本文に移動

強制動員被害者、戦犯企業日本製鉄を相手取った訴訟でまたも敗訴

登録:2022-02-09 03:36 修正:2022-02-09 07:52
法曹界「消滅時効問題を最高裁が整理すべき」
民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長(左)と強制動員被害者代理人のイム・ジェソン弁護士が8日午後、ソウル瑞草区のソウル中央地裁で記者団の質問に答えている/聯合ニュース

 日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員被害者の遺族が、日本の戦犯企業である日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取って起こしていた損害賠償請求訴訟で、再び敗訴した。日本の戦犯企業に対する損害賠償請求訴訟は、損害賠償請求権の消滅時効を、2012年の最高裁判決を基準とするか、2018年の最高裁全員合議体による判決を基準とするかによって下級審の判決が分かれているため、最高裁が消滅時効を改めて整理すべきだとの指摘が出ている。

 ソウル中央地裁民事68単独のパク・チンス部長判事は8日午後、強制動員被害者のMさんの5人の遺族が日本製鉄を相手取って起こしていた損害賠償請求訴訟で、原告敗訴の判決を下した。Mさんは1942年2月9日に日本製鉄釜石製鉄所に連行されて強制労働に動員され、同年7月14日に逃亡した。原告の遺族は、1989年に死亡したMさんに代わって2019年4月に日本製鉄を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。

 この事件の争点は、遺族の損害賠償請求権が2012年5月24日と2018年10月30日のいずれを起点に計算されるのかだった。民法は、被害者が損害あるいは加害者を知った日から3年以内に損害賠償請求権を行使しなければ、請求権は消滅すると定めている。遺族は裁判の過程で、2005年に提起された「日本製鉄損害賠償請求訴訟」の再上告審の確定判決となっている2018年の最高裁全員合議体による判決が消滅時効の起点だと主張した。

 一方、日本製鉄は、最高裁が被害者勝訴の趣旨から事件を破棄、差し戻した2012年を損害賠償請求権の起点と見なすべきだと主張した。日本製鉄の主張どおりなら、遺族の損害賠償請求権は2015年に消滅している。同事件の一審は日本製鉄勝訴の判決を下している。強制動員被害者の遺族の損害賠償請求権の起点を2012年だと判断したのだ。

 強制動員被害者の損害賠償請求権に対する下級審の判断は分かれている。2018年12月、光州(クァンジュ)高等裁判所民事2部(チェ・インギュ裁判長)は、2012年の最高裁判所の判決は差し戻し判決であり、強制動員被害者の損害賠償請求権が直ちに確定したわけではないとして、2018年の最高裁判所全員合議体の判決を起点として被害者の損害賠償請求権が最終的に確定したと判断した。しかし昨年、ソウル中央地裁民事25単独のパク・ソンイン部長判事は、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)と日本製鉄を相手取った2件の損害賠償請求訴訟で、請求権消滅時効の起算点を2012年の最高裁破棄差し戻し判決とした。

 このため、最高裁判所が消滅時効の明確な起点を整理すべきだとの声があがっている。強制動員訴訟代理人団のイム・ジェソン弁護士はこの日の判決後に記者団に対し、「消滅時効問題のため、別の強制動員被害者による損害賠償請求訴訟では、最高裁の判断が出るまで裁判を中断して待っているケースが少なくない。現在係留中の強制動員事件を審理する際に、先の2つの最高裁の決定のうち、どちらで消滅時効を適用すれば適法なのかを最高裁が明確に整理すれば、下級審の混乱は減るだろう」と述べた。

チェ・ミニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1030245.html韓国語原文入力:2022-02-08 16:50
訳D.K

関連記事