パク・ポムゲ法務部長官は、故ピョン・ヒス元下士の強制退役処分を不当だと判断した一審判決に対し、控訴の意思を明らかにしていた陸軍に、控訴の放棄を指示した。陸軍は直ちに訴訟を終結し、一審判決が確定し次第、性別適合手術を受けた人の軍服務を検討することを決めた。
法務部は22日、ピョン元下士退役処分取り消し判決について控訴の放棄をパク長官に求めた「行政訴訟上訴諮問委員会(諮問委)」の勧告を尊重し、陸軍参謀総長に控訴放棄を指示したことを明らかにした。「国家を当事者とする訴訟に関する法律」には、行政訴訟が行われた場合、行政庁の長は法務部長官の指示を受けなければならないと規定されている。諮問委は同日、同事件に関する判決が認めた事実関係、法理、人間の尊厳の尊重に関する憲法の精神、国民の法感情などを総合的に考慮して、法務部長官に控訴放棄を指示するよう勧告していた。諮問委は、内部委員である法務部人権局長と、法学専門家、弁護士などの外部委員6人で構成される。
ただし法務部は「この事件の判決は性別適合手術を受けた人の軍服務を認めるべきという趣旨ではなく、同事件の処分当時に女性だったピョン元下士に対する陰茎喪失、精巣欠損などを理由とした退役処分は、関連法令に照らして違法だということ」だと説明した。法務部はまた、「性別適合手術を受けた人の軍服務を認めるかどうかは今後、関連規定の改正検討、軍の特殊性および兵力運用、国防および社会全般に及ぼす影響などを総合的に考慮して立法的、政策的に決定されなければならない」と強調した。
これに対して国防部は「法務部が控訴放棄を指示したため、陸軍は訴訟を終結して後続措置を進めることを決めた」とし「軍の特殊性、国民世論などを考慮した政策研究を通じて、性別適合手術を受けた人の軍服務を認めるかどうかを綿密に検討する」と明らかにした。
これに対しピョン元下士の遺族の代理人であるキム・ボラミ弁護士は、「至極当然の手順であり判断」だとし、「軍はピョン下士の退役処分を早急に取り消し、故人の軍人の身分を返すべきだ。あわせて、これまで無視してきた人権に親和的なシステムの整備に取り組んでほしい」と述べた。軍人権センターのキム・ヒョンナム事務局長も「当然の決定で幸いであり、歓迎すべきこと。法務部は人権主務部署にふさわしい役割を果たした」と評価した。
ピョン元下士は2019年11月に性別適合手術を受け、その後も服務の継続を希望したものの、昨年1月に強制退役させられた。そして今年3月3日に自宅で遺体で発見された。大田(テジョン)地裁行政2部(オ・ヨンピョ裁判長)は今月7日、ピョン元下士が陸軍参謀総長を相手取り、退役処分の取り消しを求めていた訴訟で、原告勝訴の判決を言い渡した。これに対し国防部は「一審判決を尊重する」としながらも、上級裁判所の判断を受ける必要があるとして法務部に控訴を指示するよう要請していた。