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[ニュース分析]北朝鮮には共存、日本には対話…新たな提案なき文大統領の光復節演説

登録:2021-08-17 03:57 修正:2021-08-17 07:20
文大統領の8・15祝賀演説 
「恒久的平和を通じて朝鮮半島モデルを」 
具体的な提案なく、大原則のみを提示 
韓日の懸案など、任期内の解決は困難 
文在寅大統領と金正淑夫人が15日、ソウル中区の文化駅ソウル284で開かれた第76周年光復節慶祝式で万歳三唱している=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、任期中最後となる8・15光復節の祝賀演説で、北朝鮮に対し、「朝鮮半島の非核化」と「恒久的平和」にもとづき、南北だけでなく東北アジア全体の繁栄に貢献しうる「朝鮮半島モデル」を提示した。日本に対しては、解放直後に朝鮮人たちが示した「大胆で包容的な歴史意識」を強調した。しかし残る任期が8カ月ほどという現実のためか、直接的で具体的な提案というよりは、今後韓国が目指すべき対北朝鮮、対日政策の大原則を提示することに集中したかたちとなった。

 文大統領は光復76周年を迎え、15日午前10時にソウル市中区の文化駅ソウル284(旧ソウル駅舎)で行った「76周年光復節祝賀演説」で「我々にとって分断は成長と繁栄の最も大きな障害であると同時に、恒久的平和を阻む強固な障壁」とし「たとえ統一にはさらに多くの時間がかかったとしても、南北が共存し、朝鮮半島の非核化と恒久的平和を通じて東北アジア全体の繁栄に寄与する『朝鮮半島モデル』を作り出すことができる」と強調した。文大統領はこれより前に、「東ドイツと西ドイツは(1990年に)45年の分断を終え、統一を成し遂げた。信義と善意をやり取りしながら信頼を築き、普遍主義、多元主義、共存共栄を追求する『ドイツモデル』を作った」という事実を強調し、南北も平和共存を通じて地域の発展にも貢献しうる「朝鮮半島モデル」を作れるという考えを示した。

 文大統領はまた、「我々は負けずに、絶えず朝鮮半島の平和を夢見」、情勢がいかに厳しくても「平和と繁栄の統一朝鮮半島」という「夢」を諦めるのはやめようと訴えた。大統領として最後に発した8・15祝賀演説で文大統領は、南北の共存▽朝鮮半島の非核化▽恒久的平和という3つのキーワードを骨子として「朝鮮半島モデル」という新たな理想を提示したのだ。

 関心を集めた「対日メッセージ」でも、現在の膠着局面を打開するような「新たな提案」はなかった。文大統領は「韓国政府は対話の扉を常に開いている」とし「韓日両国は(1965年の)国交正常化以降、長きにわたって、民主主義と市場経済という共通の価値を基盤として、分業と協力を通じた経済成長を共に成し遂げることができた」と述べた。しかし文大統領は「正すべき歴史問題については、国際社会の普遍的価値と基準に合った行動と実践で解決していく」と多少抽象的に言及するにとどまった。文大統領は、先の3・1節記念演説では「相手の立場に立って考える姿勢で膝をつき合わせれば、過去の問題もいくらでも賢明に解決できると確信する」と両国の関係改善に強い意志を示していた。

 これは、8日に閉幕した東京五輪を、韓日はもちろん南北の関係を改善する重要な機会にしようとした試みが見送られた中で、任期内に状況を好転させるきっかけを作るのが事実上難しくなったと判断したためとみられる。菅義偉首相は9月に予定される自民党総裁選挙での再選が確信できない状況であり、韓国も文大統領の任期を考えると、日本軍「慰安婦」問題と強制動員被害者賠償判決などの懸案について果敢な「政治的決断」を下すのは簡単ではないのが現状だ。しかし文大統領は、解放翌日の1945年8月16日に日本と「同等で互恵的な関係へと進もう」と宣言した建国準備委員会副委員長の民世 安在鴻(アン・ジェホン、1891~1965)の演説内容を引用し、「閉鎖的で敵対的な民族主義」に反対するとの立場を明確にした。

 文大統領はそのほか、来年上半期までの国産第1号ワクチンの商用化▽半導体とバッテリー産業などのグローバルな供給網の強化▽実現可能な2030年(温室効果ガス排出)削減目標の今年中の提示も約束した。

ソ・ヨンジ、キル・ユンヒョン記者、イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1007784.html韓国語原文入力:2021-08-15 21:21
訳D.K

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