29日に予定された自民党総裁選挙が、2012年末から9年間続いた「安倍路線」と日本社会が決別する重要な「分岐点」になるかどうかに、関心が集まっている。誰が新しい自民党総裁になるのかによって、保守的理念をもとに中国牽制のために日米同盟を強化するという、いわゆる「安倍路線」が大きく揺れる可能性がある。
3日、菅義偉首相が「新型コロナ対策に専念するため、次期自民党総裁選に出馬しない」との意向を表明したことで、「ポスト菅」を狙う自民党内の次期首相候補らの動きが加速している。5日現在までの日本メディアの報道によると、岸田文雄前政調会長、石破茂元幹事長、河野太郎行政改革相、高市早苗前総務相らが出馬を宣言したり、出馬を準備していることが確認された。
日本の憲政史上最長寿の首相として記録された安倍前首相は、2012年末に政権に就き、昨年9月まで7年8カ月間首相の座にと留まった。1年という短命で終わる菅政権は、デジタル庁の設置や脱炭素の推進など、内治の領域では独自の政策を打ち出したが、対外政策では日米同盟を強化し、中国を封鎖するという安倍路線を積極的に踏襲した。朝鮮半島と関連しても韓国との関係改善に非常に消極的で、北朝鮮に対しては既存の「敵対視政策」を貫いた。
今回の選挙で最も目立つのは、真っ先に立候補を宣言した岸田前政調会長だ。岸田氏は、安倍政権で4年半も外相として働くなど、安倍路線を実務で支えてきた。特に2015年12月28日に韓日慰安婦合意をした日本側の当事者でもあり、歴史問題で韓国との関係変化を試みるには身動きの幅が狭い方だ。また、当選に対する圧迫のためか、今年6月に党内「新しい資本主義を創る議員連盟」を結成し、安倍前首相と麻生太郎副首相を最高顧問に迎え入れた。さらに先月26日の総裁選出馬宣言後、「憲法改正をしなければならない」、「敵基地攻撃能力の保有が必要だ」と述べるなど、安倍路線を支持する発言をしている。しかし、首相として十分な時間が与えられれば、自民党内の穏健派を代表する岸田派の伝統に合わせて合理的な対外政策に旋回する可能性もある。
別の有力候補である石破元幹事長は、安倍路線と一線を画す代表的な人物とされる。安倍前首相と自民党総裁選で二度対決したが、いずれも敗れた。石破氏は森友学園問題など安倍前首相に関するスキャンダルについて3日、TBSの番組に出演し「良いことだとは思っていない」とし、再調査が必要だという立場を明らかにした。日本の政界で指折りの安保専門家として、韓日間の安保協力を深めるために歴史問題に対しては柔軟な態度を取るべきだと考える方だ。2019年8月の韓国のGSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)の終了など、韓日関係が極端な状況に突き進んだ当時、自身のブログに「日本が敗戦後、戦争責任と正面から向き合わなかったことが多くの問題の根源にある」と書き込んだ。日本軍「慰安婦」問題は韓国が納得できるまで謝罪しなければならず、靖国神社も行かないという意思を明らかにしている。
3人目の有力候補である河野太郎行政改革相は、日本国内の世論調査で次期首相として候補1位に挙がっている。党の方針に反して「脱原発」や日本の保守層が反対する「母系天皇」を検討しようと主張するなど、改革的な声を上げてきた。また、規制をなくし、中央政府の権限を減らし、地方や民間ができることは果敢に任せなければならないという考えも示してきた。日本政界内最高の知韓派とされるが、韓日が強制動員被害者賠償問題で正面衝突した2018年から2019年に外相を務めたため、政権を握ったとしても突然の政策転換は容易ではないものと見られる。父親は、慰安婦動員過程の強制性と軍の介入を認めた「河野談話」(1993)で有名な河野洋平氏。普段は直言をためらわないタイプだが、最近は控えているためか、極めて慎重な態度を取っている。
高市早苗前総務相は、安倍前首相としばらく同じ派閥に属した極右の女性政治家とされる。当初、出馬が見込めない状態だったが、安倍前首相の支持を受け評価がやや上がった。3日夜、民放のBSフジに出演し「首相になっても靖国神社を参拝する」という意思を示した。そのほか、野田聖子幹事長代行、下村博文政調会長などが出馬を模索中だが、実現するかは未知数だ。