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韓国首都圏の重症患者病床、稼働率75%超え…病床確保には「少なくとも3週間」

登録:2021-11-15 02:02 修正:2021-11-15 06:35
首都圏、非常計画発動基準を超過 
4つの専門療養病院を追加で指定したものの 
「患者が同意せず施設工事が遅延」難航 
指定と解除の繰り返しは非効率との指摘 
専門病院の医療対応力を高めてこそ効果 
政府「来年、医院級の治療システムを整備」
感染症専門療養病院として運用中のソウル九老のミソドゥル病院の様子/聯合ニュース

 首都圏の療養施設と療養型病院で起きた最近の集団突破感染(ブレイクスルー感染)によって新型コロナウイルス感染症の重症患者が急速に増えたことで、ソウルや仁川(インチョン)などの首都圏の重症患者病床の稼動率も75%を超えた。政府は主に、高齢の感染者が重症化する前に治療に当たる感染症専門療養病院(以下、専門療養病院)を追加指定することで重症病床の負担を減らす計画だが、追加指定された病院が患者を受け入れるには、少なくとも3週間以上の準備期間がかかるとみられる。専門家は、コロナ禍が数年間続く可能性が高い中で、政府は専門療養病院の指定と解除を繰り返すその場しのぎの対応をするのではなく、中長期的な計画を立てるべきだと提言する。

 14日午前0時現在、人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO、体外式膜型人工肺)などによる治療が必要な重症患者は483人で、コロナ禍開始以降最多(485人)を記録した前日とほぼ同じ水準だ。重症患者のうち60代以上は82.2%で大多数を占める。高齢の重症患者が増えたことで、感染者が集中している首都圏は重症患者病床の稼動率がどこも70%を超えるなど、医療システムにかかる負担が増大している。ソウルの重症患者病床の稼働率は13日午後6時現在で76.2%、仁川は75.9%で、政府が非常計画の発動基準として提示した「重症患者病床稼働率75%」を超えた。京畿道(71.9%、13日午後5時現在)も非常計画基準に迫っている。首都圏の重症患者病床の稼働率が75%を超えても、当面は首都圏の患者を相対的に病床に余裕のある非首都圏の病床に移せるが、病床の拡充は急がれる。

 療養施設・病院を中心とした突破感染に対応するため、政府は5日の病床確保行政命令で1000床あまりの準重症・重症患者病床を追加したのに続き、11日には中等症および軽症の療養病院の感染者を収容する専門療養病院も追加指定した。病床総数は405床。指定されたのはソウルのポラメ療養病院とファースト療養病院、仁川の青羅百歳療養病院、京畿道の新葛百歳療養病院の4院。このうち、これまでも専門療養病院を運営していたのは青羅百歳療養病院のみ。

 しかし、すでに病床の多くが埋まっている中、政府の対応は遅すぎだとの声が現場からあがっている。新規に指定された専門療養病院は、従来の入院患者の転院、施設工事や人材の準備などに、少なくとも3週間以上の時間が必要だからだ。新規に指定された専門療養病院の関係者は「入院患者たちが転院に同意せず、役所に訴えると脅迫している状況なので、工事も始められずにいる。患者を無理やり追い出すわけにもいかないため困っている」と述べた。実際にソウルのある区立療養病院は、今年2月に専門療養病院に指定されたが、既存の患者の反対により開院できなかった。

 感染者数と病床稼動率に左右されて専門療養病院の指定と解除を繰り返す過程は効率的でないという批判の声もあがっている。最小限の運営期間などが決まっていないうえ、指定や解除についての明確な基準もないため、専門療養病院に指定される療養病院の立場からすれば混乱や不安が大きい。専門療養病院を運営していた療養病院の関係者は「当院の場合、専門療養病院への転換にあたって、病床当たり1000万ウォン(約96万8000円)、体温計や血圧計、工事費用などに計10億ウォン(約9680万円)の税金が投じられた。7月には感染者が減ったからと解除しておいて、今になって再指定するというやり方は非効率的だ」と述べた。この関係者は「これまでに専門病院に投入された税金は惜しまないが、患者が減った時には毎月かかる病床維持コストは税金の無駄使いだという監視や非難に直結するので、とりあえずなくそうというやり方」と付け加えた。

 政府が新たな専門療養病院を指定するのも重要だが、それよりも既存の専門療養病院に対する医療人材などの派遣の支援の方が急務だとの意見も出ている。専門療養病院から重症化した患者を上級総合病院の集中治療室に転院させる手続きが円滑でないため、既存の専門療養病院の医療対応の余力を高め、重症患者もきちんと治療できるように環境を整える必要があるとの指摘だ。首都圏の専門療養病院の関係者は「80床あるうち、亡くなる方々のための必須空間を除いた76床がすべて埋まっており、ほとんどが重症患者だが、重症患者専門病床がある病院は患者を受け入れてくれないため、まともな治療を受けられずに亡くなっていっている。指定するだけでなく、病院がうまく回るように医療スタッフや人工呼吸器などの支援を急ぐべき」と語った。首都圏の別の専門療養病院の関係者は「最小の施設選定基準もなく、病床数だけを見て指定すれば終わりで、以後は自分たちでうまくやってくれというやり方。新たに指定された所には最小運営期間くらいは保障すべき」と述べた。

 専門家は、コロナパンデミックの長期化に備え、早急に中長期的な医療対応システム計画をまとめるべきだと口をそろえる。京畿道医療院安城病院のイム・スングァン院長は「療養施設と療養病院で患者が増えることは予見されていたが、政府に中長期的な未来戦略がないため、病院の立場からすれば、どう対応すべきか混乱せざるを得ない。病院全体を専門病院に指定するよりは、療養病院の中でも300床以上を備える大病院を中心としてコロナ診療に参加させることによって、感染症診療システムを維持することが必要だ」と提言した。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「ワクチンと治療薬によってもデルタ株の高い感染力を下げるには限界があるため、コロナが2~3年以内に季節性インフルエンザのようになると考えるのは難しいと思う。長期的な戦いに備えるため、普段は専門病院の役割を果たし、流行が落ち着けばリハビリを行う短期入院患者を入院させる方向へとシステムを転換すべきだ」と語った。

 福祉部の関係者は本紙に対し「(流行)拡大に備え、8月に専門療養病院の候補を15カ所検討してあり、首都圏の感染者の割合などの状況をみる予定だ。段階的日常回復措置に沿って、来年上半期には総合病院と一般病院、下半期には医院級にまでコロナ診断・治療システムが備わるよう準備する」と説明した。

クォン・ジダム、イ・ジェホ、パク・キョンマン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1019225.html韓国語原文入力:2021-11-14 16:49
訳D.K

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