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「オーカス」で軍拡競争加速化…核拡散の暗雲立ち込める東アジア

登録:2021-09-28 06:56 修正:2021-09-28 12:12
米中の新冷戦で武力増強の激戦地に 
 
朝鮮半島平和プロセスが膠着状態に陥る中 
北朝鮮、原子力潜水艦・戦術核兵器開発に拍車 
韓国もミサイル戦力化で武装を強化 
日本も8年連続で防衛費増額
東アジア主要国の2021年国防予算と米中の国防費の差の予想図//ハンギョレ新聞社

 米国と中国間の「戦略競争」と北朝鮮の「核武力の完成」という二重の波が押し寄せたインド太平洋で、関連国の軍拡競争が本格的に進められている。一方の武力増強が他方の対応を招く軍拡競争の「悪循環」が始まっているが、新冷戦と呼ばれる巨大な地政学的変動の中で、関連国間の不信感があまりにも深く、この流れを覆せるようなこれといったきっかけが見当たらない。

 今月15日、同地域の厳しい情勢を示す3つの事件が相次いで起きた。先に動き出したのは北朝鮮だった。北朝鮮は同日午前、列車の上で短距離弾道ミサイルの発射実験を行った。それから2時間後、韓国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を打ち上げた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も直々に忠清南道泰安(テアン)の国防科学研究所(ADD)総合試験場でミサイル発射実験の場面を見守った。翌日午前(現地時間15日)には米国、英国、オーストラリアがインド太平洋地域の新たな安全保障枠組み「オーカス」(AUKUS)を発足させた。米国のジョー・バイデン大統領は、これまで堅固に維持してきた核拡散防止条約(NPT)体制を一部崩し、オーストラリアに原子力潜水艦技術を提供するという決断を下した。

 インド太平洋の軍拡競争は大きく分けて二つの戦線で繰り広げられている。第一の戦線は朝鮮半島だ。北朝鮮が2017年11月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星-15型」の発射実験に成功し、「核武力完成」を宣言してから、朝鮮半島では2018~2019年に非核化に向けた「朝鮮半島平和プロセス」が進められた。この流れが長期の膠着状態に陥った中、南北間ではいつの間にか熾烈な軍拡競争が始まった。北朝鮮は今年1月の第8回党大会で、核兵器の小型・軽量化・戦術兵器化▽戦術核兵器の開発▽水中・地上における固体燃料エンジンの大陸間弾道ロケット開発の推進▽原子力潜水艦、水中発射核戦略兵器の保有などの内容を公開した。これに対抗して韓国も2日に発表した2022~2026年の「国防中期計画」で、ステルス戦闘機(F35)の導入完了▽6000トン級の次期駆逐艦(KDDX)開発の継続▽3000トン級中型潜水艦の持続的な確保(島山安昌浩艦8月就役)▽破壊力を増大した地対地・艦対地ミサイルの持続的な戦力化などの措置を発表した。このような措置がすべて施行されれば、韓国の国防費は2026年には70兆ウォン台(約6兆6千億円)にのぼる。日本もやはり北朝鮮の核の脅威を理由に、安倍晋三前首相が就任した後、8年連続で防衛費を増額し、北朝鮮のミサイル基地を直接攻撃するとして「敵基地攻撃能力」の確保に努めている。

 第二の戦線は米中の戦略競争の「主戦場」である東シナ海と南シナ海で繰り広げられている。米国の今年の国防予算は7405億ドルで、2位の中国より3~4倍多い。米国はこれにとどまらず、昨年末、中国牽制のための予算を別途編成した。国防予算案に「太平洋抑止構想」(PDI)項目を新設し+、今年は22億ドル、来年はその倍以上の51億ドルを策定する計画だ。同予算は中国牽制のためインド太平洋地域で米国の軍事態勢を増進し、同盟を強化するのに使われる予定だ。米軍のインド太平洋司令部はこうした目的を達成するため、2023年から2027年まで227億ドルの予算を要請している。

 米国は2024~2045年頃に、アジア地域にこれまで中距離核戦力(INF)条約で禁止していた中距離ミサイルを配備する計画だ。この計画が実現すれば、2016~2017年にTHAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐり繰り広げられた韓中間の対立とは比較にならないほど、大きな波紋が広がるものとみられる。

