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空軍、海軍に続き陸軍も…強制わいせつ、ストーキングで下士が自殺未遂

登録:2021-08-25 03:35 修正:2021-08-25 09:00
陸軍でも明らかになった性犯罪と2次加害 
昨年4月の任官からわずか1週間で「悪夢」 
通報から2週間後にようやく分離措置 
師団担当官は「雨で資料が流失」 
事件矮小化、甘い処分、2次加害放置 
空軍や海軍の強制わいせつ事件とそっくり 
 
民間弁護士と告訴後にようやく捜査 
水原地検は性暴力処罰法違反容疑で起訴 
被害者は今年初めに自殺試み、最近も… 
家族「誰かが死なないと改善されない集団」
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 空軍と海軍に続き陸軍でも、上官からストーキングと強制わいせつを受けた副士官が自殺を試みた。事件の矮小化やもみ消し、甘い懲戒、被害者の身元情報の流出などの広範な2次加害までもが、空軍や海軍の事件と酷似していた。本紙は23日、入院中の被害者の実姉に電話インタビューした。何の処罰も受けずに懲戒のみを受けて退役した加害者は、遅まきながら民間の検察に起訴されている。陸軍は「当時、被害者の刑事告訴の意思は確認されなかった」と述べたが、被害者のA下士(軍の階級)側は「まともな説明は聞いておらず、(軍は)意思の確認もしていない」と述べた。

赴任わずか1週間で交際迫った直属上官…断るとストーキング、セクハラ、強制わいせつ

 A下士は任官直後の昨年4月、陸軍のある部隊に配属された。赴任からわずか1週間で、直属の上官のB中士が「つきあおう」と切り出したという。A下士はその場で丁重に断ったが、その日以降、B中士のストーキングが始まったというのがA下士側の説明だ。B中士は「私とつきあえば業務を手伝ってやる」などと言って懐柔したという。早朝に酔って電話をかけてきたり、電話に出ないと数十通のショートメッセージを送りつけてきたりしたという。電話に出ないと、営外の宿舎の前までやって来て何度も電話をかけてくることもあったという。

 ストーキングだけではなかった。B中士は酒に酔って自分の性経験をA下士に話したり、仕事中にそれとなく体を触ってきたりしたという。4カ月近く直属上官のセクハラと強制わいせつにさらされたA下士は、昨年8月初めに別の上官の助けを借りて部隊に通報した。

遅れた被害者と加害者の分離…高官は実名言及で2次加害を煽る

 A下士側は、相談を受けて調査を進めた師団の担当官と法務室の対応が無責任で不適切だったと指摘する。直ちに取られるべき被害者と加害者の分離措置は、通報から2週間後。その間、B中士は周囲に不当だと訴えはじめ、部隊には「A下士は普段から性的に乱れていた」といううわさが広まったという。ある中士はA下士に「どうせお前はイメージも良くない。部隊を騒がせていないで辞めてしまえ」と言い、加害者と親しい関係だった別の幹部はA下士に連絡し、供述調書を見せてほしいとまで要求した。被害者を助ける幹部たちは「A下士をなぜ助けるのか」とまで言われた。

 A下士は、まん延している2次加害を部隊の高官に再び訴えることを決心する。しかしこの幹部は面談の終了後、「上(上級部隊)に知らせるのはやめよう。幹部教育を徹底していく」と懐柔したという。その後に行われた全体幹部教育で、その高官はむしろ2次加害に当たる言葉を吐いた。A下士とB中士の実名をあげ、「裏で悪口を言えば2次加害として通報される。悪口を言いたければ、A下士の転出後にしろ」という趣旨の発言をしたというのだ。

忠清南道地域の市民団体のメンバーと正義党忠清南道党が6月、空軍の強制わいせつ被害者が勤務していた忠清南道瑞山の空軍第20戦闘飛行団の前で記者会見を開き、徹底した捜査と加害者に対する厳罰を要求している/聯合ニュース

