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「ロシア制裁」言及しない韓国政府…ウクライナ情勢に「慎重」な理由は

登録:2022-02-24 09:02 修正:2022-02-24 11:33
朝鮮半島平和プロセスへの悪影響を懸念 
政権交代期に韓ロ関係管理 
ロシア進出企業の被害、エネルギー・原材料供給網の懸念などを考慮
文在寅大統領が22日午前、大統領府国家危機管理センターで開かれた「2022年度国家安全保障会議および対外経済安保戦略会議連席会議」で資料を見ている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 米国とロシアが対立しているウクライナ情勢に対し、韓国政府の対応は極めて「慎重」な基調だ。ロシアがウクライナ東部のドンバス地方の親ロ共和国を独立国家と認めて兵力投入を発表すると、米国、欧州連合(EU)、ドイツ、英国、日本、カナダ、オーストラリアなどがロシアへの制裁措置を発表したが、韓国政府は「制裁」を口にしないという状況が代表的な例だ。

 政府の対応基調は「ウクライナの主権・領土保存の尊重」と「対話を通じた平和的解決に国際社会の責任ある一員として積極的に参加」という側面では米国などと歩調を合わせている。ロシアに対して「侵攻」や「糾弾」という直接的な批判を控え、「制裁」措置を出していない点では異なる。「制裁」には乗り出さないが、「新北方政策の重点協力対象国」であるウクライナに対する(人道的)支援と情勢の平和的解決に力を貸すという基調だ。

 大統領府関係者は23日、「政府はあらゆる可能性を念頭に置いて準備中」だとしながらも「軍事的支援や派兵は韓国に該当しない」と一線を引いた。そして「米国など各国の対応がどうなるかによって、韓国の対応も調整される」と付け加えた。制裁へと旋回する可能性を完全に遮断してはいないわけだ。

 政府のこうした「慎重」基調は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領主宰で22日に開かれた国家安全保障会議(NSC)と対外経済安保戦略会議の連席会議を通じて公式化された。「安保だけでなく経済にも大きな影響を及ぼさざるを得ない緊迫した状況」という文大統領の判断のように、「安保」と「経済」を考慮に入れたことが分かる。政府はなぜ、このような対応基調を選んだのか。

 まず、「非核化」を含む朝鮮半島平和プロセスへの悪影響を遮断することだ。ロシアは「拒否権」を持つ国連安保理常任理事国であり、6カ国協議当事国でもある。さらに、「北朝鮮核問題」を含む朝鮮半島問題の対話・交渉を通じた包括的・段階的解決という韓国の解決策を支持している。2008年から「戦略的協力パートナー関係」を結んできた韓ロの「戦略的協力」だ。文大統領が連席会議を終えながら「ウクライナ情勢が朝鮮半島平和プロセスに対する努力に否定的な影響を及ぼさないよう積極的に努力してほしい」と特別に注文したのもこのような理由からだ。

 二つ目に、政権交代期に韓ロ関係を管理する必要性だ。韓国は伝統的に大統領選挙後、新政権の発足に合わせて「大統領特使外交」を行ってきたが、この時ロシアは米国、中国、日本とともに必ず含まれる「周辺4カ国」に分類される。大統領選挙まで半月も残っていない状況で、今回の事態をきっかけに韓ロ関係が悪化すれば、新政権発足直後に対ロシア外交に重大な問題が発生する危険性がある。政府関係者は「政権交代期という点を当然考慮するしかない」と述べた。

 三つ目に、ロシアに進出している韓国企業の被害の最小化とエネルギー・原材料などの供給網への支障を回避する必要性だ。ロシアは韓国の12番目の貿易相手国だ。サムスン電子、現代自動車、LG電子などが現地で工場を稼動し、ロッテホテル、ロッテデパートが運営されるなど、173社が進出している。ロシアは韓国の9番目の輸入相手国だが、ナフサ、原油、有煙炭、天然ガスなど主にエネルギー・原材料中心だ。エネルギー輸入国である韓国にとっては重要な貿易相手だ。政府は事態が長期化しエネルギー・原材料供給に支障が生じれば、備蓄原油の一部を市中に供給し、無煙炭・穀物(飼料用)などの代替輸入船を用意する準備をしているという。

 「制裁」を前面に立てない文在寅政権のこうした慎重基調は、韓国社会の一角の誤解とは異なり「進歩政権の偏向」とみることはできない。2014年のロシアのクリミア半島侵攻・合併に対抗し、米国が国際社会に対ロ制裁への参加を訴えた時、韓国政府は参加しなかった。当時、韓国政府は保守色の強い朴槿恵(パク・クネ)政権だった。朴槿恵政権はクリミア事態の際、「制裁」はせず、韓ロ高官級交流を一時中断するかたちで対応レベルを調節した。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1032279.html韓国語原文入力:2022-02-24 02:32
訳C.M

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