米海軍第7艦隊所属の誘導ミサイル駆逐艦ベンフォールドが今月8日、南シナ海のスプラトリー諸島の海上で「航行の自由」作戦を展開している=米海軍提供//ハンギョレ新聞社

 これに対抗した中国の「軍事崛起」も続いている。中国はこれまで米国に対して強力な中距離ミサイル戦力を基盤にした「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を追求してきた。アジア太平洋地域に米空母など主要戦略資産が接近しないよう牽制するということだ。さらに米国をグアム郊外、さらにハワイまで追い出すことを目指している。このため、航空母艦を攻撃できる弾道ミサイルや極超音速滑空兵器などの先端兵器の開発に力を入れている。この目標の達成に向け、中国は1995年以降、国防費を14倍(米国は2.7倍)に、2010年以降は2.6倍(米国は大差なし)に引き上げた。3月に公開された中国の今年の国防予算は、前年に比べて6.8%上昇した1兆3553億元(約2100億ドル)だった。中国の習近平国家主席は今年7月、共産党創党100周年記念式で「中国に手を出す妄想をするなら、それが誰であっても14億の中国人民が血と肉で築いた鋼鉄の長城の前で頭が割れ、血を流すことになるだろう」と警告した。

 長期的に中国の国防費支出が2050年頃に米国を上回るという見通し(オーストラリア独立研究センター)もある。さらに、中国の国防予算は厳密ではないという指摘も相次いでいる。ストックホルム国際平和問題研究所(SIPRI)は、独自の分析模型をもとに、中国の2019年の国防予算が発表された1兆2130億元(約1880億ドル)ではなく、1兆6600億元(約2570億ドル)に達すると見ている。発表された内容より37%多いということだ。

 米中間の「戦略競争」が激化し、米国は地域の同盟国を活用した圧迫も進めている。これに積極的な態度を示しているのは、インド太平洋地域において米国の「第一同盟」であることを自負する日本だ。日本は2010年代半ばから、西太平洋で中国を封鎖するために様々な対応をしてきた。代表的なものは九州~沖縄~台湾をつなぐいわゆる第1列島線で中国海軍と空軍の動きを抑制する「中国包囲網」の構築が挙げられる。有事の際、中国海軍が西太平洋に進出を試みた場合、ここに配置された日本の地対空・地対艦ミサイルが中国の動きを大きく制限するものとみられる。

 日本はさらに2万トン級強襲揚陸艦「いずも」と「かが」を軽空母として運用することを決め、2018年12月に閣議決定を通じて垂直離着陸が可能な42機のF-35Bを購入することにした。日本の両空母は、東シナ海と南シナ海などに投入され、中国海軍と対峙することになる。日本は1976年以降維持してきた「防衛費を国民総生産(GNP)の1%未満に制限」する「防衛費1%」原則も事実上解除した。菅義偉首相は4月に発表した米日首脳共同宣言で、「日本は同盟および地域の安全保障を一層強化するため、自らの防衛力を強化することを決議した」と明らかにした。

 中国と対峙する第1線で日米同盟を支えようとする動きがオーカス(AUKUS)だ。オーカスの軍事的意味は、対中国牽制に積極的に協力したオーストラリアに一定部分の核技術を移転し、南シナ海で中国牽制に乗り出すようにしたことだ。これは核拡散防止政策を進めてきた米国が、自ら原則を破ることを意味するもので、中国の反発はもとより周辺国の動揺も避けられない。

 これに対抗して、中国は再び核戦力の強化を急いでいる。中国は現在、6~12隻の原子力潜水艦を保有しており、2030年までに約20隻を保有するものとみられる。オーカスの登場で中国がより早く、より大規模に原子力潜水艦能力を増やすものと懸念されている。中国の核弾頭は約350基で、約5800基の米国に大きく及ばないが、核格納庫を従来よりも10倍以上多い約200基建設中だという。中国内部では、これまで中国が維持してきた「核兵器先制不使用」原則の見直しを求める声が高まっている。中国の脅威に苦しみ、常時安全保障の脅威にさらされている台湾も、米国産兵器の購入を増やすなど、軍備を拡大している。中国と競争するベトナムとインドも軍拡競争に参加する勢いだ。

チェ・ヒョンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/asiapacific/1012977.html韓国語原文入力:2021-09-28 04:59
訳H.J

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