎生活保障法にもとづく生計給与▽医療給与法にもとづく医療給与などの支援を行っている。

イ・ヨンスさん(94)が尹錫悦次期大統領に宛てた手紙=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 イさんは「慰安婦」問題を解決できなかった過去の政権に対する批判の声を強めた。朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2015年12月28日に成立した「韓日慰安婦合意」については「認めることはできない。破棄しなければならない」と述べた。2017年に文在寅(ムン・ジェイン)政権が設置した「韓日日本軍慰安婦被害者問題合意検討タスクフォース(TF)」の調査によると、合意当時、韓国政権は「慰安婦」関連団体を説得し、海外での少女像の建設を支援しないとする約束などを盛り込んだ「裏合意」が存在していたことが明らかになっている。

「日本の心からの謝罪を引き出して」

 文在寅大統領は就任後、「慰安婦」合意に対する批判を続けつつも、再交渉は開始しなかった。文大統領は2017年、TF設置の発表後、「手続き的にも内容的にも重大な欠陥があったことが確認された。私は大統領として、この合意では慰安婦問題は解決されないということを改めて明確にする」とする立場を文章で示した。しかし、昨年1月28日の年頭記者会見では、同合意を「国同士の公式の合意」と認める趣旨の発言を行った。韓国の裁判所が同月8日に故ペ・チュンヒさんら12人の「慰安婦」被害者による損害賠償訴訟で原告勝訴の判決を下し、韓日対立が深まったことによるものだ。イさんは現政権の態度について、「どうしてあの合意が受け入れられるのか。現政権は解決すると思ったのに、(前政権と)まったく同じだ。今からでも釈明してほしい」と批判した。

 尹次期大統領は、韓日慰安婦合意に対する立場を公式に示してはいない。今年1月、「日本軍慰安婦被害者支援団体ネットワーク」が6政党の大統領候補に対して、韓日「慰安婦」合意に関する政策質疑書を渡したものの、尹次期大統領は回答を拒否している。

 イさんは新政権に自らの「最後の希望」をかけている。「韓日慰安婦合意を無効にし、日本の心からの謝罪を引き出してほしい」というのがイさんの願いだ。そして、「新しい大統領は違うと信じたいです。約束を忘れず必ず守ってください。先に逝った被害女性たちに『新大統領が解決してくれた』と伝えるのが私の最後の願いです」と語った。

 以下は、イ・ヨンスさんが尹錫悦次期大統領に宛てた手紙の全文。

尹錫悦次期大統領!

大統領当選を心からお祝い申し上げます。

私イ・ヨンスは、日本軍慰安婦問題の解決のために全身全霊を尽くしています。

助けてください。次期大統領!

去る9月に歴史館を訪問し、両手を握って解決すると約束なさいました。

必ず約束を守ってください。

そして女性家族部はなければなりません。生存している12人の被害女性の過去の悲しみに本当によく気を使ってくれました。

また、慰安婦問題は世界に非常によく知られています。絶対に大韓民国の文化遺産としてユネスコに登録されなければなりません。

私イ・ヨンスは大韓民国の娘として必ず慰安婦問題を解決し、韓日が交流して正しい歴史を学べば世界平和が訪れます。

2022年4月11日10時55分

イ・ヨンス

パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/1038769.html韓国語原文入力:2022-04-13 15:59
訳D.K

関連記事