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韓国裁判所、「強制動員」日本企業に初の資産売却命令…現金化までは遠い道のり

登録:2021-09-29 06:18 修正:2021-09-29 06:48
差押命令ではなく売却命令は今回が初めて 
日本「即時抗告」…かなりの時間要する見込み
大田地方裁判所=ソン・インゴル記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の裁判所が強制動員被害の賠償に応じない日本企業に対し、初めて韓国国内資産の売却命令を下して、「現金化」作業が新たな局面に入った。しかし、最終的な現金化まで法的手続きが残っている上、韓国政府も日本との激しい対立は避けるべきという立場を示しており、この問題をめぐってはこれからも難航が続くものとみられる。

 大田(テジョン)地方裁判所民事28単独のキム・ヨンチャン部長判事は、強制動員被害者のヤン・クムドクさん(92)とキム・ソンジュさん(92)が三菱重工業(以下三菱)の商標権と特許権の売却命令を求めて起こした特別現金化命令申立て事件で、最近三菱の韓国国内資産の売却を命令した。強制執行は一般的に差し押さえと現金化(売却)で進められるが、それぞれ裁判所の命令が必要だ。強制動員被害者が提起した差押命令申立てが裁判所で受け入れられた事例は以前にもあったが、「特別現金化命令」の申立てが認められたのは今回が初めてだ。

 ヤンさんとキムさんは三菱を相手取って3年前に損害賠償請求訴訟で勝訴確定判決を受けたにもかかわらず、三菱が履行を拒否し、訴訟を続けてきた。韓国の最高裁(大法院)は2018年11月29日、「三菱はヤンさんら原告に1人当たり1億~1億5千万ウォンの慰謝料を支払うべきだ」という判決を下したが、三菱が「賠償問題は1965年の韓日請求権協定で解決済み」という立場を固守しているためだ。

 これを受け、被害者らは「三菱重工業の商標権と特許権を差し押さえ、現金化する」という趣旨の差押申立てを行い、裁判所の差押決定文に対する日本の送達拒否、それに伴う裁判所の公示送達(書類が相手方に伝わったとみなす制度)、差押命令に対する三菱重工業の即時抗告や再抗告などが行われ、3年が過ぎた。今回出された初の売却命令に対しても三菱側が「即時抗告する」という立場を明らかにし、再抗告まで提起される可能性があることを考えると、実際の現金化の時点まではかなりの時間がかかると予想される。被害者側の代理人、キム・ジョンヒ弁護士は28日、「被告企業が抗告、再抗告しても、売却は手続きに従って(現金化を)引き続き進める」と明らかにした。

 現金化に向けた法的手続きが再び一歩先に進んだことで、韓国政府の悩みは深まるものとみられる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこの問題と関連し、2019年の年頭記者会見では「政府は介入できない」という趣旨で答えたが、今年は「現金化は望ましくない」として、明確な反対意思を表明した。その後、この問題を円満に解決するために少なからぬ外交努力を傾けたが、7月の東京五輪開会式への出席が実現しないなど、日本政府の冷ややかな態度のため、成果が得られなかった。読売新聞は28日付の記事で、韓国政府関係者の発言を引用し「北朝鮮と韓国との関係、米朝非核化交渉を進める上で日本の協力が極めて重要な時期に、今回の命令は悪材料」だと報じた。

シン・ミンジョン記者、東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1013101.html韓国語原文入力:2021-09-29 02:30
訳H.J

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