加害者の刑事処罰はなく懲戒のみ…被害者は内部告発の烙印押されていじめ

 師団法務室はB中士を刑事処罰せず、懲戒する方向へと傾いた。A下士がストーキング、強制わいせつ、セクハラについて供述したほか、A下士の家族も国防部調査本部が運営する国防ヘルプコールに電話をかけて徹底した調査を要請したが、証拠とするに足る監視カメラ映像や通話内容の確保に向けた強制調査は行われなかった。B中士がA下士に送った手紙などの各種資料を所持していた師団担当官は、A下士が返してほしいと要求すると、「雨で流されて紛失した」という納得しがたい理由を挙げて断ったという。

 その後、B中士は軍の捜査機関から特に調査も受けず、懲戒は「品位維持義務違反」との理由で罷免より低い解任処分にとどまった。深刻な2次加害を犯した部隊関係者に対する調査や懲戒、処罰はなかった。むしろある幹部などは、事件のさなかに被害事項と人的事項が書かれたA下士の転出希望書を撮影して流出させるなど、さらなる加害を犯したという。

 結局、加害者に対する本格的な捜査は、A下士が同年11月に自ら民間の弁護士を訪ね、捜査機関に告訴した後にようやく行われた。水原地検女性児童犯罪調査部は今年6月、加害者を性暴力処罰法違反(業務上の威力などによる強制わいせつ)の疑いで起訴した。同じ事案に対して懲戒処分にとどまった師団法務室の決定とは大きく異なっていた。

 陸軍本部公報精訓室は本紙に宛てた文書で、「(加害者に対する)懲戒手続き当時、被害者の刑事告訴の意思は確認されていなかったため、まず懲戒手続きを速やかに進めた」と述べている。これに対しA下士側は「当時、懲戒手続きなどの事件処理がどのように進められるのかも(被害者には)十分に共有されていなかった。被害者の意思は確認しておらず、法的手続きに関する案内もほとんどなかった」と述べた。軍人権センターのキム・ヒョンナム事務局長は「懲戒手続きそのもので、被害者側はこの問題を事件化してほしいと要求したのだ。その結果、加害者が解任されたということは、強制わいせつの事実が一部ではあるが確認されたということだ。この過程で軍が刑事手続きを並行しなかったというのは、非常に苦しい釈明だ」と述べた。陸軍は「当時、事件を担当した軍の捜査関係者を対象として、陸軍中央捜査団で処理過程の適切性についても調べている」と語った。

 加害者側は、法廷で事実関係を争うとの立場だ。弁護人は本紙の電話取材に対し「被害者が感じる被害感情とは別に、被害日時、場所、方法などの法的な要件が満たされなければならない。この部分を法廷で争う」と述べた。

「2次加害も処罰する制度を作るべき」

 軍の加害者に対する甘い処分とお粗末な被害者保護は、2次加害の温床となった。初任部隊を離れ、新たに転入した部隊でも「直属の上官のことを告げ口して部隊を瓦解させた問題児」との烙印がA下士にはついて回った。A下士の転出理由と人的事項はすでに部隊に広まっていた。A下士の名前が集中的に検索されたせいで、軍のイントラネット検索システムでA下士の人的事項が「ブラインド」処理される状況すら発生したという。A下士は転出後の2カ月間、新たな部隊で事実上いじめを受けていたという。

 A下士は今年初めに続き、最近ふたたび自殺を試みた状態で発見され、現在は入院している。A下士側は、空軍副士官強制わいせつ死亡事件を機に設けられた国防部特別通報期間に改めて通報した。陸軍は「2次加害関連者に対する捜査は現在、地域軍団で進められている。被害者の意思を考慮し、管轄調整も検討している」と述べたが、A下士側は軍に対する信頼を失って久しいと述べた。

 A下士の実姉は「空軍や海軍での被害者である副士官たちが経験したことが、陸軍に服務する妹の経験したこととあまりにも似ていてショックを受けた。直接的な加害者も問題だが、間接的な加害者も処罰される明確な基準と制度が整備されなければならない」と述べた。A下士の実姉は20日、大統領府の国民掲示板に請願をアップした。

 「誰かの死によって問題が改善する集団は、生きている限り問題は解決しないだろう。鋭い視線と持続的な問いかけで、軍隊内の性暴力防止、事件の透明な調査と強力な処罰を支持してほしい」

イム・ジェウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/1008837.html韓国語原文入力:2021-08-24 04:59
訳D.K

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