ユン・ソクヨル検察総長時代の検察が、昨年4月の総選挙を控え未来統合党(現・国民の力)に汎与党陣営の要人の告発を教唆したという疑惑の重要な物証である告発状の全文を、本紙が入手した。最高検察庁のソン・ジュンソン捜査情報政策官(当時)が、総選挙に出馬した検察出身のキム・ウン未来統合党候補(現・国民の力議員)に渡したものとみられる告発状だ。告発状は、ユン総長の妻および義母の犯罪疑惑報道と、検察とマスコミの癒着疑惑報道などについて、「そのような事実は全くない」と断言し、「自分の役割と本分を忠実に遂行するユン総長と検事たちをけなして非難」して「汎与党・汎進歩勢力の総選挙の勝利を目的とした計画的なマスコミプレー」を、迅速に厳しく処罰してほしいという内容だ。
本紙が5日に入手した告発状は、昨年4月3日と8日の2回にわたり、キム候補が未来統合党側と推定される人物にテレグラムで伝えたもので、告発状の写真ごとに、受け取ったメッセージを他の人に再転送する際に自動的に表示されるテレグラム表記(「転送されたメッセージ:ソン・ジュンソンより」)がついている。これに先立ち、キム議員(当時候補)は「情報提供を受けた資料は当然、党の法律支援団に渡した」と明らかにした。
4月3日に渡された告発状は、(1)告発人(2)被告発人(3)犯罪事実(4)告発理由(5)結論(6)証拠資料(7)別紙の20枚で構成されている。宛先は「最高検察庁特別捜査部長」と書かれている。公職選挙法違反および名誉毀損の疑いが書かれた犯罪事実、告発理由、結論など、本文だけで13枚にのぼる。犯罪容疑に関する論理構成や叙述形式は、検察の公訴状と非常に類似した形式だった。すでに知られているように、告発人の欄には何も書かれていなかった。被告としてファン・ヒソク(開かれた民主党最高委員)、チェ・ガンウク(同党代表)、ユ・シミン(盧武鉉財団理事長)、「ニュース打破」の記者・プロデューサー、「文化放送」(MBC)の記者ら13人(氏名不詳含む)が記されていた。
告発内容は、検察とマスコミの癒着疑惑の情報提供者Xのニセの情報提供を根拠に、汎与党陣営の要人らと政府寄りの記者が組んで虚偽の報道をし、意図的にユン総長と家族・側近の評判を落とすことで、検察に対する不信感を助長し、総選挙に介入しようとするなど、公職選挙法に違反したという疑いだ。
告発状は「犯行計画および共謀関係」でこうした内容を詳しく記述している。「情報提供者のC氏は民主社会のための弁護士会出身で、4・15総選挙で共に民主党議員候補に公認されたミン・ビョンドク弁護士の助力を受けるなど、与党の有力者と密接な関係にある。ミン・ビョンドクは文在寅(ムン・ジェイン)政権で核心人物として登用されたファン・ヒソク、チェ・ガンウクと非常に近い間柄だ。C氏はユン総長に対する支持の意思を公に明らかにしていたが、チョ・グク問題と大統領府の権力型不正捜査以後、ユン総長に反感を感じ、政府寄りのマスコミ記者らに虚偽事実を提供し、報道するようにした。これを通じて、ユン総長と検察組織に対する国民の不信を増幅させ、文在寅政権と与党の支持率の回復を図ろうと決めた。『ニュース打破』の記者とMBCの記者は、C氏の情報提供を引用して事実確認もしないまま報道することにし、ファン・ヒソク、チェ・ガンウク、ユ・シミンは虚偽報道の内容を引用してユン総長らを非難する論評を公開した」というもの。
告発状はまた、犯罪事実として「C氏とファン・ヒソク、チェ・ガンウク、ユ・シミンは『ニュース打破』、MBCの記者らと共謀し、特定の候補者であるファン・ヒソク、チェ・ガンウクらを当選させる目的で選挙に関して虚偽事実を報道したり、事実を歪曲して報道または論評する行為をし、公職選挙法に違反した」と明らかにした。さらに「一連の『検察虚偽誹謗』報道は、ファン・ヒソク、チェ・ガンウクらの当選および与党・進歩勢力の総選挙の勝利に役立つようにするという目的を持って報道を続けた」と付け加えた。
告発の理由は、当時チュ・ミエ法務部長官と極限の対立関係にあったユン総長側の感情、ユン総長の心境を代弁するような内容だった。「ユン総長は、生きている権力に対する捜査を陣頭指揮したことで政府・与党と進歩勢力の支持者たちにとって逆賊のような存在になってしまった。自分の役割と本分を忠実に遂行しているユン総長と検事をこき下ろし、非難した。政府と与党の強い支持者たちは、瑞草洞一帯で大規模な集会を開き、ユン総長の退陣運動を繰り広げ、このような不条理に我慢できなかった多くの国民は、光化門一帯で対抗集会を開いた。一連の放送報道と与党勢力の要人らの同調は、『汎与党陣営、汎進歩勢力の総選挙の勝利を目的としたある種の計画的なマスコミ操作』という感をぬぐえなかった。検察総長の家族と側近の検事長を誹謗する虚偽の情報を提供して報道させ、投票を控えた国民をあざむく行為こそ深刻な『政府とマスコミの癒着』であり、犯罪行為だ」ということだ。「左派政権維持という同一の利害関係」「内通」など、公安事件の起訴状で見られそうな表現も使われている。ユン総長の妻キム・ゴンヒ氏の株価操作への加担疑惑については「違法な株価操作に関与した事実は全くなかった」と強調した。
特に告発状は「総選挙に先立ち、迅速な捜査を進めて厳しく処罰することで、国家と社会、被害者個人に及ぼす重大な害悪を迅速に止めてほしい」とし、被告発人の調査の時期を「総選挙前」と具体的に特定した。
本紙は告発状の他にも、告発証拠資料として添付されたフェイスブックの書き込みのキャプチャー87件、検察とマスコミの癒着疑惑に関する情報提供者のC氏の実名判決文3件の写真も確保した。これも「転送されたメッセージ:ソン・ジュンソンより」という自動表記がついていた。
フェイスブックのキャプチャーは、大半が情報提供者のC氏がユン総長に向けて書いた敵対的な内容だったり、C氏の供述の信憑性を問題視したりする内容だ。情報提供者のC氏が「イオハ」という仮名で運営するフェイスブックと、C氏の弁護人だったミン・ビョンドク議員のフェイスブックの掲示文が多くを占めている。判決文はC氏が詐欺師であるという点を強調する意図で添付したものとみられる。C氏がかつて横領、詐欺、詐欺未遂などの容疑で処罰を受けた内容だ。
告発状は、数カ月にわたるメディア報道やフェイスブックの書き込み、実名判決文などをまとめて一度に渡したことから、数日にわたって相当な事前準備をしたものと推定される。
それから5日後の4月8日、キム候補は4月3日に告発状を再転送した人に、チェ・ガンウク関連の5枚の告発状を追加で渡した。この告発状には、公職選挙法上の虚偽事実公表罪に関する2013年の最高裁判所の判例を添付するなど、法理検討まで終えた形跡がみられる。