聞きなれない「尿素水」の品薄の原因が、最近中国が取った輸出規制のためという分析が出たことで、2010~2011年の日本へのレアアース輸出中止、2016~2017年の「高高度防衛ミサイル(THAAD)配備」による韓国への経済報復などの事態が再燃するのではないかと懸念する声が上がっている。今回の事態の背景をよく見ると、このような懸念は誇張されたものだが、中国内部の事情により、事態の長期化は避けられないものとみられる。
中国は先月11日、尿素水の原料で農業用肥料として使われる「尿素」に対する輸出前検査を義務づけた。これまで特別な検疫と検査なしでも輸出が可能だった尿素やカリウム肥料、リン酸肥料など29種の肥料品目に対して必ず検疫を受けるようしたのだ。 冬の小麦栽培を控えた状況で、国際的な肥料と尿素の価格が高騰したことを受け、尿素など肥料の安定的確保に乗り出したのだ。中国税関は最近、大量輸出だけでなく、個人販売も禁止しているという。小規模の海外からの直接購入まで封じ込めるためだ。
中国がこのような措置を取ったのは、今年の秋から本格化した石炭不足のためだ。石炭は尿素の生産原料の一つであるが、主な石炭輸出国であるオーストラリアとの対立などにより、9月から中国国内で深刻な需給難が発生した。これが石炭発電所の稼働率低下を引き起こし、電力不足につながった。石炭から尿素を抽出するためにはかなりの電力が必要であるが、石炭と電気がいずれも不足しているわけだ。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は4日、10月第2週の中国の尿素生産稼働率は67.24%で、昨年同期より5.6ポイント下がったと明らかにした。石炭不足が電力生産の低下につながり、二つの要因が合わさって尿素供給が減る負の連鎖が起きているのだ。
KOTRA北京貿易館側は「中国政府が肥料輸出を抑制する原因は中国国内の肥料供給不足による国内価格の急騰」だとし、「天然ガスや硫黄、石炭など化学肥料の主要生産原料の価格急騰が続いている上、最近の電力難の中で各地方政府がエネルギー消費統制に乗り出したことで、化学肥料および尿素の生産が萎縮し、供給に支障が生じている」と分析した。中国当局の政治的判断による過去のレアアースの輸出制限とは違い、純粋な経済的理由のために発生した現象であるため、問題の早期解決は容易ではない。
結果的に、国内で使用する尿素の大半を中国に依存している韓国の足元に火がついた今回の事態が長期化するのは避けられない。中国製尿素は韓国の尿素輸入量の3分の2を占め、尿素水の原料となる産業用尿素はほぼ全量の97.6%を占めている。KOTRAの資料によると、中国は世界最大の尿素生産・輸出国で、毎年約500万トンの尿素を世界市場に供給する。今年1~9月の中国の尿素輸出量の半分がインド(47.5%)に、14%が韓国に供給された。
韓国政府は緊急対策会議を開き、産業用尿素から車両用尿素水を作る案について検討している。しかし、産業用尿素は車両用に比べて不純物が多く、純度が低いため、そのまま車両用に転用するのは難しい。輸入先の多角化とともに中国の輸出再開が必要だが、いずれも時間がかかる。KOTRAは「季節的要因と石炭など価格急騰が続いており、中国内の尿素生産回復を期待するのは難しい」とし、「中国内の供給が改善しない限り、輸出制限措置はしばらく続くだろう」と見通した。