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「軍事的恐怖」対「経済的恐怖」が現実化…米ロ、崖っぷちに突き進むか

登録:2022-02-24 05:40 修正:2022-02-24 07:10
バイデン大統領、ロシアの軍事行動を「侵攻」とし、直接制裁発表 
軍事行動を標榜するプーチン大統領との正面衝突局面へ 
米国、「厳しい」制裁カードはまだ出さず 
ロシア、「状況を見守る」と警告ムード維持
米国のジョー・バイデン大統領が今月22日、ロシアに対する制裁を発表している=ワシントン/AP・聯合ニュース

 ロシアがウクライナ東部ドンバス地方の親ロ共和国を独立国家と認め、兵力投入を発表したことについて、米国が侵攻の始まりだとして経済制裁を発動し、「実力行使」する局面が繰り広げられている。ロシアが高めている「軍事的恐怖」に、米国が「経済的恐怖」で対抗し、状況悪化の可能性がますます高まっている。

 米国のジョー・バイデン大統領は22日(現地時間)、前日のウラジ―ミル・プーチン大統領の発表を「ウクライナ侵攻の始まり」だと規定し、ロシア国債の取引制限の強化など直接制裁を宣言した。米財務省は、米国の投資家らが3月1日以降に発行されるロシア国債を流通市場(第2次市場)で取引することを禁ずると発表した。これに先立ち、米国は2014年、ロシアのクリミア半島併合後、ドル建てロシア国債の取引禁止、発行市場(1次市場)における各投資銀行のドル建て債券の取引禁止を施行してきた。

 米国はロシア対外経済開発銀行(VEB)やロシア軍と連携したプロムスビャジバンク(PSB)に対して、米国内の資産凍結などの制裁も施行することを明らかにした。また、プーチン大統領と関連があるとされるロシアの有力者数人も制裁対象に加えた。欧州連合(EU)、英国、日本、カナダも、ロシアの金融機関と個人に対する同時多発的な制裁を発表した。これに先立ち、ドイツ政府はロシア産天然ガスパイプライン事業のノルドストリーム2の承認手続きを中止すると明らかにした。

 対峙状況が激化したことを受け、アントニー・ブリンケン米国務長官は24日に予定されていたロシアのセルゲイ・ラブロフ外相との会談を見送ると発表した。開催が期待されていた米ロ首脳会談も、少なくともしばらくは進展がみられないものと見られる。

 プーチン大統領とバイデン大統領が相次いで実力を行使する措置を取ったことで、米ロはウクライナ事態の解決策をめぐり、「対話」ではなく「行動」に出る極めて危険な局面に入った。ロシアは米国が定めたレッドライン(禁止線)を超え、「ここ数年間で世界平和と安全保障に最大の危機」(アントニオ・グテーレス国連事務総長)に突き進んでいる。ロシアは米国と欧州主要国の制裁の警告をものともせず、「平和維持軍」という名目でウクライナのドンバス地方のドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国に軍を派遣し、米国などの意志を試そうとしている。プーチン大統領は18日には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や極超音速巡航ミサイル「ジルコン」などを発射し、冷戦時代を彷彿とさせる危機ムードを演出した。

 これに対抗する米国はロシアのこれまでの決定を「侵攻」と規定し、同盟国とともに初めて制裁を断行した。警告が口先だけではないことを誇示したのだ。バイデン大統領はロシアの行為は「明確な国際法違反」だとし、「ウクライナ領土で大きな塊を切り取ること」だと述べた。 米国は2014年以降、クリミア半島の合併や政敵暗殺などの人権弾圧、シリア政府軍の支援などを理由に制裁を課し、ロシア経済を圧迫してきた。プーチン大統領がドンバスに対する兵力投入を発表した21日、ロシアの株価指数が10%以上暴落したのも、制裁の潜在的威力を示している。米高官らは、全面的な制裁が加えられれば、ロシアの物価上昇率が10%台に跳ね上がり、プーチン大統領から民心が離れると警告してきた。

 まだ米ロは各々のカードの一部だけを使った状態だ。ロイター通信は米国の今回のロシア銀行に対する制裁について、「ロシアという要塞の表面につけたかすり傷程度」だと評した。米国が警告した「迅速で過酷な」 制裁のうち「迅速な」制裁だけが加えられたのだ。米国が示唆してきた制裁の中では、国際決済網であるSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの銀行を追い出すことが最も強力な措置に挙げられる。約200カ国1万1千の金融機関が加入している決済網から排除されると、ロシア金融圏に大きな混乱は避けられない。米国は半導体の輸出禁止も取り上げている。

 プーチン大統領は22日、直ちにロシア軍をドンバスに送らず、「状況を見守る」という言葉でいったん息を整える態度を示した。彼の本当の意図が全面戦なのか、部分占領なのか、それとも脅威にとどまるのかが正確に分からない状況自体が、相手を混乱させる「武器」になっている。

 厳しさを増す状況変化の中で、欧米とロシアが「軍事的恐怖」と「経済的恐怖」の大きさをいかに受け止め、どこまで耐えられるかが、今回の事態の帰趨に影響を及ぼすものとみられる。

ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1032242.html韓国語原文入力:2022-02-23 19:20
訳H.J

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