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米国「大西洋同盟」の没落と「太平洋同盟」の浮上

登録:2021-09-27 03:38 修正:2021-09-27 07:19
米英豪のオーカス、戦後の米国同盟構図の最大の変化  
オーカスはインド太平洋戦略を具体化する初の各論  
欧米離れ、米主導のアングロサクソン系ブロックの強化  
欧州の独り立ち…欧州連合軍創設など「戦略的自治」を追求
米国のジョー・バイデン大統領が今月15日(現地時間)ホワイトハウスで、英豪首脳がオンラインで出席した中、「オーカス(AUKUS)」の創設を知らせる記者会見を行っている。左はオーストラリアのスコット・モリソン首相、右は英国のボリス・ジョンソン首相=ワシントン/EPA・聯合ニュース

 米中の戦略競争が本格化し、戦後約70年のあいだ米国が主導する国際秩序を支えてきた米国と欧州の「大西洋同盟」が凋落し、「太平洋同盟」が本格化している。

 米国、英国、オーストラリアの3カ国が15日、「オーカス(AUKUS)」という新たな3カ国安全保障枠組みを創設することにしたことについて、第二次世界大戦後の国際安保体制に吹き荒れた最大の変化という分析が出ている。これまで国際秩序の基本軸だった大西洋両岸の同盟が衰退し、太平洋を舞台にした「反中国同盟」が具体化しているからだ。

 英紙「エコノミスト」はこの変化を「目の前で起こっている地政学の地殻変動」と評した。今回の発表を、英国やフランスなど旧列強の国際的影響力を没落させ、中東で米国の覇権が確立された決定的な契機だった1956年スエズ危機、中ソ社会主義ブロックの解体と反ソ米中連帯を可能にした1972年のリチャード・ニクソン米大統領(当時)の中国訪問、冷戦終息の序幕だった1989年ベルリンの壁崩壊に比肩する出来事として捉えたのだ。さらに、24日には米国のインド太平洋戦略を支える日米豪印4カ国による安全保障の枠組み「クアッド」の初の対面首脳会合が開かれた。

 米国が反中国包囲を同盟構図の中心軸に据え始めたのは、オバマ政府時代に遡る。ドナルド・トランプ政権はこの変化をクアッドを基盤としたインド太平洋戦略に発展させた。オーカス条約は中国封鎖が中心であるインド太平洋戦略を軍事的に具体化する初の動きといえる。

 オーカスの結成が持つ地政学的な意味は大きく分けて3つある。まず、大西洋両岸の同盟が衰退する決定的な契機となった。再均衡政策を標榜したオバマ政権に続き、トランプ政権は北大西洋条約機構(NATO)の脱退まで示唆するなど、欧州同盟国を軽んじる態度を示した。バイデン政権は発足後、対外政策の最優先課題として「同盟の復元」を掲げたが、その具体的な姿は同盟の軸を太平洋に移し、英語圏国家と日本や韓国などアジアの同盟国を結びつけて反中国同盟を結成することだった。

 それに対する反作用として、ドイツとフランスに代表される欧州の対米不信感と疑念が大きくなった。ドイツのアンゲラ・メルケル首相はトランプ政権発足直後の2017年5月、「私たちは欧州人として、私たちの運命のために自ら戦わなければならない」と述べた。また、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2019年11月、「エコノミスト」との会見で、NATOが「脳死状態」に陥っているとし、欧州独自の戦略的かつ地政学的な力を備えるために、欧州連合軍の創設を主張した。ドイツ国防相を歴任したウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、オーカス条約が発表された15日、欧州議会の施政方針演説で「欧州連合は軍事能力を強化しなければならない。米国主導のNATOがなくても欧州が軍事的に介入する政治的意志が必要だ」と述べた。フランスがオーカスに強く反発した直接的な原因は、オーストラリアに輸出を進めていた潜水艦建造契約が流れたことにあったが、その背景には米国に対する根強い不信感がある。欧州はこれから「独り立ち」を目指すかもしれない。

 最後に、米国はオーストラリアに原子力潜水艦の建造技術を提供するとして、反中国同盟強化のためなら「核技術」までも移転できるという意志を示した。これはインド太平洋地域の国々の軍拡競争を招きかねない。オーストラリアを地域の潜在的競争者と見なすインドネシアは、17日に発表した声明で「軍拡競争と武力開発がこの地域で続くことに対する深い懸念」を示した。すでに中国との「距離置き」をめぐり立場が分かれているASEAN諸国も、軍備強化に乗り出す可能性がある。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/asiapacific/1012751.html韓国語原文入力:2021-09-26 16:58
訳H.J

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