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朴槿恵支持層狙った競争、男女分裂扇動まで…野党「国民の力」の「退行した予備選」

登録:2021-11-03 11:26 修正:2021-11-03 16:29
ホン・ジュンピョ、朴槿恵前大統領の従兄弟の支持に歓喜 
ユン・ソクヨルと間で「朴槿恵支持層は自分の側」と攻防戦 
 
ユ・スンミン「男性を潜在的加害者扱い」 
ユン・ソクヨルも性犯罪虚偽告訴罪の新設を主張
国民の力の大統領選予備候補者たち。左からユ・スンミン前議員、ユン・ソクヨル前検察総長、ホン・ジュンピョ議員/聯合ニュース

 韓国の野党「国民の力」の大統領選予備選挙が終盤を迎えている中、各候補陣営の「退行的」な態度が批判を受けている。競争するように朴槿恵(パク・クネ)前大統領に関連する話を予備選挙に持ち込み、朴槿恵支持層を取り込もうとしているという論争を引き起こしたうえ、「20~30代男性」を標的とした男女分裂扇動による性平等の基調を損なう主張も飛び交っている。

「国民の力」の大統領選候補であるユン・ソクヨル前検察総長が2日昼、忠清南道天安市東南区社稷洞の天安中央市場を訪れ、支持者にあいさつしている/聯合ニュース

 ホン・ジュンピョ議員陣営は2日、朴槿恵前大統領の従兄弟のパク・ジュンホン元大韓サッカー協会会長が支持を宣言したと明らかにした。パク元会長は「ホン・ジュンピョ議員は、セマウル運動を復活させ、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の民族中興精神を継承・発展させ、朴槿恵前大統領の名誉を回復し、キム・ジョンピル首相の東西和合と産業化の情熱を継承すると約束した」とし、「ホン議員の約束を果たすという課題に、朴正煕大統領の家系とキム・ジョンピル首相の家系も賛同する」と語った。パク元会長は故キム・ジョンピル元首相の義弟で、2010年に「親朴連合」を結成し、公認献金を受け取った疑いで拘束されている。

 この日の支持宣言には、「朴槿恵家系」を総動員してでも慶尚道地域の支持層を引き入れなければならないという、ホン議員側の切迫した本音があるとみられる。ホン議員は先月31日に「国民への訴え」を発表し、その中で李明博(イ・ミョンバク)元大統領、朴槿恵前大統領の即時赦免を約束しており、1日に大邱地域を訪問した際には、繰り返し「朴前大統領の離党措置によって大邱(テグ)・慶尚北道の市道民の心を傷つけたことについて、重ねて許しを請う」として頭を下げている。

 ホン議員側とユン・ソクヨル前検察総長側の「朴槿恵支持層への求愛」競争も熾烈だ。先月15日、「朴槿恵前大統領支持団体総連合会」がホン議員支持を宣言すると、ユン陣営は先月31日に「朴愛会(朴サモ、朴槿恵大統領を心から愛する人々の会)会長団」がユン前総長を支持したという文章を発表して対抗した。ホン議員陣営のイ・オンジュ共同選挙対策委員長は、彼らについて「ニセ朴愛会」と非難してもいる。「本当の朴槿恵支持層は我々の側」と声を強める状況が演出されているのだ。

国民の力の大統領選候補であるホン・ジュンピョ議員が2日、釜山駅で開かれた釜山・蔚山・慶尚道地域での記者会見を終え、支持者たちとあいさつを交わしている/聯合ニュース

 新たに党に流入した20代、30代の男性を意識した「性別分裂扇動」の姿勢も見られる。ユ・スンミン前議員はこの日、交際相手の女性が「結婚をほのめかされ、中絶を要求された」主張したことで問題となった俳優の事件に言及し、「すべての男性を潜在的加害者とみなす考えは消えるべきだ」とフェイスブックに記した。ユ前議員はまた、「一人の人間の人生を台無しにする性犯罪は厳しく処罰すべきであり、同じ理由で一人の人間の人生を台無しにする誣告罪(虚偽告訴の罪)も厳しく処罰すべきだ」と主張した。これまで女性家族部廃止論を主張しつつ「男性への逆差別」主張を助長してきたユ前議員が、終盤に来て「20代男性」の支持を狙ったものとみられる。ユン元総長も、先に青年政策を発表した際に、「性暴力特別法」に虚偽告訴罪を新設すると公約している。性暴力に関する「うその犯罪を根絶する」というのだ。両候補が共に性犯罪についての虚偽告訴罪を主張していることに対しては、性暴力被害の証明を絶えず求められることで2次被害に遭っている性暴力被害者の現実を無視しているとの指摘が出ている。韓国性暴力相談所はこの日、声明を発表し、その中で「アンチフェミニズム扇動ばかりを欲する旧態政治」と批判した。

 専門家は、野党第一党の大統領候補選びが泥仕合を越えて退行的、反動的な態度へとつながっていることに対して、憂慮の声をあげた。龍仁大学教養学部のチェ・チャンニョル教授は本紙に対し「朴前大統領に対する捜査に責任のあるユン前総長、離党に責任のあるホン議員が、終盤に来て正統保守層を意識し、存在しうるしこりを解消しようとするもの」だとし「赦免論については、保守陣営支持層に確実に歓迎される問題だと判断して競い合っているようだが、中道層をつかめるような話題ではない」と指摘した。また、予備選挙が過熱していることで表れた退行的な行動が、結果的に大統領選の本選で国民の力の足を引っ張るだろうとの分析も出ている。時代精神研究所のオム・ギョンヨン所長は「これまで『弾劾の川を渡った』と何度も強調してきた国民の力で『朴槿恵マーケティング』が再登場したのは退行的だ」とし「脱陣営、脱理念の20代、30代の心をつかんだと歓喜していた保守政党が、予備選挙の過熱局面に乗じて再び競争的な姿勢を見せるのは、政治の発展のためには望ましくない」と批判した。

キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1017694.html韓国語原文入力:2021-11-02 19:17
訳D.K

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