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区役所の公務員が2千円足らずで売り渡した住所…「身辺保護対象者の家族殺害」招く

登録:2022-01-11 00:59 修正:2022-01-11 07:47
2年間で1101件の個人情報を渡し、3千万ウォン以上を受け取る 
検察「照会規制システムない」 
照会プログラムは他の自治体も使用 
個人情報流出監視システムが脆弱
身柄保護の対象となっていた女性の家族に凶器を振りかざし、殺人および殺人未遂の疑いが持たれているイ・ソクチュン容疑者が昨年12月12日、ソウル松坡区(ソンパグ)のソウル東部地裁で開かれた令状実質審査に出席するため法廷に向かっている/聯合ニュース

 身辺保護を受けていた被害者の家族を訪ね、殺害した疑いが持たれているイ・ソクチュン容疑者(25)に、被害者の自宅の住所を教えた興信所に対して個人情報を渡していた人物は、区役所の現職の契約職公務員だったことが明らかになった。

 ソウル東部地検サイバー犯罪刑事部(イ・ソンボム部長)は10日、興信所に2年間で1101件の個人情報を渡し、その見返りとして3954万ウォン(約381万円)を受け取っていた疑いのあるA容疑者(40)を、個人情報保護法違反および収賄(特定犯罪加重処罰などに関する法律違反)で拘束起訴した。検察は、イ容疑者に被害者の個人情報を渡した興信所の2人の職員も共に拘束起訴した。

 A容疑者は水原市勧善区(スウォンシ・クォンソング)の区役所所属の契約職公務員で、検察はA容疑者が道路占有に対する過料賦課業務のために与えられていた車両情報照会権限を利用して犯行に及んだとみている。昨年12月、A容疑者は2万ウォン(約1920円)を受け取ってイ・ソクチュン容疑者が探していた被害女性の自宅の住所を照会し、興信所に渡していた疑いが持たれている。当初、イ容疑者は50万ウォン(約4万8100円)を支払ってB興信所に被害者の個人情報を依頼したが、B興信所は別の2つの興信所と金を分け合い、それらを通じて被害者の住所を確認したことが分かった。B興信所はC興信所に13万ウォン(約1万2500円)を渡して被害者の個人情報を依頼し、C興信所はD興信所に10万ウォン(約9620円)を払って住所を確認させた。A容疑者はD興信所から2万ウォンを受け取って情報を渡し、住所を知ったイ容疑者は翌日、凶器を持って被害者の自宅を訪ね、犯行に及んだ。

 検察は、A容疑者がテレグラムで高額のアルバイト募集広告を見て違法な個人情報照会に手を染め、2020年1月から約2年間にわたって興信所の望む個人情報を提供していたと説明した。調査の結果、A容疑者は1000件を超える情報を興信所に渡し、照会件数から見て毎月200~300万ウォン(約19万2000~28万9000円)の精算を受けていたことが分かった。検察はA容疑者から直に注所を受け取っていたD興信所の職員と別の興信所の職員も共に起訴するとともに、事件にかかわった残りの興信所に所属する3人を拘束のうえ捜査している。

 勧善区役所はA容疑者の職位をすでに解除しており、起訴後に刑が確定すれば懲戒処分にするかどうかを決定する方針だ。

 問題は、A容疑者が2年間にわたって違法な個人情報照会を行っている間、勧善区役所と水原市役所はもちろん、車両情報管理システムを運営・点検する国土交通部もこれに全く気付いていなかったということだ。検察は「(A容疑者の所属する)役所には車両情報照会権限の乱用防止のための内部の規制システムがまったくなかった」と明かした。これについて水原市役所の関係者は「車両情報照会システムは国土部が運営しており、地方自治体には照会権限のみが与えられてるため、アクセス記録を点検する権限が全くない」とし「再発防止の観点から、地方自治体もアクセス記録を点検できるよう、権限を与えてほしいと国土部に要請する方針」と説明した。

 A容疑者が個人情報を照会した車両情報管理システムは、他の全国の自治体も使用している。他の自治体でも、このシステムを利用した個人情報流出の可能性があるということだ。政府公共機関と自治体は、公共機関による個人情報の管理を診断・評価するとの観点から、毎月1日に個人情報照会システムへのアクセス記録を点検する。しかし今回問題となったシステムのように、上位機関である国土部が運営するシステムを自治体が利用するケースでは、自治体には情報へのアクセス状況を管理・規制する権限がない。A容疑者の犯行のような事例を監視するシステムが構造的に弱いわけだ。

チャン・イェジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1026758.html韓国語原文入力:2022-01-10 18:19
訳D.K

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