昨年の総選挙を控えて、ユン・ソクヨル前検察総長時代の検察が、「検察とマスコミの癒着疑惑」とユン前総長の家族関連の疑惑に対応するために、野党の未来統合党(現、国民の力)に与党側の要人らを告発するよう促したという疑惑が提起された。
インターネットメディア「ニュースバース」は、最高検察庁が昨年4月15日の総選挙の前に、キム・ウン国会議員候補(現、国民の力議員)に、盧武鉉財団のユ・シミン理事長と開かれた民主党のチェ・ガンウク代表などを公職選挙法違反(放送・新聞などの不正利用罪)と情報通信網法違反(名誉毀損)の疑いを記した告発状を渡したと報道した。
報道内容を総合すると、昨年4月3日、当時の最高検察庁のソン・ジュンソン捜査情報政策官は、キム議員に2回にわたり告発人欄が空欄の告発状を渡したという。告発状には、ユ・シミン理事長とチェ・ガンウク代表、ファン・ヒソク最高委員らが、選挙に影響を与える目的で文化放送(MBC)の「検察とマスコミの癒着」報道に介入したという犯罪事実(公職選挙法違反、情報通信網法違反)が記載されていた。MBCの記者5人と、ユン前総長夫人の「ドイツモーターズ株価操作関与疑惑」を報道したインターネットメディア「ニュース打破」の記者1人、ディレクター1人も、告発対象に含まれていたという。被害者にはユン前総長と夫人のキム・ゴンヒ氏、ハン・ドンフン検事長が指摘されていた。
MBCはその年3月、チャンネルAのイ・ドンジェ記者が、イ・チョル元バリューインベストコリア代表に自分とハン検事長との親密さを誇示し、ユ理事長らによる不正の事実を述べるよう強要したと報道した。当時、ソン・ジュンソン捜査情報政策官は、キム・ウン候補に「検察とマスコミの癒着疑惑」をMBCに情報提供したC氏の過去の事件の判決文も告発状に添付し渡したと、ニュースバースは報道した。犯罪事実を指摘した実名の判決文を本人の同意なしに外部に流出するのは、個人情報保護法違反にあたる。検察のある幹部は「判決文の流出が事実であれば、ただちに最高検察庁は、ソン検事に対する監察を実施しなければならない。明白な職務違反だ」と述べた。未来統合党は実際には彼らを告発しなかったが、保守派の市民団体である「法治主義を正す行動連帯」(法正連)が、チェ・ガンウク代表とファン・ヒソク最高委員、情報提供者のC氏を告発し、チェ代表は選挙法違反の疑いで起訴された。
最高検察庁の捜査情報政策官は、検察総長の“目と耳”の役目を果たす最側近だ。最高検察庁の捜査情報政策官が、検察を攻撃した政治家とジャーナリストに対する告発状を作成し、それを野党に渡したのであれば、当時検察トップだったユン前総長の指示を疑わざるを得ない。ソン・ジュンソン捜査政策官は、昨年のユン前総長に対する懲戒請求事由だった「裁判部政治傾向分析文書」作成の責任者でもある。
しかし、ユン・ソクヨル陣営は「ユン・ソクヨル候補は、検察総長在職中は誰に対しても告発を促したことはないことを明言する」とし、疑惑を否定した。ソン・ジュンソン検事もこの日、本紙に「報道は事実ではなく、私が知っていることもなく、明らかにする内容もない。告発状を渡した事実自体がない」と否定した。当時、未来統合党の法律支援団長だったチョン・ジョムシク議員は「そのようなことがあったことは、全く記憶にない」と述べた。
文書を渡された当事者に挙げられたキム・ウン議員は「私は渡されただけのようだ」と述べたと、ニュースバースは報道したが、この日の公式説明では「公益情報提供」を強調した。キム議員は「当時の議員室には多くの情報提供があり、情報提供された資料は当然、党の法律支援団に渡した。情報提供された資料であれば、それを党に渡すことは全く問題にはならない」と主張した。さらに、「政党と国会議員は公益申告の対象であり、それらに対する公益情報の提供をあたかも請負告発であるかのように追求するのは、公益情報提供を萎縮させることであり、はなはだ残念」だとも主張した。公益情報提供を受けて党に伝えるのは国会議員の義務だと強調したが、キム議員は昨年4月時点では、国会議員ではなくソウルの松坡(ソンパ)甲選挙区に出馬した候補者の立場だった。