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[ニュース分析]韓国野党第一党のユン・ソクヨル大統領選候補の「ねじれた公正」

登録:2021-12-16 11:21 修正:2021-12-16 11:45
配偶者キム・ゴンヒ氏の経歴詐称の波紋 
 
ユン氏「非常勤講師は専攻などを見て公開採用するものではない」と激昂 
キム氏が謝罪すると「適切な態度」 
 
チョ・グク元法相の子どもの表彰状問題に適用した容疑が 
ユン氏にブーメランとなって返ってくる可能性も
国民の力のユン・ソクヨル大統領選候補の配偶者のキム・ゴンヒ氏が15日、ソウル瑞草区の自宅を出て自分の事務所に向かっている/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)政権を偽善と無能、腐敗政権と規定し、「公正」と「常識」を掲げた野党「国民の力」のユン・ソクヨル大統領候補が、妻のキム・ゴンヒ氏の経歴詐称問題で試されている。ユン候補は15日午前、「何の過ちがあるのか」と抗弁したが、午後には妻の「謝罪の意向」を肯定的に評価するなど、一貫性のない行動を見せた。検察総長時代、文在寅政府とぶつかりながら積み上げた「公正」という価値を自らの手で崩しているという批判が出ている。

 ユン候補は15日昼、ソウル永登浦区(ヨンドゥンポグ)の国民の力党本部で記者団に会い「配偶者に関してさまざまな疑惑が出ている」という記者の質問を受け、足を止めた。そして強い口調で「(非常勤講師は)まるで教授を採用するかのように専攻などを見て公開採用するものではない」と主張した。続いて「皆さんの身近な人に大学関係者がいたら、非常勤講師をどう採用するのか、一度聞いてみなさい」と述べた。同行していたクォン・ソンドン事務総長ら参謀たちが止めたが、ユン候補は意に介さず、手振りを加えながら自分の主張を続けた。これに先立ち、キム氏は2007年に水原女子大学に提出した教授招聘志願書に、韓国ゲーム産業協会で企画取締役を務め、「ソウル国際漫画アニメフェスティバル」で大賞を受賞したという虚偽の内容を書いていたことが明らかになり、波紋の中心となった。キム氏はこの願書を提出した後、兼任教授の座につき、11カ月間勤務した。

 しかしユン候補は、キム氏の兼任教授職を「非常勤講師」と主張し、「『〇〇の修士課程にいる』『博士課程にいる』などと言えば(採用担当者が任用するかどうかを)話してくるものだ。公開採用ではない」とし、不正採用ではないと強調した。さらに記者団に対し「採用不正というが、こういった資料を見て(兼任教授を)選考するのではない。現実をよく見なさい。慣行だとかそういうものに照らして、どういうものなのか見て(報道)しなさい。あちら側で騒ぐのを聞くばかりじゃなく」と、興奮した感情をそのまま表した。

 私文書偽造、業務妨害とみられるキム氏の経歴詐称をめぐる物議は、ユン候補にはブーメランとして返ってくる。ユン候補の検察総長時代に、チョ・グク元法務部長官の子どもの入試用表彰状偽造に適用した容疑と同じだからだ。キム氏の虚偽の履歴書が大学入試ではなく兼任教授のポストを得るためのものであるため軽重は異なり、公訴時効も過ぎているので刑事的責任はないとはいえ、本人の周りでの不正行為にユン候補がどのような態度を見せるかは、彼の言う公正価値が本物かどうかを量るバロメーターとなるからだ。しかし、ユン候補は謝罪ではなく反論を選んだ。

 それから約4時間後の同日午後、ユン候補は「本人の立場としては言うべきことが多いとしても、与党の攻勢が企画攻勢で不当に感じられたとしても、国民の目線と期待から見て少しでも不十分なことがあるとすれば、申し訳ないと思う。(謝罪する意向があるという)そのような態度は適切だと思う」と明らかにした。「国民の皆さまにご心配をおかけしたことについて謝罪する意向がある」というキム氏の発言の後のメッセージだった。世論の厳しい批判でユン候補は仕方なく一歩引いたが、これも候補本人が謝罪したのではなく、妻の謝罪の意向を「評価」したにとどまった。共に民主党のパク・チャンデ選挙対策委員会首席報道担当は論評を通じて、「一日中、キム・ゴンヒ氏に関するメディアの質問に対し『ちゃんと取材しろ。あっちの話ばかり聞くな』と立腹していたのに、いまやそれでも足りず、正当な検証を『工作』にまで仕立て上げるのか」とし、「(自分側には)過ちはないが、国民が不満を表しているから仕方なく謝罪するという傲慢不遜な態度だ」と批判した。

 今回の事件は、公正と常識を旗印に大統領選挙に挑戦したユン候補の政治行動に致命傷を残したという分析が出ている。仁川大学政治外交学科のイ・ジュンハン教授は本紙に対し「ユン候補の発言は自分の政治参加の根拠と役割を無にしたもの」だとし「求職の過程で事実と異なる情報によって利益を得て、正当な手続きに違反した面があらわになった。『ユン・ソクヨルの公正』は打撃を受けざるを得ない」と述べた。「ザ・モア」のユン・テゴン政治分析室長も「政権交代世論の中でユン候補が持っていた『公正』という象徴が傷つけられたもの」とし「ユン候補の対応はこれまでの態度とも合わない面がある。また、こうしたリスクがある程度把握された状況だったにもかかわらず、国民の力が選対レベルでの準備不足を露呈したのも疑問だ」と述べた。

キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1023522.html韓国語原文入力:2021-12-16 07:09
訳C.M

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