次期大統領に当選した尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は15日、李明博(イ・ミョンバク)政権時代に「軍コメント工作」に加担して有罪判決を受けたキム・テヒョ元大統領府対外戦略企画官を大統領職引き継ぎ委員会の外交安保分科委員に抜擢した。また、チェ・スンシル国政壟断事件に関与したチェ・サンモク元企画財政部次官を引き継ぎ委経済第1分科の幹事に起用した。過去の政権で問題となった人物が引き継ぎ委に参加したことで、「仲間内での地位の分け合い」ではなく「経験と能力による人材起用」を公言した尹氏の約束が色あせたという批判の声があがっている。
尹次期大統領の報道担当を務めるキム・ウンヘ氏はこの日、キム・テヒョ元企画官を抜擢した背景について「強い軍隊による堅固な安保、韓米同盟、対北朝鮮政策の改善を優先し、国益を優先した外交安保政策を推進してきたため」と説明した。しかしキム元企画官は、国軍サイバー司令部の要員によるコメント工作への加担容疑で裁判にかけられている人物だ。同氏は、2012年の総選挙と大統領選挙を前後して、軍サイバー司令部に、政府と与党を支持し野党政治家を非難するコメントをネット上に9000回以上書くよう指示した容疑で、キム・グァンジン元国防部長官、イム・グァンビン元国防部政策室長らと共に起訴され、一審で1000万ウォン(約94万8000円)の罰金刑を言い渡された。控訴審では、政治関与は有罪が維持されたが、大統領記録物流出容疑は無罪となり、罰金300万ウォン(約28万4000円)の宣告が猶予された。また同氏が主導して2012年に韓日秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)が締結されたが、「密室協定」という激しい批判を受け、同氏は公職を退いた。同氏は、有事の際の日本の自衛隊の朝鮮半島介入を容認することを趣旨とする論文を書くなど、韓日軍事協力の必要性を強調している。尹氏も候補時代に韓米日軍事同盟に言及している。
経済第1分科の幹事に任命されたチェ・サンモク元次官は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代に大統領府の経済金融秘書官として在職しながら、大企業に「ミル財団」への寄付を働きかけたとされる。チェ元次官は、サムスン電子のイ・ジェヨン会長に経営権を継承させるため、サムスン物産と第一毛織の合併過程に介入したことも明らかになっている。キム・ハッキョン元公正取引委員会副委員長は、検察の被疑者捜査で「チェ・サンモク経済金融秘書官が電話をかけてきて『サムスン側が従前の検討結果に対して不満を抱き続けているため、きちんと検討してほしい』と述べた」と供述している。サムスンにかかる負担を軽減するため、合併で発生した新規の循環出資の規模を少なく見積もってくれとの要求だった。
チェ元次官は本紙の電話取材に対し、「企業や全経連の腕をひねったり強制したりはしていない」とし、「国民の目線からすれば望ましくない部分はあると思うが、当時の起訴状やメディア報道などは(事実と)異なる部分がかなりある」と述べた。
以前の政権で問題となった人物を「重用」したことで、引き継ぎ委の人選基準には疑問が提起されている。尹氏は「徹底的に実力中心」を公言したものの、物議をかもした前歴は見ぬふりで一貫しているというわけだ。また、検証強化を行うのはまず引き継ぎ委員からと強調しておきながら、軍コメント工作事件で有罪判決を受けた人を重用したことは、「状況に合わせ伸び縮みする物差しだ」との批判の声もあがっている。引き継ぎ委の関係者は、「公職者として様々な批判があったのは事実だが、分野の専門性や周囲の評価を総合すれば欠格事由にはならないと判断した」と語った。しかし、国民の力のある議員(当選回数2回)は「前の政権での批判が再び起こり得るということは十分に予見していたはずだが、法的に問題なければ問題ないと判断したのではないかと思われ、残念だ」とし「専門性を優先的に考慮したとしても、批判のある人物を連れてくるというのは別問題」と指摘した。
引き継ぎ委のクォン・ヨンセ副委員長は本紙に対し、「2人とも尹氏が当時の事件捜査と関連があるため、問題のない部分だと判断し、選んだのだと思う」と述べた。