次期大統領に当選した尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は20日、「青瓦台(大統領府)は帝王的権力の象徴であり、私は絶対に入らない」と述べ、大統領執務室を龍山(ヨンサン)の国防部庁舎に移転し、5月10日の任期初日から新しい執務室で勤務すると語った。大統領選挙の過程で「光化門(クァンファムン)大統領時代」を開くと公約していた尹氏は、「次期大統領として報告を受けたところ、光化門移転は市民の立場からすれば災難だと思った」と述べ、国民世論の集約や合意の手続きなしに、大統領当選からわずか11日にして「龍山執務室移転」を強行したのだ。尹氏は、執務室のリフォームや警護処の移転費用などで496億ウォン(約48億6000万円)かかると発表しているが、1兆ウォン以上と推定される国防部と合同参謀本部の連鎖移転費用や、既存の大統領府の移転による設備廃棄など、いわゆる「隠れた費用」などは推計していないため、波紋が予想される。
尹氏はこの日、ソウル鍾路区三清洞(チョンノグ・サムチョンドン)の韓国金融研修院内に設けられた大統領職引き継ぎ委員会で記者会見を行い、「龍山の国防部と合同参謀本部の区域は国家安保指揮施設などがよく整っており、大統領府を市民に完璧にお返しできるだけでなく、警護措置に伴う市民の不便もほとんどない」とし、大統領執務室を龍山の国防部庁舎に移転すると発表した。同氏は「大統領府は任期開始の5月10日に開放し、国民にお返しする」と述べた。
尹氏は、これに伴って国防部をその隣の合同参謀本部庁舎に移転し、合同参謀本部は戦時指揮所がある南泰嶺(ナムテリョン)の首都防衛司令部に「連鎖移転」させるという構想を明らかにしつつ、「軍部隊が引っ越すからといって国防に空白が生じるというのは納得しがたい」と述べた。尹氏は移転費用について「1兆ウォンだの5千億ウォンだのという話には根拠がない」とし「国防部を合同参謀本部の建物に引っ越す費用118億ウォン(約11億6000万円)など、移転費用として496億ウォンの予備費を申請する計画だ」と付け加えた。しかし尹氏は「長期的には国防部も果川(クァチョン)に移転するという方式が望ましいとの見解もあるが、今はそこまで説明して判断する状況ではないと思う。合同参謀本部も(南泰嶺に)直ちに移転するという意味ではない」とし、それらの地域への移転に伴う費用は推定していない。
当選直後に慌ただしく進められた執務室移転に対しては、世論はもちろん、国民の力の内部からも速度を調整すべきだとの意見が強く提起されているが、尹氏は執務室移転の動力自体が失われるとの懸念から、結局は「龍山移転構想」を決めたものとみられる。尹氏はこの日の会見で「空間が意識を支配する」と述べつつ、繰り返し「帝王的大統領制の終息」と「国民との意思疎通」を強調した。「歴代政権における大統領執務室移転の試みが、その度に挫折してきたという経験に照らしてみても十分にわかる。またしても国民との約束を裏切るなら、これからの大統領の誰もがこれを新たに試みることは難しいだろう」とし、「国民との約束を実践しようとの私の意志を、国民のみなさまにはご理解くださるよう、切にお願いしたい」と述べた。
しかし、「速度戦式」の移転による安保の空白などを憂慮する声も強い。一方的な決定についての国民の説得も課題として残っている。共に民主党のユン・ホジュン非常対策委員長は記者懇談会で「国民の意思を完全に無視した当選者の横暴」とし「国家安保に危害を加え、市民の財産権を侵害する拙速と手抜きの執務室移転計画は、直ちに撤回すべき」と反発した。