韓国の有力大統領選候補たちが東京五輪への参加、韓米合同軍事演習など敏感な外交・安保懸案について感情的発言を連発し、懸念を呼んでいる。世論の注目を浴びることはできるかもしれないが、韓国政府の「外交的選択肢」を大きく狭め、国益を損なう可能性があるという批判の声もあがっている。
イ・ナギョン元首相(共に民主党前代表)は5月27日、フェイスブックで、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会ホームページの地図に独島(日本名・竹島)が小さく表記されていることを問題視し、「即時削除」を要求した。与党の大統領選候補として当然の主張だったが、発言はそれにとどまらなかった。「五輪ボイコットなどあらゆる手段を動員して断固として対処しなければならない」と極端な対応まで言及した。
首相時代に日本との交渉に直接参加したイ元首相でさえ、「大会ボイコット」という主張をするようになったのは、日本に対する鮮明な態度で世論の支持を集めてきたイ・ジェミョン京畿道知事を意識した行動とみられる。金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の外交安保ラインで要職を歴任したラ・ジョンイル嘉泉大学碩座教授は「民主党では、(反日傾向が強い)文在寅派の支持層の票を強く意識しているようだ。彼らの関心は外交・安保問題そのものよりも文在寅派の支持層にあるようだ」と述べた。ラ教授の指摘通り、イ元首相やイ・ジェミョン知事、チョン・セギュン前首相ら民主党有力候補らはこぞって「五輪ボイコット」を主張した。
チョ・ビョンジェ元外交院長は共著『韓国の不幸な大統領たち』で「力量や相手の立場に対する考慮なく作られる公約、一貫性に欠ける外交は、国内的に対立と混乱を招き、対外的には国家の信頼低下と資源の浪費につながる」とし、「自分が正しくても、思い通りにならないのが国際社会の状況」だと指摘した。実際、李明博(イ・ミョンバク)元大統領は、日本軍「慰安婦」に対する日本の対応を要求し、2012年8月に独島を訪問して韓日関係を荒波に巻き込んだ。朴槿恵(パク・クネ)前大統領も、任期初めの韓日首脳会談を拒否するなど強硬な対日政策を続け、負担に耐え切れず、12・28合意に同意してしまった。文在寅大統領も彼ら同様、大統領候補時代には、12・28合意の破棄と再交渉を主張したが、就任後には「再交渉は要求しない」と一歩退いた。
野党陣営の候補たちは、敏感な外交懸案に対して基礎的な事実関係すら把握できず、相手を刺激する発言を相次いで行った。ユン・ソクヨル前検察総長は先月15日、「中央日報」とのインタビューで、韓中間の懸案であるTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備と中国国境付近に配置した長距離ミサイル撤収問題を連動させた。チェ・ジェヒョン前監査院長も、韓米合同軍事演習の中止を要求したキム・ヨジョン朝鮮労働党副部長の声明について「大韓民国軍統帥権者に指示を出しているようだ」とし、「(文在寅政権が)大統領選挙用の北風(北朝鮮関連懸案を国内政治に利用する試み)を図っているという疑念を抱かせてはならない」として、強硬な立場を示した。今後の南北関係を安定的に管理しなければならない大統領の責務を担うという人の発言としてはあまりにも安易だ。
李明博政権は2008年の就任初期「非核・開放・3000構想」などを掲げ、前政権が築いた南北関係の成果を否定し、派手に出発したが、2011年5月に北朝鮮と秘密接触を試みたものの、相手にこの内容を一方的に発表され、大恥をかいたことがある。ウィ・ソンラク元ロシア大使は「大統領選挙候補も外交問題を扱うときは国内的要素だけを考慮してはいけない。国家間のバランスはもちろん、第3国にどのように映るかまで考慮しなければならない」と慎重な態度を求めた。