次期大統領に当選した尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、大統領執務室をソウル龍山区(ヨンサング)の国防部に移すことを事実上確定し、今月末までに国防部に本館の建物を空けさせるなどの移転準備を進めていることが確認された。しかし、国内外の安保情勢に不安を抱える中で移転作業があわただしく進められれば、軍事態勢に空白が生じることが懸念されるなどとする批判論も根強いため、最終決定の段階で再検討が行われる可能性も残っている。
尹氏の報道担当を務めるキム・ウンヘ氏は16日のブリーフィングで「既存の大統領府に尹次期大統領が入る可能性はゼロ」とし「龍山を含め、いくつかの候補地について検討作業中」と述べた。キム氏は「5月10日に我々が就任し、新しい大統領執務室から国民にあいさつができるということだけが明確に申し上げられる」と述べた。
尹氏側が「脱大統領府」を急ぐ中、現場ではすでに大統領執務室の国防部への移転を前提として準備作業が進められている。本紙の取材結果を総合すると、移転対象とされる国防部、合同参謀本部、防衛事業庁の当該部署では、移転の日程と場所が公示された。当該部署で働く複数の公務員と軍関係者は「3月末までに国防部が本館を空け、4月の建物のリフォームを経て、5月初めに尹次期大統領が入居する計画だと聞いている」と語った。国防分野のある公務員は、「来週までに現在のオフィスの荷物を整理し、別の場所に移す準備をするよう通知を受けた」と語った。
大統領執務室が国防部本館に移れば、国防部、合同参謀本部、防衛事業庁のオフィスが連鎖的に移動しなければならない。国防部本館にある長官室、次官室と各局・室のオフィスが合同参謀本部や国防部別館へと移り、国防部別館を使用中の部署はソウル龍山区厚岩洞(フアムドン)の旧防衛事業庁の建物に移るとされる。
大統領府への勤務経験のある政界関係者は「尹錫悦氏は国民との意思疎通を掲げて大統領府から出ると言っているが、現在の国防部は軍事保安のため市民のアクセスが困難。龍山が国民との意思疎通に適した場所なのかは懐疑的」と述べた。ある軍関係者も「国防部と合同参謀本部の指揮部が同じ時期にオフィスを連鎖的に移すと、一時的に通信と指揮に空白が生じるため、軍事準備態勢に問題が生じうる」と懸念を示した。