昨年8月、未来統合党(現・国民の力)が検察に提出した「開かれた民主党」のチェ・ガンウク議員に対する告発状(公職選挙法違反の容疑)が、党が提供した「草案」をもとに作成されたことが確認された。この告発状は昨年4月にキム・ウン議員が検察から受け取って党に渡したという疑惑のある告発状と酷似していることが分かった。「4月の告発状」と「8月の告発状」、その間にある「告発状草案」がほぼ同一であることが明らかになり、党と「告発教唆」疑惑の関連性が高まっているが、「国民の力」指導部は真偽を把握するどころか傍観している。
法律諮問委弁護士「党で草案を受け取り、文章をまとめた」
7日の本紙の取材結果、昨年8月にチェ・ガンウク議員に対する告発状を作成したのは、「国民の力」法律諮問委員であるC弁護士であることが確認された。彼はこの日、本紙との電話インタビューで、「党から草案のようなものをもらって編集した。(草案が)法律的に告訴状に適しているか否か、手を入れるべき部分はあるかなどを見て、提出できると判断し、提出した」と述べた。
これに先立ち、国民の力は「告発教唆」疑惑が持ち上がって以来、「党に届いたことがない」と主張し、関連性を否定してきた。イ・ジュンソク代表は同日、CBSのラジオ番組に出演し、「初期調査をしたところ、党に届いた記録が存在しない」と繰り返し強調した。しかし、党が公式に提出した「8月の告発状」が「4月の告発状」と一部の表現が違うだけであることが判明したため、C弁護士が受け取ったという草案がキム議員が渡したという「4月の告発状」である可能性が高くなったのだ。本紙が2件の告発状を比較した結果、31行にのぼる犯罪事実の部分はほぼ同じで、結論も「上記のように」という表現を除けば100%同じだった。キム・ウン議員が検察から受け取って党に渡した疑惑を受けている告発状と、本紙が入手した告発状の「草案」も、犯罪事実や告発の根拠、結論などのサブタイトルが数字と四角を使ったことが異なるだけで、「非告発人チェ・ガンウク」が「比例代表候補に出馬した候補者」から「当選者」に変わったことを除けば、同じ内容だった。
C弁護士は「チェ議員に対する告発状が4月の告発状と似ている」という指摘に対し、「草案を編集した。箇条書きになっていたのを文の形にした程度」だとし、「草案がどうして似ているのかまでは、私は知らない」と述べた。また「草案を誰が作成したのか」という質問に対しては「知らない。党から受け取っただけだ」と話した。羅列式で書かれている党草案を一部の文だけ直して告発状を作成したと主張したが、告発状が4月の草案とそっくりな理由は明確に説明できなかった。
実体究明よりも防御に追われる国民の力
キム・ウン議員が関与した「告発教唆」疑惑が連日広がっているが、「国民の力」指導部は独自の真相調査なしに「究明責任」を捜査機関に押し付け、事実上、手をこまぬいている。告発状伝達者とされるキム・ウン議員と情報提供者がいずれも国民の力の所属であるにもかかわらず、真相調査を通じて真偽を把握するどころか、傍観しているのだ。イ代表は、疑惑が初めて浮上した直後、「党務監査」と「候補検証団設置」のカードを取り出したが、前日には党務監査の代わりに「検証団設置を急ぐ」程度の意見を出しただけだ。ホ・ウナ首席報道担当は本紙に対し、「(検証団に関連しては)最高位内部では関連する組織が必要だという意見が多かった」とし、「9日の最高委員会議で議論し、決定することになるだろう」と述べた。
「国民の力」指導部は、告発をそそのかされた当事者と目されたキム・ウン議員から聞き取って顛末を把握しようとする試みすらしていないことが分かった。イ代表は同日、CBSのラジオ番組でのインタビューで「党務監査を行うためには、党の公式機構ともいえる事務機関に移された記録が必要だが、そのような記録はない」と述べた。キム議員に対しても「会うことが難しく、事件初期に簡単な対話は電話で話した」とし、「キム議員が行方をくらましたわけでもなく、メディアとの疎通を強化すると話したため、期待している」と述べた。疑惑当事者自らが釈明せよという趣旨だ。イ代表はまた「(前日ユン・ソクヨル前検察総長と面会した際)告発教唆疑惑に関し、ユン前総長本人は『身に覚えがない、恥ずかしいことはしていない』と語った」とし、「現職の検事に関する言及があるため、公捜処(高位公職者犯罪捜査処)が進めるべきだと思う」と述べた。
キム・ギヒョン院内代表も同日、記者団に対し「『告発教唆』という用語自体が間違っている。公益情報提供の形ではないかと、私たちはそう考えている」とし、「私たちとしては問題になるようなものは何もないと判断している」と述べた。
国民の力内部で「真相究明」を求める声も
早急に状況を収拾しなければならない党指導部の消極的な行動をめぐり、党内部でも苦言が出た。当選3回のキム・テフム議員は同日、立場を表明し「イ代表など指導部がこの状況を傍観しているのは無責任な行為」だとし「大統領候補を保護することも指導部の役割であり責務だ。キム・ウン議員に対する真相調査に乗り出し、1日も早く論議を終息させなければならない。調査結果に問題があれば、強力な懲戒はもちろん、国民の皆さまに詳細に知らせるのが責任のある公党であり、国民に対する道理だ」と指摘した。キム・ジェウォン最高委員は同日、文化放送(MBC)のラジオ番組に出演し「いま問題になっているのは検事が(告発状を)渡したことだ」とし、「情報提供の問題ではなく、捜査情報を流出したのか、ひいては告発を頼んだのかが問題だ。それを情報提供といえるのか、全体的に(見なければならない)」と述べた。また「この問題について、わが党がいまの状態を見過ごすわけにはいかない、この問題を内部的に明らかにすべきではないかと思う」と強調した。