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傷害事件、身辺保護中の女性殺害…現場の10人の警察官が見た「不十分な対応」

登録:2021-11-23 02:22 修正:2021-11-23 08:32
警察の対応、連日俎上に…現場からも「誤った対応」との評 
「警官が男性か女性かではなく新人警官の対応未熟問題」 
 
警察庁長の謝罪後、装備・マニュアル改善対策 
「訓練、マニュアルの改善もいいが、増員も…」
マンションの騒音でトラブルとなり、隣家の3人の住民に刃物で怪我を負わせた疑いが持たれている40代のK容疑者が、拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を受けるため、17日午後、仁川市弥鄒忽区の仁川地裁に入っていくところ/聯合ニュース

 「仁川(インチョン)のマンション騒音トラブルによる傷害事件」「身辺保護中の女性殺害事件」などで、キム・チャンリョン警察庁長が2日連続で謝罪した。「凶器を振り回している加害者がいるのに、被害者を置いて現場を離れた警察」、「スマートウォッチで通報してもすぐに行くべき場所に出動できない警察」などの批判が提起され、警察の現場対応力が俎上に載っている。現場の警察官たちは、この事件で警察は「誤った対応をした」と評しつつ、第一線の地区隊や交番の人手不足などの問題も吐露した。

 本紙が22日に地区隊および交番に勤務する第一線の10人の警察官(警監5人、警衛3人、警長2人。警監などは韓国の警察の階級)に取材したところ、マンションの騒音トラブルによる傷害事件の現場に出動した警察の対応は不十分だったと評した。今月15日、仁川市論ヒョン(ノンヒョン)警察署の2人の警察官は、仁川市南洞区(ナムドング)のマンション騒音トラブルの現場に出動したが、40代の男性が凶器を振り回すのを止められなかったうえ、刃物で刺された1人の被害者は意識不明の状態だった。事件当時、警察官たちは拳銃、警棒、電気ショック機(テーザー銃)を持っていた。

 「警察の物理力行使に関する基準」などのマニュアルは、加害者が凶器などを振り回した場合は警棒やテーザー銃、拳銃などが使えるとしている。20年以上の経歴があるソウルの第一線の地区隊所属のL警衛は「凶器を振り回している加害者がいる場合は『凶器を捨てろ』と強い口頭警告を行い、従わない場合は装備を使用しなければならない」としつつも「警察官の中にも銃器などの使用を恐れたり、嫌ったりする人が多い。使用した後、きちんと過程を守ったのか監査を受けることになっているからだ」と述べた。C警監も「テーザー銃などの装備使用後の後続措置がすっきりと行かないケースが発生するため、現場ではやむを得ず消極的となる面がある」と述べた。

 現場を離れた巡警(巡査)が女性だったとの理由で再び火の付いた「女性警官廃止論」については、第一線においても、女性警官であったことではなく「新人巡警」だったということに焦点を当てるべきだとの主張があがっている。実際に仁川警察庁で監察を受けているこの女性警官は、警察公務員として働き出してから1年も経っていない「試補警官」であることが確認された。一種の見習い公務員であり、警察公務員は1年間の試補期間を終えた後に正式任用される。K警監は「男性であれ女性であれ、同じ状況に出くわしたら慌てたはず」とし「新人が現場に入れば、マニュアルを完璧に熟知していても対処は容易ではない」と述べた。現場勤務のある警長は「(男性でも女性でも)予測できない状況は常に多い」と語った。

 キム・チャンリョン庁長はこの日、全国の258人の警察署長らが出席した「全国警察指揮部オンライン会議」で「堂々たる公権力」を強調しつつ、地域警察と新任警察官の教育体系の改編、装備の実用性の強化および使用訓練の強化、マニュアルの改善などを進めると表明した。警察庁がこの日、国会行政安全委員会に報告した資料によると、特に現場での各種装備の使用に負担を感じる警察官を考慮し、単発発射のみが可能となっているテーザー銃を連発できるよう改善するほか、ゴム銃や折りたたみ式防剣(刃物に対する防具)および盾を導入するなど、人権侵害などを最小限に抑えつつも、実際の現場での活用が可能な装備を開発し、普及させる計画だ。

 ただし現場からは、訓練やマニュアル以上に、人手不足こそ根本的に解決すべき問題だとの声があがっている。現場の警官は、2023年の義務警察制度の全面廃止を控え、不足する機動隊の人員を既存の警察から補充したために、現場の人手がギリギリになったと吐露した。ソウルのある地区隊に所属するK警監は「今の人数では、休暇を取る者が1人出たらパトカーが1台止まる。仁川事件でも3人が出動していたら、1人は被害者保護に当たり、1人は被疑者を止め、1人は支援要請やその他の事項に対応でき、こんなことは発生しなかったはず」と述べた。別の地区隊のL警衛も「仁川事件は現場に4人は行くべきだったのに、パトロールで人が不足していたため、2人しか行けなかったようだ。根本的には人手不足が解決されるべき」と述べた。警察は2人1組の出動が原則だが、状況によっては追加人員も共に出動する。

 一方、警察庁はこの日、相次ぐストーキング犯罪についても、再犯防止と実質的な隔離対策を進めると表明した。10月のストーキング処罰法の制定により、警察は加害者に対して被害者への接近禁止などの措置を取っているが、実効的な対策とはなっていないとの批判を浴びているからだ。19日にソウル中区(チュング)のあるオフィステルで、かつての交際相手を凶器で刺して死亡させた疑いが持たれている被疑者も、100メートル以内への接近禁止、情報通信利用による接近禁止などの処分を受けていたが、計画的な犯行に及んでいたことが確認されている。警察庁は、ストーキングの通報を受ければ、過去の112番通報や犯罪歴などを考慮して被疑者を留置場や拘置所に留置できるとの規定を適用することも、前向きに検討する方針だ。

パク・スジ、コ・ビョンチャン、パク。チヨン、チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1020335.html韓国語原文入力:2021-11-22 18:24
訳D.K

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