新型コロナウイルス大流行は新型・変異ウイルスの感染症に対する警戒心を高めた。目の前の新型コロナへの対応から、将来再び起こりうる感染症への備えまで、科学技術の研究開発が取り組まなければならない課題も少なくない。新型・変異ウイルス感染症の研究開発の現在の進行状況を点検し、今後の方向性を3回にわたって見通してみる。
先月末、「新型コロナ治療剤・ワクチン開発汎政府支援委員会」は第10回会議で「韓国のワクチン開発企業5社が臨床試験を実施しており、今年下半期から段階的に第3相臨床試験に入ることを目標にしている」と明らかにした。SKバイオサイエンスは第3相臨床試験計画(IND)を提出しており、セリッドは9月に第3相試験に突入することを目指している。ジェネキシンはインドネシアにまず第3相試験計画を出した。ジーンワン生命科学も第3相試験に入るための前段階を進めている。
11日現在、世界で新型コロナワクチンを開発するための臨床試験段階に入った候補物質は119種で、このうち第3相に入った物質は32種だ。世界保健機関(WHO)が新型コロナワクチンを開発したブループリントに「前臨床段階での霊長類実験」を必須項目として提示した状態であるため、臨床段階の候補物質のほとんどは霊長類モデルを確保した先進国で開発されたものだ。韓国企業5社がこれら企業と肩を並べて「華麗な羽ばたき」をしているのは、企業自らの努力だけでなく、水面下で懸命に動いた政府と研究機関の情熱と犠牲のおかげだ。昨年初めに新型コロナが発生した後、政府は汎政府支援委員会などを稼動し、企業の障害となる事項を解決するなど対応に取り組んだ。しかし、企業各社の治療剤やワクチン開発には研究開発(R&D)支援が必要不可欠だった。
科学技術情報通信部は昨年4月、「新型コロナ対応研究開発支援協議体」を発足させた。韓国生命工学研究院(生命研)、韓国化学研究院、パスツール研究所、安全性評価研究所、国家マウス表現型分析事業団(KMPC)などの研究所やKAIST(韓国科学技術院)など4大科学技術院が、企業にない生物安全3等級(BSL-3)研究施設や新型コロナ動物モデルなどを迅速に支援してきた。研究開発支援協議体のコ・ギョンチョル事務局長(生命研責任研究員)は「薬効分析から新型コロナ感染動物モデル実験、非臨床試験管理基準(GLP)毒性試験など、臨床試験の前段階の研究開発過程を速やかに進められるよう、国家レベルの『ワンストップ』支援をサービスした。1年という短い時間で5社が臨床試験に参入できた背景には、新型コロナ治療剤・ワクチン開発支援を積極的に行政重点課題として推進した政府の努力と、関連研究者の“骨を入れ替える”ような犠牲があった」と述べた。
前臨床試験の成功の中心には、生命研傘下の国家霊長類センターがある。新型コロナ抗体治療剤を開発したセルトリオンの場合、最初は米国に霊長類実験を依頼しようとしたが、当時のトランプ政権は国内企業優先の原則を掲げて拒否した。この時、霊長類センターが助けの手を差し伸べた。生命研のホン・ジョンジュ国家霊長類センター責任研究員は「2017年に霊長類センターを新型・変異ウイルス感染症研究施設に拡大する案を提示したが、受け入れられなかった。それでも感染研究が必要な時に迅速な実験を通じて研究結果を導き出せる基盤(プラットフォーム)を構築していたことは本当に幸いだった」と語った。
新型コロナが発生すると、当時の科学技術情報通信部第1次官と生命研院長が、治療剤とワクチン開発のための霊長類実験が可能か尋ねてきた。ホン研究員は「可能ではある」と答えた。しかし、状況は劣悪だった。米国には国立保健院(NIH)傘下の霊長類センターの他にも7カ所がある。そのうちの1カ所のエモリー大学ワクチンセンターと比べても全体面積は48.3倍、「動物利用生物安全3等級施設」(ABSL-3)は7.5倍の差がある。エモリー大学は正規職員だけで314人だが、ホン研究員チームは正規職員2人にポストドクター1人、学生3人が全部だった。
しかし、研究チームは昨年4月、中国、オランダ、米国に続き世界で4番目に新型コロナ霊長類感染モデル(攻撃接種モデル)の開発に成功した。論文の検証でいえば、オランダ(サイエンス)、米国(ネイチャー)、韓国(米国感染学会誌)で事実上3番目となる。
霊長類モデルを開発したというニュースを受け、企業各社からの申し込みが殺到し、霊長類の実験需要だけでも133件と調査された。選定委員会を通じてファーストトラックが可能な企業10社余りを選んで支援した。セリッド研究所のシン・グァンス先任研究委員は「小さな会社は生物安全3等級施設を構築することも、維持することも難しい。国家霊長類センターでサルのモデル実験を行い、国家マウス表現型分析事業団で形質転換のマウス実験を行うことができ、臨床試験に突入することができた」と述べた。
ジェネキシンのソ・ユソク専務取締役も「外国に数億ウォンを払うとしても自国ワクチン優先主義のために不可能だったが、霊長類攻撃接種モデルの実験を政府が予算を投入しながら無料で進めてくれたため、大きく役立った」と話した。ジェネキシンが最近、インドネシアにワクチン第3相臨床試験計画を提出できたのも、世界的ネットワークを持つパスツール研究所の支援を受けてのことだった。